第29話 新しい村の形
ノームさん達を眺めていたら、シュテンさんが声を掛けて来た。
「それで、アル様。村なのですが、どう言った形にしますか?」
「どう言った形ってなんですか?」
「はい、洞窟の上の岩壁に沿ってノームさん達の居住の場所を作るのか? それとも洞窟の前に建物を建てて、岩壁で囲むのか? どちらにしてもノームさん達に鍛治をやってもらうには洞窟内では無理ですので」
なるほどね。確かにそうだ。火を使うし、洞窟内では危ないね。だけど、前のノームの村の様な生活にする為には、鍛治は必須だからね。
服の直しが終わったガジルさんがちょうど戻って来たので「ガジルさん達はどちらが良いですか?」と聞く。ガジルさんはもちろん「なにをですか?」と首を傾げて、呆れ顔のシュテンさんが説明した。
「アル様、洞窟の前に村を作るとしたら、岩壁で囲むのも、建物を建てるのも簡単には出来ませんよ。上の岩壁を土魔法で削る方が時間がかからないのではありませんか?」
「うん? 出来ますよ。土魔法も水魔法も使えるゴブリンさん達が大勢いますから、それほど時間はかからないんじゃないですかね?」
「えっ? どのぐらい居るのですか?」
数は分からないけど、結構いるよね? 僕が首を傾げながらシュテンさんを見るとシュテンさんが頷く。
「土魔法を使える者は私も含めて100名は居ると思います。水魔法もアズミを入れて同じく100名は居ます。すみません、グリーンゴブリン達が覚えているところなので正確な数は分かりませんが」
僕はシュテンさんに「ありがとうございます」と頷くとガジルさんを見た。
「100名ずつでやればあっという間に出来ると思いますけど?」
何故か知らないけど、ガジルさんとそして、今戻って来たグルナさんも呆れ顔になって頷いていた。
と言う事で、洞窟の前に村を造る事になった。どうせなので、ゴブリンさん達の家も造り、洞窟内は鉱石の採掘場、いざと言う時の避難所、各種倉庫などとして使う事となった。
ちなみに作業の総指揮はガジルさんが行う。
その指示に従って、まずは木を切って土地を造る事になった。これは僕にも出来そうなので、ゴブリンさん達の剣を借りて、身体強化をかけて、端から順番に木を切っていく。
土魔法と水魔法以外の僕達250名で切って250名で運んだので、あっという間に広い土地が出来た。
切り株はアズミさん達が100人で水魔法を使って破裂させて処理を行い。
その後でシュテンさん達が端から100人で土魔法を使って地面を慣らしながら上下水道の溝を刻み固めてくれた。
溝以外はしっかりとした凹凸のない地面が出来て、溝にも土魔法で出来たしっかりとした蓋がつけられた。
これなら子供達が遊びまわっても、つまずかなくて良いね。
次々にシュテンさん達が硬くて四角い岩を作って行く。僕達がそれをガジルさん達の指示に合わせて並べて、アズミさん達がそれを接着する。
だいぶ連携が取れてきたので、流れ作業でズンズンと進む。朝から始めて夕方前には洞窟の前の土地を大きく囲む高い岩壁が出来た。
岩壁は二重になっていて中に部屋があり、上手く組み合わせて一定間隔で壁で仕切られていた。もちろん入り口もいくつか開けてある。入り口には木で作った扉が入るそうだ。
やっぱりノームさん達は、建築などの知識が豊富だった。そのおかげですごい村壁が出来たと思う。まるで街を囲む綺麗な都市壁みたいだね。
僕らが壁を作っている間に、ガジルさんをのぞいたノームさん達300名は朝僕達が切った木を加工して家具や扉などの建具を作っていた。
今はガラスなどがないので窓は木戸だけど、そのうちにガラスも入れたいね。
夕暮れになったので、今日の作業はここまでにした。みんな食卓につく。
今日は途中から作業を抜けたグルナさん達ノームの女性陣が作ってくれた。
「アル様、すごいですね。数週間、いや、数ヶ月はかかる作業が。1日で出来てしまいましたよ」
「そうなんですね。みんなが頑張ってくれたおかげです」
「本当ですね。ゴブリン達は勤勉で頭が下がりますよ」
「ノームさん達だって家具をいっぱい作ってくれたじゃないですか? すごいですよ」
僕が褒めるとガジルさんは「ありがとうございます」と笑った。
翌日からは建物を造る。
でもやる事は村壁造りとあまり変わらないので、流れる様に作業はどんどん進んだ。監督ノームさんを増やしてチームを4つに分けたのも良かった。
まずは住む為の大きな建物が7棟、大浴場と洗濯場の建物も造った。それから鍛冶場と鉱物から鉄を生み出す施設や、みんなで食べられる大きな食堂兼集会所などを建てる。
もちろん掘ってあった用水路に水を引き入れたり、下水道の整備も行った。
ある程度大きな建物などが出来たので、もう大丈夫だね。なので、僕はそろそろサマルの街に行く事にした。
まずは食料品の調達をしなくてはいけないし、それにいろいろあったから、お爺様にも報告しておかないと行けないだろうね。
「シュテンさん、そろそろサマルの街に行こうかと思うんだけど、良いですか?」
「はい、食料品の調達ですね?」
「うん、それでなんですけど、シュテンさんとドウジさん、それからガジルさんなどの村の代表者に一緒に来て欲しいんですけど」
「えっ? どうしてですか?」
「うん、ブルースさんとフィアナさんを紹介したいんです」
「「えっ?!」」
話を聞いていたみんなが驚いている。
確かに冒険者などに不信感があるだろうから仕方ないよね。
「この村が落ち着いたら僕は他の街や村も見に行かなくてはならないですから、この村とサマルの街とのつなぎ役をブルースさんとフィアナさんにお願いしたいと思ったんです」
「しかし、ブルースと言う方は、あの冒険者ギルドのギルドマスターですよね? 言い辛いのですが、我々に、その、敵対するのではないですか?」
「うーん、大丈夫だと思いますよ。みんなは僕の従者だし、僕はこれでも領主の孫ですからね」
シュテンさんが困った顔をして頭を掻いた。
「分かりました、アル様のお願いですから、行くだけ行きましょう」
と言う事で、出発の日、留守はホムラさんとカガリさんにお願いする事になった「ごめんなさい」と謝ったけど「留守はお任せください」と胸を張ってくれた。
うん、今のみんなならよっぽどの奴が来ない限り大丈夫だね。
そして、お出かけ組に何故か、コユキとそれからグルナさんが紛れ込んでいる。
うん?
「グルナさん?」
「アル様、アル様のお爺様の街を見てみたいです」
「うーん、コユキは?」
「お兄ちゃんばかりズル」
そこで僕はシュテンさんとガジルさんを見た。2人は微妙な顔で笑っている。
「わかりました。街では面倒は起こさないでくださいね。特にコユキは従者じゃないから絡まれる恐れがあります。気をつけてあげてください」
「「わかりました」」
2人が安堵しているので、仕方ないね。
そして、僕達はサマルの街に向かった。
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