第4話 道半ば

 蘭子は残された魔獣などをボコボコにしてから、王城へと戻って来た。

 国民達は魔獣を倒した蘭子を英雄視した。

 蘭子はその様子に気を良くして、玉座に座る。

 「よっしゃ。よく解らんが、魔王って奴をボコボコにしてくるわ」

 酒を飲みながら、葉巻をふかし、蘭子は軽く言う。

 「そ、そうですか。早速、準備をします」

 国王は完全に蘭子のパシリ状態で動き回る。

 「準備か。タバコと酒、金を車に載せろ。車の運転手、1人が居ればいいわ」

 蘭子の言葉に国王は驚く。

 「相手は数万の手勢ですぞ。我が軍の総力でも・・・」

 「うるせぇ。つるむのはあたしの性に合わねぇんだよ」

 蘭子は国王に葉巻を投げつけ言う。

 「とにかく、十分な金と煙草と酒な。そんだけあれば、楽勝よ」

 大笑いをする蘭子。

 不安そうな国王や側近を他所に彼女は準備された馬車に乗り込む。

 「なんか。乗り心地悪そうだな」

 蘭子は文句を言いながら、荷物が満載された馬車の中で胡坐をかく。

 「おい。あんた、名前は?」

 蘭子は御者に声を掛ける。

 「私は騎士のマリオです」

 「マリオ?ゲームに出てきそうだな。まいいや。ゆっくり走らせろよ。あたしは寝るから」

 「は、はい」

 馬車はゆっくりと走り出す。

 国王は正直、安堵した。

 確かに蘭子は勇者だ。圧倒的に強く、多分、魔王軍も倒してしまうだろう。しかしながら、彼女の振る舞いはとても国王や臣下たちが耐えられるものでは無かった。逆らえば、殴られるし。

 心の中では魔王と刺し違えて欲しかった。

 彼女が魔王を倒して、意気揚々と戻って来るなら、多分、国王も含めて、王国は彼女の支配下に置かれる。それだけは避けねばならない。

 「おい・・・今から全力であの娘を元の世界に送り返す手立てを探すのだ。全力を集中しろ。儂も調べる」

 国王の言葉に臣下たちは即座に返事をして、わらわらと散って行く。多分、皆の気持ちも同じだったのだろう。国王はこれまでに見せた事も無いような険しい表情で王国の図書室へと向かった。

 

 そんな事とは露知らず、蘭子は酒を飲みながら、葉巻を吸って、馬車の旅を楽しんでいた。

 「酒は不味いし、煙草は臭い。旨い食い物でも無いもんかねぇ。テレビもネットもねぇから退屈で仕方がないんだよ」

 蘭子はスマホを片手にするが、当然ながら、それは意味のないことだった。

 「す、すいません。勇者様に出している物は全て、王国で最高の物でして」

 マリオは申し訳なさそうに言う。

 「ちっ・・・使えねぇ」

 蘭子は苛立ちながら、馬車の座席で仰向けになる。

 その時だった。突如、馬車が止まる。

 「ま、魔獣だぁ!」

 マリオが怯えたような声を上げる。

 「女みてぇな声を出すな。魔獣だと?」

 蘭子はのっそりと起き上がり、馬車から降りた。

 街道上に10匹の異形の魔獣が居た。皆、手に斧や剣などの得物を持ち、爬虫類や獣のような顔がニタニタと笑っているようだった。

 「上等じゃないか・・・ちょいと・・・捻ってくるわ」

 蘭子は嬉々として、奴らに向かって行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

召喚されし、ヤンキーJKちゃん 三八式物書機 @Mpochi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