第25話 新しいリーダー
シュテンさんやアズミさんを中心にみんなが協力してくれたおかげで、グリーンゴブリンさん達の住処はすぐに綺麗になった。
体も服も綺麗にしたからもう臭くないし、いい感じだ。
広場では子供達が元気に遊びまわっているので、早急に床の整備が行われた。
シュテンさんが「子供達が転んで怪我したら危ないから」とグリーンゴブリンの子供達の心配をしているのがとても嬉しい。
初めは怯えていたけど、グリーンゴブリンさん達はみんな協力的で、競ってお手伝いをしたがった。
上手くは出来ないみたいだけど、なんかみんな小さいし、可愛い。
食事の肉もみんなモリモリ食べてくれるので、何せ人が多いから狩りの人数を増やした。
まずはシュテンさんとオーにコタロウチーム、そして、アズミさんとローに、コユキチーム、そこに僕とブランのチームを入れた3チームで周囲の魔獣を狩りまくっている。
今日もみんなで食事をしているとドウジさんが僕のところに来て頭を下げた。
どうやらこれは従者にして欲しいと、身振りで伝えているらしい。
そこでシュテンさんも僕に頭を下げる。
「この先、人数の多いグリーンゴブリンが上手くやっていくにはリーダーが必要です。ドウジをリーダーとして、アル様の従者にしてやってくれませんか?」
「僕は構わないですけど、僕が主人で本当に良いのですか?」
「グルル」
ドウジさんがまた頭を下げる。
「分かりました。よろしくお願いします」
僕はドウジさんの手を取って、マジックバックから出した首輪を渡す。
ドウジさんが嬉しそうにしてから、それを首につけた。僕らが主従契約を結ぶとやっぱりと言うか、ドウジさん達が眩しい光に包まれた。
だよね?
僕が目を開くとみんな人族っぽくなって、ドウジさんが「ありがとうございます」と頭を下げる。
「あれ? 言葉がわかりますよ?」
「やはり進化したからでしょうね。ドウジとリーダーの二人は元々知性が高かったので、もう話せるみたいです。たぶん他の子達も教えれば大丈夫だと思います」
「そうですか。じゃあ、その辺はシュテンさんとドウジさんで相談してみんなに教えてあげてくれますか? それと名前もお願いします」
「「分かりました」」
2人が頭を下げると、待っていたように残り2人のゴブリンリーダーが声をかけて来た。
話を聞くと双子の兄妹らしい。名前をつけて欲しいと頼まれて、兄をホムラさん、妹をカガリさんと名付けた。
ちなみに僕には分からなかったので、シュテンさんとアズミさんに候補をあげてもらい、そこから選んだ。
2人とも嬉しいそうにしているから良いね。
なのに、何故こうなった!
結局はドウジさんが「同じリーダーなのに自分だけ従者なのは2人に申し訳ない」とか言い出して、2人も従者にする事になった。
首輪を渡したら、契約前から嬉しそうに手の中の首輪をなでるから、なんか悪い気はしないけどさ。
「本当に主人が僕で良いの?」
と一応抵抗してみたが押し切られて、2人も従者になった。
「じゃあ、ホムラさん、カガリさん、これからよろしくお願いします」
「「はい、アル様」」
と言う事で、グリーンゴブリンさん達の事はドウジさん、ホムラさん、カガリさんの3人で相談しながら決めて行くと言う事になった。
でも、シュテンさんを入れた4人で話をしているのを側から見ていると、どうもシュテンさんがトップで、その下に3人って感じがするね。
いや、違うか?
アズミさんが……。
そこで視線を感じてそちらを見ると、アズミさんが良い笑顔でこちらを見ていた。
「アル様、私ではありませんよ?」
アズミさん、鋭い!
でもさ、グリーンゴブリンさん達がみんな進化したとなると、やっぱり早急に食料品などの事を相談に行ったほうが良さそうだよね?
「シュテンさん」
「なんですか? アル様」
「村も落ち着いたし、1度お爺様の領地の街に戻って食料品関係の事など相談して来たいと思うんですけど?」
「えっと、お爺様の領地とは?」
シュテンさんは困惑顔でこちらを見ている。
あぁ、そうか。シュテンさん達は魔獣だから人族の街について詳しくないよね?
「シュテンさんは人族の街などについてどれぐらい知ってますか?」
「そうですね。一番近い街がサマルと言う街で、そこの冒険者ギルドのギルドマスターがブルースと言う方で、商業ギルドのギルドマスターがフィアナと言う方、そして、この地の領主がイゴール・グドウィンと言う貴族だと言う事ぐらいでしょうか?」
「すごいですね。それだけ分かっていれば十分ですよ。僕はブルースさんとフィアナさんの友達なので、食料品などの事を相談に行こうと思ったんです。このままだと足りなくなるかもしれないですからね」
そこで僕は少し笑った。
「それから言ってなかったですけど、僕はアルフレッド・グドウィン。領主イゴール・グドウィンの孫です」
「「えっ?!」」
みんな驚いた後で、シュテンさんは頭を抱えて、アズミさんは腹を抱えて……。
あれ? なんでコタロウと並んでドウジさんもホムラさんもカガリさんも期待した顔してるの?
ちなみにコユキは「アル兄に嫁げば、私も貴族」とボソリと言った後でニヤリと笑った。
僕が驚いてコユキを見ると「大丈夫、愛があらば種族の壁も越えられる」と激しく頷くが、シュテンさんの指示でホムラさんとカガリさんがコユキを押さえて、ドウジさんがコユキを隠すようにさえぎった。
素晴らしい連携だ。
そこでシュテンさんが僕を見て真面目な顔になった。
「アル様が出かけられる前に、ノームの村の様子を見て来たいのですが……」
「うん? ノームさん達はどうかしたのですか?」
「我らの村と交流があり、定期的に鉱石を取りに来るのですが、しばらく来ていないので心配になりまして」
「なるほど、何か起きているかもしれないって事ですね?」
シュテンさんは「はい」と頷いた。
「その村ってどこにあるのですか?」
僕はマジックバックから地図を出して広げる。シュテンさんがそれを見て場所を指さした。
少し森の奥だけど、それほど遠い訳ではないね。まあ、どちらにしても、グドウィンの領地内だ。
「それじゃあ、僕が見に行きますよ。シュテンさん達にはこの村の事をお願いしたいですから」
「ですが……」
「お爺様から領地内を見てまわって領民の手助けをする様に言われています。だから気にしないで下さい」
「しかし、ノームは……」
シュテンさんは、そこで「フフッ」と笑う。
「愚問でしたね、分かりました。では案内はコタロウにお任せください」
「お父さん!」
「アル様の旅について行きたいのだろう? 従者の代表として行って来い」
「ありがとう」
と言う事で、僕とブランとコタロウでノームさんの村の様子を見に行く事になった。
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