第47話 スパイダー

 森に戻ると、やっぱりビックアントとマンティスがうざいぐらいに居る。


 話を聞いてしまったせいなのか、それとも間違えてサーペントさんを傷付けてしまったせいなのか、やたら憎く感じて、僕らは片端から全部倒して行く。


 もちろんちゃんと解体して、素材と肉はマジックバックに入れて、魔石は3人にどんどん食べてもらった。


 素材は全て後で売るつもりだ。まだまだたくさんあるけど食材をかなり消費したからね。その分を後で仕入れなくてはならない。


 もちろん急いでスパイダーさん達のところに行きたいけどね。こいつらをこのままにして置いてサーペントさん達のところに行かれたら大変だし、肉の方はスパイダーさん達へのお土産にしたい。


 ビックアントを獲れないなら、きっとみんなお腹を空かしているはずだ、どれぐらいのスパイダーさんがいるか分からないけど、たくさん持って行ってあげよう。


 そうして、ビックアントとマンティスを大量に狩りながら森の中を進んで、途中でたまに休みを入れる。


 2日ほど進んだ所で、ブランが「ウォン」と吠えたので、頷いてすぐに付いて行った。


 その先では小さなスパイダーさんが、マンティスの群れに襲われている。僕らは何も言わないで、それぞれに散って、端からマンティスを狩って行った。


 慣れた連携で全て狩り終わると、僕は小さなスパイダーさんに「大丈夫?」と声をかけた。スパイダーさんは一瞬とまどっていたが、その手を挙げて僕に答えた。


 でもさ、大丈夫じゃなさそうだね。


 スパイダーさんは傷だらけなので、僕がすぐにポーションをかけると傷が癒やされていく。


 これで大丈夫そうだね。


「サーペントさんに頼まれて様子を見に来たんだ。他のみんなは大丈夫?」


 僕の言葉にスパイダーさんは項垂れてから、身振りで付いて来てと言う。


「みんなのところに案内してくれるの?」


 スパイダーさんは僕の問いかけにぴょこぴょこと頷いたので、僕らはそのスパイダーさんに付いて行った。


 そして、ついて行った先には傷ついた多くのスパイダーさん達がいた。みんな体のあちらこちらに刃物で切られたような切り傷があり、見るからに弱っている。


 近くにいたスパイダーさんにすぐに駆け寄るが、逃げる余力もない様だ。


 とりあえず、ポーションをコタロウと人化したブランとカルラにも渡して、片端からかけていく。


 かけた側からみんなどんどん傷が癒やされて行くので、とりあえず大丈夫そうだ。


 良かった。


 1番大きなスパイダーさんが1番傷も多かったが治ったので、そのスパイダーさんの前にマジックバックからビックアントとマンティスの肉をどんどん出した。


 大きなスパイダーさんはうかがう様にこちらを見る。


「みんなで食べて下さい。お腹も空いているでしょ?」


 大きなスパイダーさんがぴょこぴょこと頷くので、僕も頷き返した。大きくスパイダーさんがみんなを呼んで、回復したみんなが、嬉しそうにビックアントとマンティスな肉を食べる。


 心なしか元気も出た様で良かった。


 みんなが食べ終わるまで僕らはその様子を見ながら待った。肉はかなりの量あったが、端からどんどん消えて行く。


 それにしても、大きいの、小さいの、様々な大きさのスパイダーさんが居る。僕らが見ているのに気がついた小さめの子が手を振ったり、頭をぴょこぴょこと下げたりするのが可愛い。


 全て食べ終わって、大きなスパイダーさんが僕のところに来て頭を下げた。


「気にしないで良いよ。心配したサーペントさんに様子を見て来て欲しいと頼まれたんだ」


 スパイダーさんは頭を掻く。


 きっと面目ないってことかな?


「マンティスの巣がある場所は分かる?」


 大きなスパイダーさんはぴょこぴょこと頷いて、手で方向を指した。僕が「近い?」っと言うと、それにはフリフリと首を横に振った「少し遠いのかな?」それにぴょこぴょこと頷く。


「じゃあさ、誰か1人案内をお願いできるかな? 僕らがマンティスの巣に行ってマンティス達を倒して来るから、みんなにはビックアントを食べて欲しいんだ」


 そう言うと大きなスパイダーさんは少し考えてから、ぴょこぴょこと頷いた。そして、ここに案内してくれた小さなスパイダーさんが来た。


 どうやらこの子が案内してくれるらしい。


「君が案内してくれるの?」


 小さなスパイダーさんがぴょこぴょこと頷くので「よろしくね」とその頭をなでた。


 まずはスパイダーさん達にはここで休んでてもらって、カルラが空から探して、しらみ潰しにここの周囲に居るビックアントとマンティスを倒して行く。


 特にマンティスは漏れがない様に、端から倒して行った。


 再度しっかりとカルラに周囲のマンティスの確認をしてもらって、大丈夫そうなので、残りのビックアントはスパイダーさん達に任せる事にした。


 なので、スパイダーさん達に見送られて、僕らは小さいスパイダーさんに案内してもらってマンティスの巣に向かう。


 巣に近づく度にマンティスの数が多くなるがもう完全に慣れたのでなんの問題もない。


 連携して、どんどん倒して、どんどん解体して、3人には魔石、小さなスパイダーさんには肉を食べてもらう。


 マンティスを倒しながら1日半ほど森を歩いて、少し開けたところに空いたその穴にたどり着いた。


 マンティス1匹が通れるほどの穴だけど、そこからマンティスが出てくる。


 うん、あそこが巣みたいだね。


 出てきて穴の周囲をうろうろしていたマンティスも、みんなで手分けして一掃した。


 カルラに周囲の確認をしてもらい、魔術具ランタンで穴の中の確認もした。


 うーん、どうするか?


 そこで僕はコタロウを見る。


 コタロウは頷くと「ライトニングボール」と繰り返し唱えて、次々にその穴に雷の玉を放り込んだ。


 これは僕のマジックバックに入っていた。秘蔵の魔法の本に基本が書いてあった「ファイアボール」を参考にして、真似て出来る様になったコタロウの新魔法。


 うん? 羨ましくなんかないよ……ごめん、嘘ついた。そりゃあ、羨ましいよね。


 次々にコタロウが「ライトニングボール」を放り込んでいる穴の下から複数の爆発音が聞こえて、違う場所からマンティスが出てくる。


 やっぱりね、他にも入り口の穴があるんじゃないかと思ったんだよ。


 コタロウはさらにどんどん雷の玉を放り込んで、コタロウ以外のみんなは他の穴から飛び出して来るマンティスを次々に倒して行く。


 どんどん湧いて出てくるから、コタロウが放り込んでいる穴以外の穴の周りには、マンティスの山が出来た。


 しばらく経って爆発音が聞こえなくなった「もう良さそうじゃない?」僕がそう言うとコタロウが雷の玉を放り込むのをやめた。


「それにしてもずいぶん魔力が増えたね」

「うん、魔石をたくさん食べたからね」


 コタロウが笑う。


 ものすごい数の雷の玉を穴に撃ち込んで、少し辛そうだけど、まだ余裕があるみたいだ。すごいね。

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