第49話 助っ人

 スパイダーさん達の村に着くと、スパイダーさん達はみんな疲れ切っていた。


 どうやら約束通りにみんなでビックアントを倒してくれていたけど、想像以上に数が多かったみたいだね。


「アラニャ、みんなに無理しないで、って言ってくれる? 僕達も手伝うから」

「はい、ありがとうございます」


 アラニャがみんなに伝えると、みんなは身振り手振りで「申し訳ない」と言ってくれる。


「大丈夫ですよ。約束を守ろうと頑張ってくれてありがとう」


 僕はみんなに頭を下げた。


 結果的に無理言ってしまったから申し訳ないね。


 そこで一番大きなスパイダーさんが寄ってきた。


 うん? じゅう? しゃに? なり? たい?


「母さんが、従者になりたいと言っているみたいです。私もお願いしたいです」


 アラニャが大きなスパイダーさんの身振りを通訳してくれたけどさ、うーむ、嫌な予感がする。


「うん、良いけど、今すぐにやるとみんな……」


 アラニャは僕の言わん事を察したのか、赤面して大きなスパイダーさんに説明を始めた。


 こうなるとやっぱり来てもらうしかないな。


 そこで、僕はカルラを見る。


「カルラ、シュテンさんの村まで行って、シュテンさんに服を作れる人達20人と土魔法と水魔法が使える人達を40名ずつ援軍に送って下さいって伝えてもらえる?」

「クァ」


 カルラはそう言うとすぐに飛び立って行った。


 それを見送ってから、スパイダーさんに「服を作ってくれる人を援軍に呼んだから、準備が出来たら主従契約をしましょう」と言うとぴょこぴょこと頷いてくれた。


 と言う事で先にアラニャと主従契約をして、身体強化の魔法を教える。もちろん僕ではなくコタロウが。


 うん、僕に教師は無理だからね。


 そして、覚えたアラニャが後でみんなに教える事になった。みんなが身振り手振りで嬉しさを伝えてくれた。


 うん、みんな喜んでいるね。


 そして、僕達はコタロウとブラン、それから僕を部隊長にして、3分隊でビックアント狩りをした。特にシュテンさんの送ってくれる援軍が来る方角を重点的に倒して行く。


 スパイダーさん達が糸で片端から絡めとり、僕がそれを関節から切断する。


 アラニャも糸を使って関節で切っていた。進化したので、硬度が上がっているし、身体強化の魔法のおかげみたいだ。切った後で、自分でも驚いていた。


 もちろんサクサクと狩りをしたら全てスパイダーさん達に食べてもらう。嫌な予感はしたけど、とりあえず大惨事になる前に援軍が到着した。


「アル様、援軍に参りましたのですわ」

「うん、ありがとう。ラシャ、それにラセツ」

「いえ、アル様のお役に立てて嬉しいです。父のドウジが、もし足りないなら言って下さいと言っておりました」

「うん、とりあえず大丈夫だよ。ありがとう。早速で悪いんだけど、服製作部隊は服の製作を、土魔法、水魔法部隊はまずはこの場所を村壁で囲みたいんだ。僕達も手伝うからよろしく」

「わかりました」


 ラセツはドウジさん譲りのリーダーシップを発揮して、みんなに指示を出して行く。そして、服製作はラシャが取り仕切り、壁の現場指揮はノームさん達の長ガジルさんの息子、ガズルがとっている。


 ラセツはそれを見届けると、すぐに自分は手足となって働き始めた。適材適所、ラセツはリーダーの資質があると思う。そして、僕らも作業員として参加した。


 土魔法で生み出された四角い岩を僕達が並べて、その後で水魔法で接着して行く。もちろんこれは、もう慣れた作業だからどんどんと流れ作業で、進んで行く。


 途中狩りをしながら3日ほどで、土地を囲むしっかりとした村壁が出来た。そこからは木を避ける様に、建物を建てる。住居の建物に、食堂兼集会所、大浴場にそれから機織りの建物が作られた。


 なんでもスパイダーさん達の糸を利用して機織りをするらしい「みんな人族みたいになったら織り方を教えますよ」とノームの女性達が張り切っていた。


 と言う事で、全ての建物が経つと、服も用意できたので、主従契約となった、もちろんスパイダーさん達にはそれぞれ分かれて建物に入ってもらって、女性陣には女性達を、男性陣には男性達を頼んだ。


 そして、一番大きなスパイダーさんと主従契約を結ぶとやっぱりみんな光って、そして、人族っぽくなった。


 もちろん、人族みたいになるのは予想通りなのでみんな服は大丈夫だったようだ。一様に進化に喜んで、声をかけ合ったり、喜んで糸を使って飛び回ったりしている。


 そこから労を労って宴がもよおされたが、僕達はスパイダーさん達の食べ物は食べられないので、食材は僕が提供して、ホーンボアとファングラビット、それから野菜を使って料理をしてもらった。


 厨房を覗いたら、スパイダーさんの女性陣が、ゴブリンさん達に教わって、その工程を真剣に聞いて覚えている。


 すごく偉いので、食後にマンティスの卵をあげた。


 やっぱり人族に近い姿であの卵を食べているのは抵抗があるが、美味しいみたいなので、良いね。


 まだまだあるから少しずつあげよう。


 そして、スパイダーさん達の村がとりあえず出来たので、身体強化の魔法を教えてから本格的にスパイダーさんの男性陣でビックアントを狩りに行こうと思う。その間、女性陣には機織りを覚えてもらう事にした。


 なので、ゴブリンさん達もノームさん達もまだ居残りだ。もうしばらく付き合ってもらおう。


 そうそうスパイダーさん達のお母さんで僕と主従契約をした一番大きなスパイダーさんには、コタロウがアラネアさんと名付けた。

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