第三章 道を極める
新たな思惑
「はぁ」
部屋の一室一人の女性がため息を吐いた。彼女の名前は
元々この組は、那海の夫である三界 天空が立ち上げた。しかし、天空がなくなり、代理で那海が組長をしているが、求心力の低下は避けられない。
今や、三界組は崩壊寸前といっても過言じゃなかった。
求心力の低下、それに伴う組員の低下、だが金は無くなる。そもそも入ってくる金が殆ど無い。
今残っている組員も、女の那海や頭になった大地を内心下に見ている者も多く、言うことを聞かない。
このままでは……と思っていた所、裏社会に流れた噂。
あの
何より、その話には心当たりがあった。良く知る男が連れていた少女。だがそれは、
(私はどうすれば……)
「さて猛風。改めて聞きたいんだが」
「うむ」
ある日の昼下がり。まだ開店前の店で、龍と猛風。そして水祈と火月に虎白が揃っていた。
「今の
「ワシの報告で、歌舞伎町で見たという話は無かったことにされとる。陳の報告ごとな」
「そもそも何で趙は虎白の行方に気づいたんだ?」
その龍の問い掛けに猛風は、
「元々、虎白様が姿を消した港から出ている船で、たどり着くのは東京行きの貨物船しかなかった。そもそも外国まで行く船がそれしかなく他は沿岸部までしかいかない小さな船ばかりじゃったからの。だからワシらも東京に行ったと判断し、現地にいる陳に命令した。人員を配備し、虎白様の身柄を捕らえよとな。まぁ元々
「そんなにいるのか……」
「
「だから必死に探すわけね」
火月の言葉に猛風は頷き、
「あぁ、だから
だが、と猛風は続け、
「虎白様の失踪はまだ上層部と陳にしか伝えておらぬ。陳の部下達も、虎白様の正体は知らずに追いかけていたはずじゃ」
「あとは雲勇山位か。ってそういえばあの二人はどこに行ったんだ?」
「ん?あぁ、帰ったわい」
何だ国に帰ったのか。と納得する龍たちと、帰った先は土じゃがな。と内心言う猛風たちのすれ違いはさておき、
「既に虎白様失踪の話が、裏社会では流れている。幸運なことに、虎白の姿は謎に包まれたままじゃがな」
「誰かが流したってこと?」
水祈の問い掛けには、猛風は渋い顔をした。
「それが何を意味するかも分からぬほど愚かものはいないと信じたいが、現状そうなっているのは間違いない。組織に裏切り者がいる」
「そんな組織に連れて帰ろうとしてたのか」
「裏切り者はゆっくり探せば良い。少なくとも、組織の外よりはマシじゃわい」
そう言って猛風は水を飲み、
「まぁそれを言ったら、ワシも裏切り者じゃ。とことん付き合うとするよ」
「そりゃ何より」
そんな話をしつついると、
「じゃあ話は終わったし、行こっか!」
目を輝かせながら、虎白が言う。今日は皆で親睦会も兼ねた、焼き肉を食べに行くのだ。その前に、せっかくだから虎白の新しい服も見繕う予定である。
「それじゃあしゅっぱーつ」
「あぁ虎白様。せめて帽子などで顔を隠されては」
猛風のそんな提案も、知らなーいと言って出ていってしまう虎白に、皆は思わず苦笑いをしつつ、追い掛けて店を飛び出すのだった。
歌舞伎町ドラゴン ユウジン @YUUZIN
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