勇者側の話

第25話 『勇者召喚の前夜』

 私は自分でも行き過ぎていると理解している。


 愛が重い、優しすぎる、もっと悪くなったら?なんて、気付けば人生で何度言われたか検討もつかない。


 私は善人だ、そう有れと両親に教えられてきたから。


 ウチの家族は誠実さと発言力だけは強い、何故なら紳士な姿勢が国民に評価されてきたから。


 国会議員の父親と支援団体の会長に就く母親、父は様々な意見に耳を傾けより良い政事を行なってきた良き政治家。


 母は被災地の復興などを目的とする大きな団体のトップでウチの資金力と人脈もあり日本国内より海外の災害が多い地域なんかに支持者が多い。


 中には被災後に出世して母の支援団体に多額の援助をしてくれるような人も多い。


 そんな2人の子供である私だ、教育方針は福祉精神。


 「全てを完璧に出来て半人前、手の届く全てを助けるまでで一人前」とゆう教訓。


 この教えだけを支えに過酷な教育を生き抜いてきた。


 そして、私は今東大に入りつつ株で儲けた金を様々な支援団に送りつつ優雅な一人暮らしを謳歌しt、、、


 道端を歩きつつ自惚れていた私の目に、突如として衝撃が舞い込む。



「キャアァァァァァァ!」



 そんな叫び声と共にトラックが猛スピードで老婦人に突っ込もうとしていた。


 窓から見える男の表情でこのトラックが居眠り運転であると悟った。


 その瞬間、体は勝手に動いていた。


 突っ込むトラックと老婦人の間に割り込んだ私は老婦人を優しく車線上から退かせて代わりにトラックを受ける。


 右手のミシミシとゆう鈍い音と共に激痛が走る、けど昔から鍛えてきた私は今更トラックと衝突したくらいで折れるほどヤワじゃない。


 「ドオォォォォン、、、!」とゆう大きな音と共に私を挟んでトラックが突っ込んだのは工事中のタワマン。


 なんとか這い出て血の滴る右手を押さえながら歩こうとした私の耳に「ヒュォォォ〜、、、」とゆう音が鳴った。


 嫌な予感がして上を見ると、大きな鉄骨は既に眼前まで落ちていた。


 そして私は、死の間際にみるらしい走馬灯ではなく緩やかに流れる時間の中で、何か温かいものに包まれるのを感じた。

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勇者召喚の前座で召喚されました 福田点字 @tomotyoko

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