第40話 最強の生き物
イザベラ様にディナーに誘われたので、ご一緒させてもらった。
もちろんみんなには先に済ませてもらって、今はなぜかご指名されたブランとカルラ、それからどうしても付いて来たいと言ったコタロウが壁際で控えている。
お爺様の館で談笑しながらディナーを済ませて、イザベラ様が頷くと壁際でソワソワとしていたナタクさんがこちらに来た。
「では、アルフレッド様、気配の消し方を教えますね」
「ナタクさん、長い名前は慣れないので、アルでお願いします」
「分かりました。アル様」
ナタクさんがにこやかに笑うとコタロウが寄って来た。
「ナタクさん、アル兄ちゃんは難しい事分からないので、みんなに教えるのに僕も一緒に聞いても良いですか?」
「あぁ、もちろんだよ。君の名前は?」
「コタロウです」
「そうか、コタロウ。君も将来有望だから私は期待しているよ。なにせゴブリン族から進化して最強のひと握りになれるかも知れないんだ。今からとても楽しみだ」
ナタクさんは優しく笑ってコタロウの頭をなでた後で、ブランとカルラに「それじゃあ、まずはそちらの2人に人化を教えましょうか?」と言うとブランとカルラは「ウォン」と「クァ」で返事を返した。
「人化ですか?」
「はい、人化すれば、武器も持てるし、防具もつけられる。しかも人族の言葉を喋れるようになりますから便利ですよ」
「それは、すごいですね」
「はい、まだ2人は数秒しか人族になれないと思いますけど、とりあえずなれる様に練習して、それからたくさん魔石を食べて、体内の魔力の器を大きくすれば、時間も長くなっていきますからね」
ナタクさんが「フフッ」と笑った。
「それに、気配の消し方を教えた後で、今回は特別に魔力をもっと自分の中に押し込める方法も教えますよ」
「そんなに教わってしまって良いのですか?」
「良いですよ。皆さんに良い感じに育ってもらうのが私の目的ですから」
ナタクさんがニンマリと笑いながらそう言うので、僕は「ありがとうございます」と頭を下げた。
「お気になさらずに、では、まずは人化を教えましょう」
ナタクさんがそう言うと。ブランとカルラが嬉しそうに「ウォン」と「クァ」と返事を返す。それにナタクさんはもう1度頷いてから僕とコタロウを見た。
「2人はどうしますか? 私がここで獣化を見せるとイゴール様の屋敷が壊れるので、とりあえず裏庭に行きますけど、見てみますか?」
僕とコタロウが「「はい」」と答えて、僕らは裏庭に出た。そして、すぐに「見ていて下さい」とナタクさんが獣化する。
獣化とは人化の逆。
ナタクさんの説明が難しくて僕にはよく分からなかったが、どうやら進化して人族に近い姿になっている者が、一時的に元々の種族の姿に戻る事を獣化と言うらしい。
そして……。
やっぱりか!
ナタクさんの元々の姿は、すごく大きいドラゴンだった。もう大きさの表現が出来ない程に大きい。僕も驚いたけど、もちろんコタロウも、ブランも、カルラも驚いていた。
これが世界最強の生き物、ドラゴンなの?
圧倒的な存在感もだけど、ナタクさんは魔力を抑えているのに、少しもれ出てくる魔力で寒気がする。抑えきれない恐怖が体の芯から上がってきて、さっきから震えが止まらない。
ナタクさんは、すぐに獣化を解いて、元の人族に近い姿に戻った。ちなみに今は人族に近い姿を持つドラゴン、ドラゴノイドと言う種なのだそうだ。気配を消されたら人族と全く見分けがつかない。
「どうでしたか?」
「圧倒的ですね。震えが止まらなかったです」
「あぁ、それはアル様が世界の3割に仲間入りをしている証ですよ。一般の人達は私からもれ出る魔力すらも感知出来ないから怖さを感じないんです『大きいですね』とか『ドラゴンなんて、すごいですね』なんて感想を言ってきますから」
ナタクさんがとても嬉しそうに僕に微笑んでからブランとカルラを見た。
「今から2人に渡すのは人化に合わせて服を着せてくれる魔術具だ。とりあえずこちらで用意した服を登録しておいたけど、気に入らなければ後で変えられるからね」
そう微笑んで、ナタクさんが魔術具の腕輪をブランとカルラの足にあてると、魔術具は2人の足に合わせた大きさになってはまった。
「よし、じゃあ、やってみて」
ナタクさんがそう言うと、ブランとカルラは姿を変えた。
えっと?
2人がシャツとジャケットとスラックスを着た人族になった。
だけどさ……あれ?
「カルラって女の子だったの?」
「「えっ?!」」
僕以外の全員が驚いて僕を見た。
「あたしはどこからどう見ても女の子じゃないっすか?」
「そう、もしかして、アル、気付いてなかった?」
抗議の目が痛いが、ここは笑って誤魔化しておく。
それにしても「クァ」と「ウォン」じゃないとなんか不思議な気分だね。
なんて僕が思っている間に、2人はすぐに元のグリュゲルとウルフに戻った。もちろん「クェー」でカルラからの抗議が続いたが、しばらく「ごめんね」と言いながらカルラをなでたら、なんとか収まった。
「じゃあ、とりあえず2人は出来たから良いね。後は魔力量と慣れだから頑張って。では、次は屋敷に戻って気配の消し方をお教えしますよ」
ナタクさんがそう言って何事もなかった様に屋敷に戻ったが、先程の部屋で待っていたイザベラ様に「驚いたでしょ?」と言われて思い出した。
「驚きましたよ。ドラゴンなんて初めて見ましたから」
僕が笑うと、イザベラ様は嬉しそうにして、ナタクさんが「私はエレメントドラゴンだから、ドラゴンの中では下の方ですよ」と肩をすくめた。
ナタクさんの話だとナタクさんは雷竜、サンダードラゴンと言うドラゴンらしい。そして、もちろん他の属性もいるし、上にはまだ強いドラゴンがいるそうだ。
ワイバーンやシードラゴン、それにワームに加えてリザードマンなど下級な竜族を抜いて、真竜と呼ばれるドラゴンの中では下の方らしいけど、もちろん、最強の生き物であるドラゴンの時点で間違いなく、恐ろしく強い。
僕達が呆れ顔でナタクさんを見ていたら、ナタクさんは気にせずにしれとした様子で微笑んだ。
「それじゃ、気配の消し方をお教えしましょう」
と言う事で、そこからナタクさんに気配の消し方を教わった。
だけど、丹田?
体の中心に魔力を押し込む?
器を意識してその中にいれる?
箱でも良い?
……えっと?
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