指輪が逃げ出した。
プロポーズ、人生でもっとも厳かな時の一つ。
一途な熱情、確かな決意、揺るがぬ二人の誓い。
前途洋々な恋人たちの未来に思わず頬が緩んだ瞬間――。
指輪が逃げ出した。
繰り返します。足が生えて結婚指輪が逃げ出しました。
ありえないことがありえるようになった世界で、ごく普通の健太郎と小夜子にもありえないことが容赦なく襲い掛かります。
そして始まる追走劇。
もうこうなったら読む手が止まりませんよ!
目を疑う出来事の連続、それを受け入れさせ次の展開を期待させる文章のとんでもない勢いと巧みさに圧倒されました。
度肝を抜かれますよ。ずっと二人を追っていたはずなのにふとした弾みで「何でこんなことになってんの!?」と驚愕しっ放し、それから笑い転げてしまう。ファンタジーと現実の交錯でできた一級品のコメディです。
予想もつかないところから始まったこの物語は、予想もつかない方向にブチ上がって、息も吐かせぬまま手も届かぬままに最後まで想像を裏切ってくれました。
しかし、その先にはきっと貴方も満足してほっと息を吐く瞬間が来ます。
どうぞご一読を!