新たな仲間

「いっつ……」


猛風を殴り飛ばした龍誠だが、その直後、後ろにひっくり返っていた。


「リュー!」


虎白が駆け寄るが、龍は大丈夫だと合図する。


「あの爺。殴って吹っ飛んだ反動を使って人の顎を蹴り上げやがった」


顎をさすりながら龍は言うと、猛風も立ち上がり、


「全く。バケモンじゃわい」


猛風も顎をさすりながら言い、


「虎白様。本当にこの男を信じるのですか?」

「うん」


力強い虎白の答えに、猛風はやれやれと肩を竦め、どこかに電話を掛ける。


「ワシじゃ。マークしていた店はハズレのようじゃ。一度本国に戻り、指示を待て」

『っ!』


猛風の通話内容に、皆が驚く中、電話を切ると、


「これでいいはず」

「ありがとう。猛風」

「いえいえ。しかし条件があります」


条件?と虎白が首を傾げると、


「ワシも探すのに協力させていただく。その男の強さは分かりましたが、それでも一人にさせるのは些か危険。ワシも近くでお守りいたします」


それなら断る理由はない。と虎白は了承し、龍達も虎白がいいならそれでという感じだ。


「それじゃあ改めて宜しく頼む」

「あいよ」


猛風が差し出した手を、龍は掴むが、凄まじい力で握られたので、こっちも握り返す。


『ぐぬぬぬぬぬ』

「何やってんだが」


水祈が呆れ、2人は手を離した。


「それじゃあ一度退散させてもらおうか」


猛風は手を振ってしびれを取りつつ、振り返った次の瞬間、


「あら駄目よ」

「え?」


火月が、猛風の行く手を阻む。


「このまま店から帰る気かしら?」

「あ……」


確かに、店はしっちゃかめっちゃかで、とてもじゃないが、このままでは開店できそうにはない。


「ちゃんと片付けて帰ってね?」

「は、はい」


思わぬ火月の迫力に、猛風は大人しく頷き、片付けを始めるのだった。






























「これにて一件落着ね」

「だな」


火月に頼まれ、水祈と龍は買い物に来ていた。


「でも龍。覚悟はしておいてね」

「なに?」

「裏社会では、すでに噂になってる。獠牙リャオヤーの跡継ぎが家を飛び出し、日本に来てるって」

「馬鹿な。情報が漏れたってことか?」


虎白がここにきてから、そんなに長い時間は立っていない。それなのに、情報がここまで漏れているとは……


「私もそれは気になってるけどね。ただまぁ、組織がでかいほど情報規制はできなくなるし、どこからか漏れてもおかしくはない。問題は、それが虎白だとバレる可能性がゼロじゃないってこと」

「……」

「出来るだけ急いで虎白の家族は探してみるけど、虎白が獠牙リャオヤーの跡継ぎだとバレないように、信用できる情報屋にだけ当たるようにするから、少し時間掛かるかも」

「分かった。引き続き頼むよ」


そんなやり取りをしながら、龍は思う。


虎白に襲い掛かる闇は、これからドンドン大きくなる。だがそれでも構わない。


全てを受け止め、破壊してやる。改めてそう誓い、龍は店に向かって歩きだすのだった。

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