55.私はお酒を嗜みません
我がフリード家は、武門の家柄だ。意味合いとしては、大して変わらないだろう。
それにしても、一国を武力制圧するには足りなくとも、一国を
拳銃に撃たれたり、車体にはねられたりする範囲の外は、他人事に
全体の規模からすれば大した損害も与えていなかったが、退路を
集団の中で暴れている間は同士討ちが警戒されていても、お尻を向けたとなれば
銃弾も豊富だ。
なんとか森に逃げ込むまでに、車体のあちらこちらに穴が開いていた。道に戻る頃には、
とは言え、
「なんかもう、これはこれで、楽しくなってきたよ!」
とにかく走る。逃げる。めったやたらに撃たれて、たまに撃ち返す。
ついに後輪を撃ち抜かれて、車体が大きく
「次は、森で
「申し訳ありませんが、銃弾は撃ち尽くしました」
「そういう時のための、これさ!」
返却した
なるほど、それなりの
隠れた木の後ろからうかがうと、アルメキア軍も軍用車から降りて、部隊を展開するところだった。
道幅に銃列を
さて。
やはり遊撃戦か。攻めるにせよ待ち伏せるにせよ、最初の
一息ついて、空を見た。
青く、よく晴れて雲もない。遠く西の果てから、
「……どうやら、楽ができそうですね」
「ジル?」
「バララエフ中尉、私はお酒を
少し考える。まあ、良いだろう。
「せめてもの礼に、
遠雷が、空を切り裂くように近付いた。
フェルネラント帝国陸軍の
その
アルメキア軍が
指揮官らしい一人が軍用車の無線に
森の
もう、風は吹いていなかった。
「よお、大将。いい雰囲気みてえなところ、邪魔するぜ」
「構いませんよ。
姿はない。
声も、どこから聞こえてくるのかわからない。山の民が、狩りに使う
アルメキア軍の兵士達も、異変を察して周囲を見渡した。
見えないものが、確かにいる。
「
「殺すな、ってことか? 大将にしちゃあ、珍しいな」
声が苦笑した。自分でも苦笑する。
「もちろん、
「それじゃあ、一人も殺せねえな」
森のざわめきが、大きくなった。
地に落ちる
そして、
いつの間に現れたのか、みゅう、みゅう、と、空に
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