第28話 新しい仲間

 ノームさん達の村を出てから3日後、ゴブリンさん達の村に戻ってきた。


 洞窟に入るとすぐにゴブリンの子供達が「おかえり」と寄って来たので、僕はその頭をなでて「ただいま」と笑う。


 全員の頭をなでると満足したのだろう。嬉しそうにした子供達は「わーい」と散って行く。


 可愛いね。


 それにしても、だいぶ洞窟内の整備も進んだようだ。もう壁も床も綺麗に慣らされて、不要な出っ張りなどは1つとして見当たらない。


 僕はノームさん達を連れて広場に来たが、洞窟の入り口でコタロウから事情を聞いた者が、シュテンさんとドウジさんに伝えてくれて、シュテンさん達もすぐに動いてくれていた。


 すでに素早く土魔法を使ってノームさん達の家族ごとの部屋を作ってくれたそうなので、ノームさん達はそちらに案内してもらい、休んでもらう事にした。


 アズミさん達女性陣も素早く料理を始めたそうだ。なので、僕は追加の肉を出して渡してもらうように頼む。


 あらかじめ多めに渡してあるし、シュテンさん達も狩りをガンガンしているけど、ノームさん達も結構な数いるからね。


 僕と一緒に来たノームさん達は洞窟の中の様子や、進化したゴブリンさん達に初めは戸惑っていたけど、疲れていたのだろう。個室に入ると横になって休んでいた。


 敷物も敷いてあるから大丈夫かな? それでも早めに木材を用意してベットを作ってもらった方が良いかもね。


 そこからは各部屋をまわって、木製のベットがない事を謝罪しながら、預かった家財はとりあえず返して置いた。


 安心したのだろう、僕と話をしているうちにホッとしたのか、泣き出す人もいる。


 全て返し終えてから、僕が良い匂いに釣られて食堂に行くと、シュテンさんが来た。


「アル様はノーム達をどうするおつもりですか?」

「うん? シュテンさん達にお任せしますよ。受け入れても良いし、受け入れなくても良いです。とりあえず、次の場所が見つかるまでしばらくの間は置いてあげて欲しいですけど」

「そうですか、分かりました。話し合ってみます」


 シュテンさんは少し微笑んで、僕に頭を下げてからどこかに向かった。


 たぶんガジルさんと話し合うんだろうね。それに少しホッとした様な表情に見えた。やっぱりノームさん達の事が気がかりだったんだ。


 本当に良い人だよね。


 少し経って食堂の土で作られたテーブルに料理が並ぶ、みんながシュテンさんの号令の後で食べ始めた。


 ノームさん達にも笑顔が見える。その笑顔にはもうノームさん達の村で見せていた硬さはないと思う。


 うん、良かったね。


 みんなが食事を終えると、シュテンさんがガジルさんを連れて僕のところに来た。


「話し合いは終わったのですか?」

「はい、こちらに受け入れるに当たって、ガジルにアル様と主従契約をしてもらう事にしました。我々としても従者同士の方が安心ですからね」

「任せておいて申し訳ないけど、それはダメです」

「えっ?」

「僕は交換条件で従属を強制したくないですから。ガジルさん達がなりたいって言うのなら考えますけど、受け入れる代わりに従属しろってのはダメです」


 僕が真っ直ぐにシュテンさんを見ていると、ガジルさんが焦った様に割って入って来た。


「アル様、あの私達からもお願いします。これまでの非礼を思えば頼めた義理ではないのですが、シュテン達を見て、アル様がどの様な方なのかよく分かりました。きちんと皆で話し合い、我らもアル様に従属したいと言う結論に至りましたので、私と妻のグルナを従者に加えて下さい」


 ガジルさんが頭を下げると、いつも間にか来ていたグルナさんもガジルさんの隣に並んで「お願いします」と頭を下げた。


 僕が他のノームさん達を見ると、ノームさん達はみんな不安そうにこちらを見ている。


「えっと、ガジルさん達の気持ちは分かりました。それで、ドウジさん達はどうですか?」

「我々はアル様の決定に従います」


 僕はため息をついた。


「それもダメです。ここはドウジさん達の村でもあるのですから、こちらから一方的に決められません。せめて1度、ホムラさんとカガリさんと話し合って下さい」


 僕がそう言うと、今度はカガリさんが割って入ってくる。


「あの、アル様。私もお兄ちゃんもノームさん達を受け入れたいと思います」

「カガリさん、良いのですか?」

「はい、私達も本当なら居場所を失うところでした。それなのにアル様は受け入れて下さった。今度は私達がノームさん達を受け入れたいと思います」

「そうですか、ありがとう、カガリさん。もちろんドウジさんも、ホムラさんもありがとう」


 そこでゴブリンさん達を見まわした。みんな笑って頷いてくれている。


 うん、本当に良い人達だね。


「では、ガジルさん、グルナさん、こちらを。これからよろしくお願いします」

「「はい、アル様」」


 僕がマジックバックから首輪を2本出して、ガジルさんとグルナさんに渡す。


 そして、主従契約を結ぶとお決まりだけど、やっぱりガジルさん達が光に包まれた。


 そうなるよね。


 ガジルさん達は背が伸びて少しほっそりとして、人間ぽくなった。それでも筋肉は凄そうだけどね。


 アズミさん達ゴブリンの女性陣が何も言っていないのに素早く動いて服のお直しを始めていた。


 もしかしてさ、こうなるのが分かってたの? 


 アズミさんなんて、裁縫道具脇に置いてたよね?


 アズミさん達が素早く互いに指示をだしながら、並んでもらったノームさん達の服を直して行く。もう慣れたものだし、今回は横を詰めて丈を足すだけだから楽らしい。


 確かにゴブリンさん達の時はほぼ作り直しだったもんね。


 服のお直しが終わると、ノームさん達はさらにかっこよくなったし、強そうだ。そうそう、後で忘れずに身体強化の魔法を教えておかないとね。

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