35.なにを怖がっているのですか
メルデキントの砲弾が、大剣を打ち鳴らして砕け散った。
「ジゼル様、今そちらに!」
「来ては駄目です」
ジゼルがマリリを制し、右腰の
メルデキントの装備では、攻撃はできても防御ができない。
巨大でありながらリベルギントを
間合いに入られたら、メルデキントには、なすすべがない。それでも、この時ばかりは、マリリはジゼルの制止を聞き入れなかった。
敵性機体との間合いを
「ジゼル、ここは
言葉がもれた。
適切ではない判断だ。また、原因が不明だった。
「
それはわかっていた。
だが、わからない。解析ができない。
戦闘の極限状態の中で、ジゼルは過去、同化の領域に踏み込んでいる。あの時の状態と同じだった。
「ジゼル、これ以上戦えば、完全な同化に進行する可能性がある。
「構いませんよ。私とあなたの仲じゃありませんか」
敵性機体にゆっくりと向き合い、左腰の大太刀を抜いて、右片手に水平に開く。両腕と機体が、正十字を
「身体の奥で……あなたを感じています。
怖がっている。これは、怖がっている、という状態なのか。
何を怖がっているのか。何を
ジゼルが微笑した。
「本当に
ジゼルの言葉が、状態を変えて、
これが心と定義されるなら、こちらの
「あなたが心に触れて、夢を見せてくれたあの時から……私には、怖いものなどありません」
……
…………
理解した。
価値あるもの、大切に思うもの、
心を持ち、それを理解したのなら、私は私という生命だ。
そして生命なら、出会い、結びついた生命ならば、
今度は、ジゼルが私に教えてくれた。
原因は解消された。私にも、もう怖いものはない。
「すべて理解した。この身は
ジゼルが、少し驚いた顔をした。だが、すぐにまた微笑んだ。
「それでこそ、私のあなた」
ジゼルの身体から、
メルデキントの
充分な時間を作ってくれた。後はただ、生きるか死ぬかだ。
リベルギントが走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます