52.我々も役割を果たすとしよう
食堂の、開いた窓から差し込む
こういう場合は、メルルも
ヒューゲルデンもまた、のんきな顔で茶を飲みながら、抜け目なく観察の視線を
カザロフスキーは、まだ具合が悪そうに
ナドルシャーンは
「同調した一羽の視覚情報を確認した。アルメキア軍はすでに西海岸の南端に上陸している。ジゼル達が交戦に入ったようだ」
ユッティもマリリも表情を変えない。
バララエフは
ジゼルの指示に反しても、危険を押して動く時だった。
「状況は想定内だが、
リントが
にゃあ、と鳴いた声に、みゅう、と応答が返る。羽ばたきがして、一羽の
ヒューゲルデンとカザロフスキー、ナドルシャーンがそろって、
腰を浮かせたカザロフスキーを、マリリが、首筋に
ユッティが海猫から
何が起きたかわからないという目で、ナドルシャーンがマリネシアの星を見つめた。
ヒューゲルデンも、言葉を探すのに数瞬を必要とした。
「こいつは、本当にたまげた……。おまえさん達、本物の魔女か?」
「そう。フェルネラント帝国陸軍特務部隊、猫魔女隊よ。戦場で鳴き声が聞こえたら、覚悟することね」
水着の左胸、
「でも、ここまではただの過程よ。答え合わせは、お願いするわ」
有無を言わせない口調だ。
ナドルシャーンとカザフスキーも、ヒューゲルデンを見る。海猫が一声鳴いて、飛び去った。
「まったく……娘が娘なら、愛人も愛人だな。ウルリッヒ坊やめ、大したもんだ」
ヒューゲルデンが、肩をすくめた。
「案内しよう」
立ち上がり、歩き出す。
ユッティとナドルシャーンが並んで歩き、カザロフスキーと、
メルルがマリリの肩に乗って、最後にリントが続いた。
食堂の外に出ると、いくつかの建物を迂回して、敷地の陸側の端に向かう。散歩のついでのように、ヒューゲルデンが説明した。
「この軍港は、前にも言った通り、元はフェルネラント海軍の施設でな。あそこは病院だ。今は診療費を
分厚い肩越しに、ヒューゲルデンの目がユッティを見た。
「ところで、おまえさん、
「どうかしら。通り一辺倒のことなら、聞きかじっているけど」
「それで良いさ。神が世界を造った話の中に、神は、自分の姿に似せて人間を創造した、って一節があるだろう?」
ユッティが
ほとんどの構成国家が国教にしている
「では神の肌は、何色かね?」
ヒューゲルデンの問いに、ユッティがしばらく言葉を失った。
「え……だって、人は人でしょ? 何色でもありじゃない?」
「白だっ!」
叫んだのは、カザロフスキーだった。
今度はユッティが、唖然として目を丸くした。
唯一神教は
白色人種発祥の宗教と誤解している者も、実のところ少なくない。
だからイスハバートでは、民族の
唯一神教の教義が有色人種から発祥したのであれば、神が創造した最初の人間は有色人種であり、神も有色だ。
白色人種は、神が自身の姿に似せた人間の
それは現在の唯一神教の主流派にとって、決して受け入れることのできない論理だった。
有色人種の単一民族を、唯一神教の伝説の中に残してはならない。
混血の進んだ
これがイスハバートに対する
マリリが一瞬、足を止めた。だが、それだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます