第100話 オークの進化
オランドさん達と主従契約を結ぶ前にオークさん達に男女に分かれてもらった方が良いのか? コタロウと話をしていたら、ダインさんが首を傾げた。
「おい、なんの話だ?」
「うん? アル兄ちゃんと契約するとだいたいみんな進化するんだよ」
コタロウがそう答えるとダインさんが「なっ!」と言って目を見開いた。
「それは契約した者以外もか?」
「そうだよ。連なる者、全部」
コタロウの答えにダインさんは「おいおい」と言いながら苦笑いを浮かべて頭を掻いた。
「セイコンに続いて、今度はシタガエルモノかよ。こりゃあ、確定だな。アンジェのやろう、なんて事を……」
ダインさんは頭を掻いた後で、「ちょっと、待てよ」と言ってオランドさんを見た。
「お前さん達は普通のオークなんだよな? そもそも、なんでみんなしゃべれるんだ?」
ダインさんの問いかけに、オランドさんはギュッと顔をしかめた。
「我らは選別を受けているんだ。7歳までに一定の知力がない者は処分され、12歳で人族の言葉を一通り理解していないと処分される」
オランドさんがそう答えると、ダインさんは「おい、マジかよ」と顔をしかめた。オランドさんはそれに「本当だ」と頷いて続ける。
「15歳でハイオークに進化出来ない者は、生まれた村に戻される。村は10個に分けられていてオークは子供を産み育てた後40歳で処分されるのだが、それでもオークの数が一定以上になる度に村の代表が戦って、負けた方は村ごと処分される」
「今回はお前達の村の代表が負けたのか?」
「あぁ、俺の兄が負けて死んだ。それでどうせ処分されるだけならばと山を越えて来たのだ」
「もしかして、それで小さな子供と比較的若い大人しかいないのか?」
オランドさんが「そうだ」と頷くと、ダインさんは「ひどい事しゃがる」と頭をガシガシと掻いた後で「その、悪かったな」と涙目になった。
「なぜダインさんが謝る?」
「いや、人族がお前達にひどい事をしたからよ」
そのダインさんの言葉に、驚いたオランドさんは目を見開いた後で「フフッ」と笑った。
「ダインさんは変わった人族だな。でも気持ちの良い人族だ。ありがとう」
オランドさんがそう言うと「よせやい」とダインも目を拭って恥ずかしそうに笑った。
その後で、僕とオランドさん、それからオドリーさんが主従契約を結ぶと、やはりオークさん達はみんな人族に少し近づいた姿になり、気持ちほっそりとした。
ハイオークという種族に進化したんだね。強くなっただろうからこれで少し安心だね。
僕がそんな風に喜び合っているオークさん達を見ている間に、アラニャが先頭に立ってオークの女性陣が服のお直しを始めると、ダインさんがトールズ達に「わかっているな」と言った。
「わかってますよ。誰にもしゃべりません」
トールズがそう言って他のみんなも頷いてくれる。
「だいたい、こんな事が王国にバレたら、アル様も俺達もタダでは済まない。下手をしなくても殺されますよね?」
トールズが笑って首を傾げると、ダインさんは「そうだな」と頷く。
「まったく、アンジェの馬鹿やろう。あの世であったら小言の1つも言ってやる」
ダインさんはそう言いながら空を見上げた。
その後で、この先の計画をコタロウとオランドさん、ダインさんの3人で話し合われた。僕もいつもの如く、側にはいる。
話はもちろんよくわからない。だけど聞いているという姿勢が大事だろう。なので、隣であくびをしているカルラと一緒に一生懸命に話を聞いた。
オランドさん達はハイオークに進化したのだが、ハイオークに進化した事で、個体の能力が飛躍的に上がり、魔法も少し使えるそうだ。その代わりに生殖能力が下がり、人族並みにしか増えない。
詳しい話はよくわからなかったけど、とりあえず、これから先は食の心配をしなければならないほど増えないそうだ。
それはよかったね。
なので、オランドさん達はしばらく、午前中はブランについて罠の確認などをしながら狩りに行ったり、トールズ達と農作業をして、午後からはダインさんと訓練という事になった。
小さな子供を抱えている者達をのぞいて、男性も女性も同じ事をやって、後から本人の希望や向き不向きを見て、それぞれの分担を決めるそうだ。
うん、この辺はみんなに任せようね。
カルラには引き続き食材の買い付けに行ってもらい、僕とコタロウとアラニャはハロルド達と建物を建てる。
ダインさんとの訓練次第だけど、オランドさん達の中にもしばらくすれば土魔法でブロックを作れる者と、水魔法で接着が出来る者も出るだろうから、出来る者が現れれば、その者は建築にまわってくれるそうだ。
とりあえずハロルド達の頑張りで、10棟大きな建物が建ったが、まだまだ建物が足りないからね。今はみんな床に雑魚寝してもらっているが、家族分の建物とベットぐらいは用意したい。
ここからは建築にコタロウとアラニャが参戦するから大丈夫だよね。という事で、ハロルド達には交代で休んでもらう事にした。倒れられたら困るもんね。
そうして順調に村造りが回り出した。追加の罠が届いて狩りも順調だ。農地の開墾も進んでいる。
まずは捨てられて荒れ果てていた水路を直して、近くの泉から水を引いた。その後で区画を行い。魔法で地面の中の石や岩などを取り除いて、土をかくはんしながら耕した。ここにはトールズ達が持ってきた水草を使った肥やしも混ぜている。
ずいぶんと農地が広がり、端から種まきも始まった。
その間に建物もだいぶ立ち並んだ。
訓練を受けたオランドさん達の中から土魔法と水魔法を使える人達が現れてからはどんどん作業が進む。すでに建ててあった10棟は集会所兼、食堂にして、その隣にそれぞれ大浴場も作った。家族分の建物も間隔を空けて建ち並んで、家具も用意した。
カルラとカルラの舎弟達が、各街で買い揃えたり、アラネアさんとサイモンさんの村で作ったりした寝具や家財道具も運んでくれた。
やはり夜になって家に火が灯ると、生活水準が一気に上がった気がするね。
そして、その日。
建物の建築を終えたハロルド達にはお礼を言って、サイモンさんの村に帰ってもらい。
僕とコタロウとアラニャがオランドさん達に混じって農作業の手伝いをしていると、近くで楽しそうに追いかけっこをして遊んでいたオークの子供のうちの1人が倒れた。
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