第6話
「あ、お帰りなさい!」
建物の扉が開くと同時に、受付のようなカウンターの内側に座っていた女の、可愛らしい声が反応した。
建物を入れば、そこにはエントランスのような景色が広がっていた。
扉の正面に受付。入った場所からは横長に広く、左右にはいくつかのテーブルと椅子が配置されている。
「ああ。」
ローブの男は一言で答える。
「もう!ユーリさん、愛想がないのは悪い癖ですよ?仕事終わったのに、今にも眉間にシワが寄りそうです!」
ローブの男、『ユーリ』は溜め息を吐きたくなっていた。
(けどそれこそ、また小言が増えそうだしな…)
そう思い、敢えて特に反応をしないでカウンターへと近付く。
「ハル。他の連中は?」
「まだですね。ユーリさんが一番乗りです!」
『ハル』と呼ばれた女は人差し指を立ててウィンクをしながら答える。
「あー、そういうの要らない。」
ユーリはそう言うと、近くにあった椅子へと向かい腰を下ろす。
そこで今日の「仕事」について思い返していた。
決して気分の良い仕事ではない。どんな理由があれ、『命を奪う仕事』なのだから。
そうして数分だろうか。さほど時間が経たない内にユーリも入ってきた扉が開き、女が入ってきた。
「お帰りなさい!」
ハルはユーリと同じ様な反応で相手を出迎える。
「ただいま。」
ユーリと同じく言葉こそ短いが、表情は正反対で笑顔だった。
考え事をしながらも視線だけ扉の方に向けていたユーリと女は目が合った。
ハルへ向けたのと同じ笑顔をユーリにも向けるが、ユーリは反応もせず視線をゆっくり逸らした。
「ひどっ!?そんなんだとモテないぞっ!」
「別にアノーアからモテようとも思ってない…」
ユーリは(はぁ…)と溜め息を吐きたくなっていた。
先程入ってきた女は『アノーア』
腰まであるほどの黒色の長髪をまとめ、服装は動きやすいようにしているのか軽装。唯一目に付くのは両腕に装着している籠手だろう。
顔付きといえば『絶世』とは言えずとも、間違いなく『美人』の部類に入るだろうとユーリは思う。
ただ、いつでも明るく絡んでくるアノーアに若干の苦手意識を抱えていた。
そしてアノーアは、当たり前のようにユーリの正面の椅子に腰掛けた。
勇なる者 @stardust
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。勇なる者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます