第50話 サーペントの進化
ビックアント狩りは問題なく進んだ。
スパイダーさん達は進化した事で、みんな強くなり糸で絡め取りながら、強化した糸でビックアントを関節部分で切断しているので、正直言って僕らの出番はない。
それに糸を使いながら、木を使って飛びながら移動しているので、移動速度だって速いし、いきなり囲まれる心配もない。
これはもう僕達居なくても狩りは大丈夫だね。
なので、とりあえずサーペントさんにアラネアさん達の事を報告に行くことにした。今回もアラニャは一緒に行きたいと言うので、一緒だ。
スパイダーさん達を代表してお礼を言うそうだ。
確かにサーペントさんが心配して僕らに頼んでいなければ、スパイダーさん達はどうなっていたか、分からないから、お礼は大事だよね。
僕達が途中ビックアントを狩りながら森を進んで2日でサーペントさんの洞窟に着くと、慌てた様子で女の子達が出てきた。
「良かった、アルさん。どうでしたか?」
「うん、とりあえずマンティスは倒し終わったから、今スパイダーさん達がビックアントを倒してくれてるよ」
「そうですか、だけど冒険者が……」
顔を曇らせた少女に連れられて洞窟の中に入ると、サーペントさんが傷だらけで横たわっていた。奥さんが心配そうにサーペントさんを見ている。
僕はもちろんすぐに駆け寄ってポーションをかけた。見る見るうちに深い傷まで癒えていくので、ホッと胸をなで下ろす。
「とりあえず大丈夫だね。それで他のみんなは大丈夫?」
「はい、サーペントさんが必死に守ってくれたので、私達も奥さんも生まれたばかりの子供達も大丈夫です」
「そっか、良かった」
僕は少女の頭をなでて、それから奥さんにまとわりついているサーペントさんの子供達を見た。
戻ってきて正解だったね。
「冒険者は話を聞いてくれなかったの?」
「はい『初めからサーペントが目的だった』とか、訳の分からない事を言って、全然分かってくれなかったです」
「それは困ったね」
僕が苦い顔をして腕を組むと、隣でコタロウが「なるほどね」と呟く。
「アル兄ちゃん、奴らは全て分かった上でサーペントさんを殺しに来たのかもしれないね」
「うん? なんで?」
僕が首を傾げるとコタロウは「サーペントさんがレアだからだよ」と大きく頷く。それを見ていた少女の1人が悲痛な顔をした。
「どうしてそんなひどい事をするのですか? サーペントさんはこれまでマルタの街を守ってきたのに……」
「そうだね。だけど、サーペントさんは人族の言うところのレア魔獣だから、奴らはその素材と魔石が欲しいんだよ」
コタロウが頭を掻くと他の少女が笑う。
「アルさん達は本当に不思議な方達ですね。人族も助けようとするのに、魔獣もまるで人族みたいに扱う。しかも、冒険者を奴らって言い方はまるでアルさん達も魔獣みたい」
「うん、僕は魔獣だよ。アル兄ちゃんは人族だけどね」
「「えっ?!」」
少女達はみんな驚いていたが、コタロウが帽子を脱いでツノを見せると納得した。
「もしかして、そちらの女の子も魔獣なのですか?」
女の子達にいきなり話を振られたアラニャは驚いた顔をしたその後で「私も魔獣です」と頷いた。
「えっ? こんな可愛い子が魔獣?」
「見た目は人族と変わらないのに?」
「魔獣? 嘘ですよね?」
女の子達に言い寄られてアラニャは、はにかみながら糸を出して見せた。それを見てもまだ信じられないと言う子もいたけど、とりあえず納得してくれた様だ。
「種族は関係ないよ。人族にも魔獣にも良い人はいるし、悪い人もいる。人族だからとか、魔獣だからとか、そんなのはおかしいんだ」
僕がそう言うと「やっぱり変わってる」と少女は笑った。
だけど困ったね。サーペントさん達をこのままここに置いておく訳にはいかなくなった。
