39.遠慮くらいしなさいよ
背中側と
「
「ここには同族を含む、大型の捕食者がいないのかも知れない。
「わ、わかりました」
むしろ飛びかかりそうなメルルを、マリリがひっ捕まえた。海猫の方は気にしていない様子で、珍しそうにリントを見ながら、首を
「あれ? 首根っこの羽毛の下、なんか
いつもの
言われてみれば、首を二重にまわって、
「そいつを捕まえろっ!」
突然の叫び声が、割って入った。
見慣れない男だ。砂浜を不格好に走り、止める間もなく、ジゼルに
起き上がりざま、ジゼルが手首を取り、きれいに回転させて背負い落とす。
棒のように背中を打った男が、うめき声をもらすより早く、
頭の半分が
「私としたことが、砂浜というのを失念しました」
「ちょっと……遠慮くらいしなさいよ」
「本気なら首を狙います。心外です」
つかんだ手首を、またひねる。何かの八つ当たりのようにも見えた。
男がようやく、うめき声をもらすことができた。色々と乱れているが、それでも
赤毛を
まあ、暴漢の
海猫はとっくに飛び去っている。エトヴァルトの横で、ナドルシャーンと呼ばれていた男が
その横からまた一人、見慣れない
険しい目で、ジゼルをにらんでいる。
白い
ジゼルと少女の間に、マリリが立った。
「あの男が、ジゼル様に無礼を働いた。他に言うことがあるか?」
互いににらみ合う目線が、ほぼ同じ高さだった。
「やめろ、ルシェルティ。お客人の言う通り、おまえの連れの無礼だ」
「お兄様……っ!」
「謝罪の一つもできないようなら、私のしつけの問題だ。代わってやる」
ルシェルティとナドルシャーン、今度は兄妹二人がにらみ合う。
ややもして、振り払うようにルシェルティが背を向けた。ジゼルを無視して膝を折り、男の、つかまれていない方の手を握る。
「
「は……はい、
ジゼルが目で問いかける。エトヴァルトも、肩をすくめるだけだ。
仕方なく、ジゼルが男を解放すると、飛び起きて、何はなくともまず髪を整えていた。
「おくつろぎのところ、大変お騒がせ致しました。どうぞ引き続き、お楽しみ下さいませ」
言い捨てて、ルシェルティが
「あれで謝罪のつもりですか、ふてぶてしい」
二人が去っても
ナドルシャーンが
「妹に代わり無礼の数々、改めて謝罪致します。
「あなたが何者で、あの女が誰か、詳しく聞いていないから言わせてもらうが、そんな
マリリの鼻息に、ナドルシャーンが言葉を失くす。ジゼルとユッティに加えて、エトヴァルトまで、一緒になって苦笑した。
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