第4章 獣害対策 第3話
平日は、仕事があるために要請があっても直ぐには動けない。
結局は、週末を使っての作業となるが、二人で銃を持って山に入ってもなかなか獲れるようなものでもなかった。
そのため、わなを仕掛けることになり、佳人と田中は一緒に甲種狩猟免許状を取得することになった。
今では、わな猟免許状と網猟免許状に分かれているが、その当時は網猟もわな猟も一緒で、甲種と呼ばれていた。第1種銃猟免許状は乙種、第2種銃猟免許状は丙種と呼ばれていた。
その後、くくりわなを二人で仕掛けるようになっていたが、毎日の見回りを出社前に行わなければならない大変さ等を考えると、とても二人では防ぎきれないという敗北感に襲われた。
佳人も四十代に入り、いよいよ仕事も忙しくなってくる時期であった。
自分自身の立場、狩猟者の年齢や人数、シカやイノシシの現状を考えると、先々は暗澹たる気持ちになってしまう。
しかもこのような状況は、佳人の住む地域だけの問題ではない。全国各地で多発しており、さらにその問題は加速度的に拡大傾向を示しているのである。
佳人の中に、獣害対策に専門に取り組む人や組織が必要であるという考えが浮かんだのは、極めて当然のことであり、森林組合の中にそのような組織を作り上げることはできないだろうかという考えも芽生えた。
とはいえ、佳人以外は捕獲に関する経験もなく、本業と掛け持ちで出来るほど簡単なものでもない。
どうにかしなければ、なにかしなければという思いをもちつつ、さらに数年が経過して、被害は益々顕著になってきていた。
被害の顕著さを実感するようになったのは、作業道の崩落だった。下層植生の消失による保水力の低下は、わずかな降雨でも山肌を流すようになり、沢筋の作業道が頻繁に崩れるようになっていた。
そんな時に、関係が出来たのが株式会社ワイルドライフマネージメントだった。その会社の会長が祖父と知り合いであり、山里のところへ狩猟にも足を運んだことのある人だった。
ワイルドライフマネージメント社の業務で犬を使うことが計画され、その話が巡り巡って佳人のところへと繋がってきたのだった。
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