僕が「どうしたら良いかな?」っと呟くと、アラニャが「アル様、私達の村に連れて行くのはダメですか?」っと首を傾げる。
確かにそれが1番良いかもね。
サーペントさん達と少女達を見た。
うん、本人達に決めてもらおう。
「あのさ、サーペントさん達はスパイダーのアラネアさん達の村に行くのはどう?」
「ケケケ」
サーペントさんと奥さんは頭を下げる。
よし、こちらは大丈夫だね。
「みんなはどうする? 魔獣の村だけど、アラニャみたいに人族に近い姿をしたスパイダーさん達だし、料理も今覚えているからみんなも暮らせるとは思うよ」
「私達は……」
「うん、もし他の人族の街に行きたいなら隣町のサマルの街で面倒見てもらう事も出来るよ。商業ギルドマスターが友達だから力になってくれると思う」
僕はそう言って少女の頭をなでた。
「アル兄ちゃん、すぐには答えは出せないだろうから、まずは一緒にスパイダーさん達の村に避難して、それから決めたら良いんじゃない?」
コタロウがそう言うので、僕が少女の顔を見ると、少女達は「はい」と頷いた。
「アル様、私はミアです。よろしくお願いします」
「分かった、ミア、よろしく」
少女達の中で1番年上のミアが手を出したので、それを受けて握手をする。
そして、サーペントさん達を見た。
「村に連れて行くなら主従契約したいけど、人族に近くなったりならなかったりの法則が分からないね」
「アル兄ちゃん。そうじゃないかと思っていたけど、やっぱり分かってなかったんだね」
コタロウがなんとも言えない顔で僕を見る。隣でブランが頷いて、カルラは呆れ気味に「クァ」と鳴いて、アラニャはなぜか恥ずかしそうだ。
うん、ごめんね。
「契約に関係なく進化で人族に近い姿になる者がいるんだよ」
「そうなの?」
「僕達みたいに元々人族に近くて進化するとより人族に近い姿になる者と、ブランやカルラみたいに進化する事に種族の色が濃くなる者、アラニャみたいに進化する事で人族に近い姿になる者がいるんだよ」
コタロウの説明に僕が「そうだったんだ」と首肯すると、コタロウは「ハァ」と息を吐いて目を覆った。
「アル兄ちゃん、分かってないね?」
「うん、難しい」
「アル兄ちゃんが持っている魔獣図鑑に載っていた事だよ。ちなみにサーペントさんも進化するとウロボロスって人族に近い姿になる」
「そうだっけ?」
「そうだよ。だからカルラが『アル様は絶対あのサーペントさん達を放っておけないっすから』って服を用意してたよ」
「クァ」
カルラが自分のマジックバックをくちばしでツンツンする。僕がカルラの背中のマジックバックを開けると、サーペントさん達の服が入っていた。子供達10人も分もある。
カルラは分かっているね。
偉いので、頭をなでるとカルラは嬉しそうにした。
サーペントさん達に了解を取って、僕はサーペントさんと主従契約を結んだ。
やはりサーペントさん達は光って人族に近い姿になったけど、あらかじめ服を渡していたのでそれをきてもらった。子供達は少女達に着せてもらう。
うん、サイズも大丈夫みたいだ。良い感じだね。家族で並ぶとカッコ良い。
そして、力を付けるためにビックアントの肉とマンティスの肉と卵をたくさん食べてもらってから、サーペントさんと奥さんに身体強化の魔法を教えた。
もちろんコタロウが。
さすがにコタロウは慣れたもので、あっという間にサーペントさんも奥さんも身体強化の魔法を使える様になった。
これで少し安心だね。
そして、コタロウは、サーペントさんにナーガ、奥さんにラミアと名付けた。
うん? えっと僕が働いてない? いやいや、そんな事ないよ。ね?
そして、準備も出来たのでナーガさんの巣穴を出て、僕達はアラネアさん達の村に向かった。
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