第44話 マルタの街

 マルタの街への旅路は実に順調だ。


 相変わらず森の中を狩りをしながら進んでいるが、4人になって何せ魔獣を見つけるのも倒すのも早い。しかも解体の速度も昔に比べたら段違いだ。


 もちろんコタロウも解体をやってくれて手慣れて来たし、ブランもカルラも手伝ってくれるから、サクッと倒して、サクッと解体も終わるので、旅はずんずんと進む。


 途中、コタロウと人化したブランのちょっとした小競り合いがあったが、カルラが「従者同士が争うとアル様が悲しむからってシュテンさんが言ってたっすよ。報告するっすか?」っと言った後から、コタロウとブランがやけに仲が良い。


 なんだろうか?


 途中でホーンボアの群れに出会ったりして、かなりの数のホーンボアが狩れた。肉もたくさん手に入ったけど、素材もたくさん獲れたから、マルタの街でも素材を大量に売ってまた野菜とパンを買い込もう。


 すでにサマルの街でも野菜とパンは買い込んだけど、時間停止が付いている食材用のマジックバックはまだまだ余裕があるし、コタロウも同じマジックバックを背負っているので、まだまだたくさんの食材を持っていける。


 それに、いきなり森に置き去りにされたりする世の中だから、いつ必要になるか分からないし、なにせ多いに越した事はない。時間停止で腐る事はないから、街に寄る度に、どんどん買い込んでおこうと思う。


 マルタの街が近くなると、マンティスと言う虫型の魔獣に出会った。鎌の様な前足で風魔法のウインドショットを飛ばしてくるけど、落ち着いてかわしてから攻撃すれば全く問題はない。


 僕はマンティスの攻撃をかわしながら近付いて、ナイフで関節部から切断する。コタロウは「ライトニング」で痺れさせてから、ブランは後ろから馬乗りに、カルラは滑空して来て羽で切り裂いていた。


 うん、みんなどんどん強くなっているから余裕だね。


 それに新しいナイフは切れ味がすごいし、手に馴染んで扱いやすい。雷の乗り方も良いので、とても良い物を頂いたと思う。


 マンティスは硬い外殻と言うのを持っている虫型の魔物だけど、そのナイフで関節部分を狙えば魔力を乗せなくてもサクサクと切れた。


 そして、倒したマンティスを初めて解体していたが、この肉、なんか半透明なんだけどさ……。


「これって食べられるのかな?」


 僕の問いかけに隣で他のを解体していたコタロウは「食べたくない」と答えて、前足で押さえていたブランは「ウォフ」っと首を横にふり、カルラは「クェー」っと言いながら少し離れた。


「分かった。食べるのはやめておいて、マルタの街に持って行って使い道を聞いてみよう」


 と言う事で、魔石はみんなに食べてもらって、鎌の様な前足に外殻、それから半透明な肉を葉っぱに包んでからマジックバックにしまった。


 僕らは再び森を進むのだが、そこから先はは先程のマンティスと、それにビックアントと言う虫型の魔獣ばかり出た。


 ビックアントは大きな顎が特徴の虫型の魔獣で、単体では特に問題はないのだが、こいつらは常に群れで行動するのが厄介だ。なにせ数が多い。


 しかも外殻はマンティスより硬いので、魔力を乗せない状態だと関節を狙わないと攻撃が通らない。なので、しっかりと関節を狙って1匹ずつキッチリと狩りをする。


 獣型はどこかに当たればなんとかなるけど、虫型は切る場所を選ばなければならないので、ちょっと大変だ。


 もちろん魔力を使えば簡単だけど、せっかくだから戦闘訓練だと思って戦った。


 楽をしていたら強くなれないもんね。


 ビックアントも倒したら、魔石はみんなに食べてもらって、外殻と肉、それからこちらは顎を回収する。


 それにしてもうんざりするほどに。虫型の魔獣は数が多い。少し進むとすぐに出てくるからなんか全然進めないし、あんまりにも続くから嫌だね。


 だけど、やっぱり狩りは慣れみたいだ。数をこなしてくると、相手の動きも分かってくるし、刃物を入れる角度も分かる。


 こうなるとこっちの物で、ビックアントの群れが相手でも流れるようにあっさりと倒せるようになって来た。


 解体の方もスムーズになると、進めるようになって来て、まあ、まだ数は多いけど、その分3人が魔石をモリモリ食べれるので、良いね。


 そして、16日目。


 やっと森を抜けると、広大な草原に出た。


 なだらかな丘が重なり、吹き抜ける風に草がなびいている。途中の丘の上で大きな体の魔獣が数匹で草を食んでいる。その少し向こう側に岩壁が見えた。


 あれがマルタの街の都市壁だね。と言う事は、もしかしてあの魔獣が飼育されていると言う、カウマルタかな?


 僕らはそこから街道に出て、街道を進んだ。やはり柵に囲まれた中に先程の魔獣がいて、大人しくゆったりとした動きでたまに草を食みながら、小さな単位の塊で点在していた。


 なかなかの数いるね。


 僕らがそのなんとも長閑な景色を見ながら門まで来ると、門番が声をかけてくれた。


「えっと、坊ちゃん達は旅をしているのかな?」

「はい、旅をしています」

「そうか、そんな歳ですごいな。だけど、マルタの街には長居せずに、早めに通り抜ける事をおすすめするよ。今この街はちょっと苦境に立たされているからね」


 門番はなんとも言えない顔で中をチラッと見た後で頭を掻いた。


「そうなのですか? その話を詳しくお聞かせ願えませんか?」

「悪いな、俺は仕事中だからさ、そこにあるギルドで聞いてくれるか?」

「はい、分かりました。親切にありがとう」


 僕らは門番に頭を下げると街に入った。

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