44.どうぞお気遣いなく
朝食後、島の
黒髪を
「
「いや、でも……お兄様?」
「誰がおまえの兄だ」
ユッティの
「
「心配ってわけじゃないんだけど……あたし達、ひげから、
「マリネシアの星か。浜辺の騒ぎの原因だったらしいな。偶然ではあるのだろうが、驚かされた」
「こういう偶然は得てして、事態が動く
ジゼルもユッティも、唖然とした。
マリリは興味もなさそうに、肩に乗せたメルルをなでていた。
「つまらなかったな。冗談だ」
「冗談、ねえ……冗談にできるくらいなら、こっちとしてもやり
「だから、誰がおまえの兄だ」
「その感じも良いよね! なに、ひげがいなくなったら、けっこう話せるようになったじゃない?」
「
ナドルシャーンが苦笑して運転席に座ると、隣にユッティが座った。
昨日と同じ水着に
ナドルシャーンの後ろにジゼルが座る。
砂色の略式軽装だが、新調した腰帯の左側には、上に小太刀、下に大太刀、
少し位置をずらせば、座っていても刀身を立てることができ、乗車の
さすがに、ナドルシャーンも奇異の目を向けた。
「それは、フェルネラント帝国陸軍で標準的な装備なのか?」
「私物のようなものです。どうぞお
「おまえの兄でもない」
また
同じ砂色の略式軽装で、腰帯には拳銃と
応答するが口数は少なく、景色をよく見ている。ジゼルは微笑むだけだった。
最後にリントとメルルが乗って、軍用車が走り出す。
風はカラヴィナとは違い、果実より
歩いている人々の表情も、総じて明るい。
男も女も浅黒い肌を露出した、簡素だが色彩の派手な民族衣装で、驚くべきことにユッティの格好が目立たない。
物品を売り買いする者も、農機具を
基礎課程の学校にでも通うのだろう、集団で移動する子供達の方が忙しそうだった。
道路や新しい建物の造りは、カラヴィナと良く似ていた。
同じ技術で指導されたのだから当然だ。古い家などは木造りの質素なものが多く、土は白く乾いていた。
人に混じって、小型の鳥類も多く見られた。中にはほとんど飛ばず、警戒の様子もなく、道端で小虫をついばんでいる種類もいた。
天敵となる捕食者はいないようだが、それなりに大型の野生動物なのだから、人間の生活圏からは距離を置いているだろう。
森の端、切り立った崖で海に面しているような地形で、
「くわしいな」
「こう見えて
いぶかしむナドルシャーンを、ユッティが強引さで押し通す。
「そこまで確定できているなら、心当たりも幾つかある。少し森を歩く必要もあるが」
「問題ありません。こう見えて、
今度はジゼルが、得意げに鼻を鳴らした。複数形で巻き込んでいることに、多分、悪意はない。
さほど待つでもなく、ナドルシャーンが軍用車を止めた。
道路脇に広がる森は、緑が濃く
豪語した通り、ジゼルとマリリにとっては何ほどのものでもない。
ユッティは、まあ数歩ごとに文句を言っていたが、意外と面倒見の良いナドルシャーンに押されたり引かれたりして、どうにか森を抜けた。
抜けた先は、景色が開けていた。
そして見渡す限り、木の
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