【○○パンク】をテーマにした小説
カタカタカタカタカタ…………
「どう? 開錠できそう?」
「いやぁ~さっすが世界に誇る我が国の公用自動車OJ-1010 "Titan-Panda"、セッキュリティ頑丈すぎてただの
「おお~、”Hello, Driver."、開錠成功だね?」
コンソールを放り渡したただじゃない鍵師と、それを受け取ったサングラスの人物はほくそ笑んだ。
第10世代公用自動車は公務員全員に支給された代物だ。これは移動手段を含めた個人支給物の一括化が目的である。この車を所有していることが公務員の身分証明であり、そしてこの車1台で仕事が一通りできるようになっている。これがあれば公務員にしかアクセスできない情報を得ることもできるし、公務員にしか入れない場所に入ることもできる。、これがない人間は公務員として認められない。即ち、車の奪取は本来の持ち主の社会的立場を丸ごと奪うことに他ならないのだ。いずれ全国民に普及する予定だというのだから末恐ろしい。一億総車社会の到来だ。
なお、個別の車種は階級によって決まっている。つまり、OJ-1010は全12階級のうち第3位の支給車だ。
「で、コイツを使ってどうするんだい? リーダー」
「そうね。この人は……あら、税務局。へ~、権限で脱税の幇助なんかやってるのね。税務局は信頼できるとこだと思ってたのに失望しちゃった」
「嘘つけ、”国に付けられた傷から流れるから血税”ってのがお前さんの口癖だろ」
「あら、そうだっけ?」
「そうだぜ」
「細かいことは気にしない。これなら、私達の記録も弄れそうよ」
「そいつぁ僥倖。今日から税金免除の上級国民ってわけだ」
「警察だったら前科前歴全部弄れたのにね。こればっかりは仕方ないけど」
「ま、そういうことならさっさと税務局のお偉いさんになろうぜ。いや~、最高な制度だね! 朕のようなテンッサイ鍵師には。早く一億総車社会が来てほしいもんだ」
そう言って2人は車に乗り込んだ。
エンジンをかける。散青
アクセルを踏む。
ガガガガッ!!
「うん?」
「あら?」
「なんだなんだ、オートブレーキがかかるような状況じゃねーだろう?」
「……ッ! してやられた、タイヤが!」
「なにぃ!?」
自称・テンッサイ鍵師は知らなかった。
第10世代公用自動車の中でも、”Titan”の名を冠する上位三車種には特殊なセキュリティが仕掛けられていることに。
――――見える鍵穴を開けたところで、この車を奪い去ることはできない。なぜなら、それで開くのはセキュリティではなくタイヤのゴムだからね。
大山自動車社長、政府高官向け発表会にて。
夜の珈琲 成亜 @dry_891
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