第46話 サーペント
マルタの街を出て、オリバさんに教わった通りにサーペントが這いずった後を辿って森の中を歩いて行くと、入り口の大きな洞窟に来た。
どうやらここがサーペントの住処のようだ。
中の様子を伺っていると大きなサーペントが這い出てきた。
中々に大きいね。
僕がそのサーペントを見上げると、サーペントはこちらを見ながら大きく首を横に振った後で、舌を出し入れしながら「シャー」と威嚇してくる。
僕はナイフを取り出して、押し込めていた魔力を解放した。身体強化の魔法がスムーズにかかると、サーペントは大きく体を揺らして体当たりしてくる。
僕は素早くそれをかわして、ナイフで切りつけたが「キン」っと金属音が鳴って、サーペントの体を覆っている硬い鱗に弾かれた。
すぐに尾が迫って来たが、コタロウが「ライトニング」と雷を落として、動きを鈍らせてくれたので、その尾をナイフで受け止める。
そして、鱗の継ぎ目にナイフを突き刺して切り裂いた「ギァァァ」と嫌がって体をくねらせて、あちらこちらにその体を打ち付けるが、僕らはバックステップで飛びのいた。
すぐにブランが『ディスチャージ』で動きを鈍らせて、カルラが翼で撃つ。再び、サーペントが「ギァァァ」と鳴いた時に、洞窟の奥から女の子達が出てきた。
きっと、生贄にされた子達だろう。
「危ないからまだ中に居てくれる?」
「やめて下さい。サーペントさんをいじめないで」
えっ?
女の子達はグルグルととぐろを巻いたサーペントをかばうように両手を広げながら僕らの前に立ちはだかった。
「えっと、どう言う事? みんなは生贄にされたって聞いているけど」
「私達は確かに生贄にされました。口減らしだからもう街には帰ってくるなって、親達は言いました。だから私達は行く場所がなくて」
「それで?」
「サーペントさんが私達を可哀想に思ってカウマルタを取って来てくれてたんです。だから、サーペントさんは悪くありません」
少女が必死に訴えるので、ブランを見た。ブランは小さく頷くと「ウォン」とサーペントに話しかける。サーペントは「ケケケ」と返事を返した。
サーペントさんの話はブランに聞いてもらうとして、僕は先程の少女に再び話しかけた。
「それじゃあ、サーペントさんがカウマルタを食べて困っているってのは?」
「違います、ビックアントの群れがカウマルタを連れて行くのを見ました。サーペントさんはそのビックアントを食べてくれてます。森からビックアントが出ない様に食べてくれているんです。だけど、ビックアントの量が多くて……」
「食べきれないのか、なんでそんなにビックアントが増えたのか、分かる?」
「すみません、わかりません」
少女が項垂れるので「そっか、ありがとう」と僕は笑って見せた。そこでブランが話を終えたらしく僕の近くに来ると人化した。
女の子達から「えっ?」って声が聞こえるが、今は時間がないのでブランの話を聞いた。
「サーペント、カウマルタ食べてない。元々サーペント、体内で毒を処理出来る。群れから離れて街に近付くはぐれビックアント食べてた。だけど多くて食べきれなかった」
「それでビックアントにカウマルタが連れ去られたの?」
「うん、そう」
ブランが頷く。
なるほど、少女の話と合っているね。
と言う事は、サーペントさんは飛んだとばっちりだよね。原因はビックアントなのか、だけど、なんでそんなに急に増えたのかな? キングが生まれたとか?
僕が首を傾げるとブランが続けた。
「ビックアントが増えたの、たぶんマンティスのせい。森の奥スパイダーの群れ居て、そのスパイダーの群れ、ビックアント食べてた。だから多くのビックアント、街の近くまで来る事なかった。マンティスが鎌で、スパイダーの糸を切ってしまう、スパイダー達、ビックアント狩れない」
「なるほどね、じゃあ、とりあえずマンティスをなんとかすれば良いって事だね」
僕が笑うとブランが頷く。
「そう、出来ればスパイダー達の様子、見て来て欲しい、言ってる。サーペント、女の子達の食料であるカウマルタ、守る」
僕はそれを聞いて額を掻いた。
サーペントさん、めっちゃ良い人じゃないか! なんか申し訳ないね。
僕はまず少女達に「サーペントさんに乱暴してごめんね」っと謝った。少女達が安心した様に笑うので、僕も嬉しくなる。
本当にサーペントさんの事をしたっているんだね。
それに、この子達が止めてくれなかったらとんでもない事になっていた。本当に助かったよ。
そして、ブランにもサーペントさんに謝って欲しいと言うとブランは人化を解いて「ウォン」と鳴いた。サーペントさんが「ケケケ」と返してくる。
その後で僕が傷つけてしまったサーペントさんの傷をポーションで治して、洞窟の中に入ると、もう1人サーペントさんがいた。
こちらはひと回り小さいから奥さんかな?
卵を抱えている。僕らが頭を下げると奥さんも頭を下げてくれた。罪滅ぼしにたくさん持っていたビックアントとマンティスの肉をあげる。
サーペントさんは傷も癒えて、奥さんと一緒に満足そうにその肉を食べた。
「サーペントさん、傷付けてごめんね」
「ケケケ」
サーペントさんが頷いてくれたので、良かった。
少女達にもお詫びとして甘味の袋とパンに野菜、ホーンボアの肉を渡す。甘味はもちろん、パンや野菜が好きな子がいたので喜んでくれた。
少女達が興味津々なサーペントさんと奥さんにも甘味を上げたみたいで、サーペントさんは喜んだ後で、僕に頭を擦り付けて来た。
可愛いので、もう一袋女の子達に渡して「明日以降にみんなで食べて、サーペントさん達にもあげてね」っと言っておいた。
少女達も喜んでいたので、良いね。
「じゃあ、まずはスパイダーさん達の様子を見に行こうか? マンティスの巣はどこにあるのか分からないからね」
ブランにサーペントさんからスパイダーさん達の住処を聞いてもらって、僕らはサーペントさんと少女達に挨拶してから洞窟を出た。
いや、本当に危なかった。思い込みは良くないね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます