54.こんな物はただの石だ
なにを今さらと言えるほど、人間の集合意識、
圧倒的な科学と軍事力でほぼすべての大地と海洋を手に入れた白色人種が、最後に心の底で求めたものは、それを正当化する根拠だった。
だが、気がつけば
過去にイスハバートを襲った運命と、現在マリネシアに
混血人種の帝国であるフェルネラントと、この二国は、白色人種にとって否定しなければならない、
「マリネシアの星か、こんな物はただの石だ。だが、ただの石に、マリネシア皇帝の正統の
「いやはや……手に入れてみたら、とんでもない
「そこの
ユッティ、ナドルシャーン、カザロフスキー、マリリの視線が、次々とヒューゲルデンを突き刺した。
「まあ、かついだのは悪かったがね。しかし、無責任ってのは、そっちの
「白色人種の支配が完成した後の世界では、
「それでも、マリネシアの国民が、マリエラの海に生きる人間が、そいつを
ナドルシャーンが、ヒューゲルデンを
ヒューゲルデンは
「俺はな、ずっと海の上で戦ってきた。名前の通り、たくさん殺したよ。だからわかるんだが……戦争には、落としどころってのが必要なんだ。どっちかが一人残らず死ぬまでやる、
「ひげの皇子さんがしていることは、反対だ。イスハバートを解放して宗教を、マリネシアを独立させて伝統を、俺達のものだと突きつける……白人どもは力に頼るしかなくなるが、植民地独立のお題目は、その力まで
ヒューゲルデンの言うことは理解できる。
視点を変えれば、確かにエトヴァルトの戦略は、正論だけで自分も相手も追いつめている。
ヒューゲルデンはロセリアの協調を引き出し、
歴戦の軍人らしい
ヒューゲルデンの目が、
「ひげが考えてることは、あたしにもわからないわ。それは、あたしには見えないものが見えている、あたしが認識している以上のものを認識している、ってことよ。戦争をどうしていくかなんて、誰の手にも負えない
ユッティが笑う。
「マリリちゃん、メルルを借りるわ。リントを連れて、お兄様を宮殿まで護衛して。あの
「了解です!」
「デンさん、車を二人に用意してあげて。それから、
「お、おう?」
「カザロフスキー……さん? は、悪いけど連れて行けないから、ここでプリさんと難しい本でも読んでなさいな」
「き、きさまに命令される筋合いは……」
「あるわ」
ぴしゃりと言い切った。
「この宝探しに勝ったのは、あたし達だもの。マリネシアもロセリアも、この場は
聞くべきことはすべて聞いた。決断するべき人間に、必要なすべての情報が伝わった。
ナドルシャーンとマリリが、目を合わせた。
マリネシアとイスハバート、遠く離れた二つの国の運命が、世界大戦という歴史の特異点に引き寄せられて、交差していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます