第10話 愛される秘訣
1227年、チンギス・カンは、西夏遠征中に、六盤山というところで崩御した。
チンギス・カンの後継は、結果的に、三男オゴデイとなった。長男ジョチはチンギス・カンより先に他界していた。最有力候補は末子トルイだったが、次男チャガタイが、叔父オッチギンと組んで無理やりオゴデイを登極させたのだった。チャガタイ自身、多くの人に恨まれているという自覚はあったので、おとなしい弟オゴデイを傀儡にしようとし、成功したのだ。
チンギス・カンは4つのオルドをもっていた。モンゴル遊牧社会では、自分の母以外の父の妻妾を娶るのは、当然であり、また、とりあえず再婚を申し入れるのがエチケットだった。
1229年、クラン率いる第2オルドは、太宗オゴデイ・カアンの所有となった。オゴデイは、メクリンを手に入れたのである。
チャガタイは、オゴデイがメクリンを得たことを知って、自分に引き渡すよう言ってきた。
ところが、
「これだけは絶対に嫌だ。欲しいなら他の女をやろう」
とオゴデイは返事した。兄に対して、このように突っぱねたのは、ただの1度きり、メクリンのときだけだった。
オゴデイはメクリンを溺愛し、他の妻妾は嫉妬した。
メクリンはじっくりと自らの基盤を確立していった。オゴデイは、底抜けに気前のいい君主だった。メクリンが喜ぶなら、何でもしたのである。
まず、実家のメクリン部族は1つの千人隊と認められ、石城という街道町の管理を任された。ついに、メクリン部族は、山地の周辺に広がる平地にも権益を得たのである。
次に、オゴデイの四男だが、嫡男であるカシに、メクリン一族の娘シプキナを嫁がせた。シプキナは無事、カイドゥという男の子を生んだ。カシは若くして亡くなったが、後にカイドゥは、中央アジアを手に入れることになる。
結果的に、メクリンは、当時の世界最強の権力者、チンギス・カンとその子オゴデイからの寵愛をほしいままにした。その秘訣はなんだったのだろうか。
メクリンは、次のように答えたという。
「女というものは、相手の好むところをよく心得て仕えれば、誰にでも愛される良妻になれるのです」
(完)
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