第55話 解体作業
アラニャが泣き止んだ後で、とりあえずあのままにして置けないので、みんなでビックアントの解体をする事にした。
「それじゃ、アラニャの糸から押し出されているビックアントの解体を行います。冒険者さん達も何チームかに分かれて、どんどん解体して下さい。肉は引き取ります、魔石は半分下さい。素材は差し上げますので張り切って解体しましょう」
「「おぉ!」」
「それから、あんまり近づき過ぎて怪我をしないで下さいね。あとあの糸は最大限まで硬化しているので、触ると切れますから気をつけて」
「「はい!」」
そして、みんなで高台から降りると、糸の周りにはすでにものすごい山が出来ていたので、すぐに解体作業に入った。
僕らが解体して、端からどんどんミア達とナーガさんの子供達がマジックバックに入れていく。
アラニャとナーガさんとラミアさんは解体の補助だ。運んできたり、押さえてくれたりと手伝いをしてくれている。
冒険者さん達も少し離れた所で楽しそうに解体している様だ。初めは女性達が「気持ち悪い」とか言っていたが、今は大量の素材に喜んでいる。
なんでもビックアントの外殻は軽くて硬いし、水を弾くから防具などや家の屋根、外壁などで重宝されているらしい。
良い事を聞いた。ものすごく大量にあるからみんなの防具だけじゃなくて、村の屋根や外壁に使おう。
そして、エンドレスで続く解体作業も15日目、冒険者さん達とも苦楽を共にし、同じ釜の飯を食べて仲良くなった。
子供達は懐いてすらいる。
ミア達もナーガさんの子供達も、解体の時に冒険者さん達のお手伝いをして回っていた。
仲良くなるのは良い事だよね。
食事は僕が食材を提供して、冒険者の女性達が作ってくれている。アラニャとナーガさん達は別メニュー、大量のビックアントの肉を食べてもらった。
そして、完全に飽きて来たところで、やっと終わりが来た。糸の周りにまとわりついているビックアントも残り少なくなって、糸の外に来なくなった。
残りは地上にいるのは50匹ほどだね。
だけど、やっぱり少し大きいやつと、見た目が変わっている奴らはみんな残っている。
「どうする? あの進化した奴らは倒しておいた方が良いよね?」
「そうですね。だけど残りは残した方が良いと思います。このままにしておいたら、また増えて食べられますから」
そう言いながら、アラニャが素敵な笑顔をしたけど、やっぱりアラニャ達にとっては慣れ親しんだ味なんだろうね。
「じゃあ、とりあえず、あの進化したのだけ倒してこようか?」
と言う事で、僕は走って行って、あのガタイの良い人に押し上げてもらって柵を飛び越した。
押し込めている魔力を全て解放して、身体強化を行う「バチッ」と空気が弾けて「ビリビリ」と「ジリジリ」と空気が振動した後で、その音が収まると空気がピンと張り詰めた。
まずは近くにいた大きな個体を切りつけた「キーン」と金属の甲高い音が響いて弾かれる。
うん?
首の周りが太い、関節を守るように外殻が迫り出していた。
なるほどと思っている間に『ウインドショット』が別の方から飛んできたので、それをバックステップで避ける。
どうやらあの緑っぽい個体は顎で『ウインドショット』を打って来るようだ。
水色は『ウォーターシュート』茶色が『ロックショット』を打って来る。
そして、コタロウとブランが僕と同じように飛び込んで来て、アラニャとカルラはそれぞれ降りて来た。
「アラニャは大きい奴を倒してくれる? 緑はカルラ、水色はブラン、茶色はコタロウよろしく」
そして、僕は中ぐらいの体格で、闇をまとっているそいつを見た。ギリギリと顎を鳴らした後で、あからさまな威圧を飛ばして来る。
僕は『こいつはあの男を食べたんじゃないか?』となんとなく思った。
闇をまとったままで突っ込んで来るので、僕は切りつけながら避ける。しかし、切りつけた場所に闇がまとわりつくとその傷が塞がった。
その後で首を狙うと顎で防がれて、足を切り落としてもすぐに治る。仕方がないので、僕は全力で雷をまとった。そして、ダークビックアントの頭を左手で掴んで、その首を切り落とした。
ダークビックアントの体が横倒しに倒れる。
それを確認した後でみんなを見たがみんなもそれぞれ倒し終わっていた。
そこで僕は自分の左手を見る。うん、雷を全力でまとえば闇の侵食もなんとか耐えられるね。
残りのビックアント達はなぜか動かない。
僕が苦笑いを浮かべながら、冒険者達を見ると、なぜか全員が座り込んでいた。
「うん? どうしたの?」
「アル様達は、すごいのですね」
うん?
「だけどさ、残りは穴に逃げてくれるのを期待してたのにダメだったね」
と笑いかけたが、冒険者達が「逃げるどころかビックアント達は気絶してます」と言ったので確認すると、なぜかビックアント達は全部気を失っていた。
まあ、これなら糸を外せるし、結果的に良かったね。
「それじゃ、みんな大丈夫?」
「「はい」」
「じゃあ、みんな気をつけて帰ってね」
「はい、アル様。ありがとうございました」
「「ありがとうございました」」
冒険者さん達は頭を下げて帰って行った。
ミア達も一緒に連れて帰ってもらう。
とりあえず、マルタの街のトマスさんとオリバさんに一筆書いて置いたので、後の事はトマスさんとオリバさんに任せれば大丈夫だよね?
冒険者さん達の罪は不問として、その代わりにしばらくはミア達の面倒を見ながら、マルタの街で働いてもらう事にした。
すっかり娘みたいに可愛がっている人達もいるから大丈夫だよね?
別れ際、ミアは泣いていたが「必ずまた会えるから」と納得してもらった。
と言う事で、僕らもアラネアさん達の村に帰る事にした。出発しようとアラニャの糸を外したのだが、ビックアント達はまだまるで動く気配がない。
もう気絶は解けても良いと思うんだけどね。
「もう起きても良い頃じゃないかな?」
「アル兄ちゃん、やめてあげて! たぶん起きているけど、気絶した振りしているから」
近付こうとしたらコタロウが必死に僕の服を引っ張りながら止めるのでやめておいた。
それから、アラネアさん達の村に帰る途中で、ホーンボアとファングラビットにあった。どうやら戻ってきたらしい。
やはりビックアントが増え過ぎたのが原因だったんだね。
もちろん、容赦なく狩って、解体して持ち帰る。だいぶ食材を消費した。本格的に一度補充した方が良いね。
そして、森の中を歩く事3日、僕らはようやくアラネアさん達の村に帰ってきた。
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