28.わかるように話してくれ
毛皮のない不便な人間達は、全員、頭と口元に布を巻いて手袋をつけた。
短時間で
クジロイ達の案内で通常の
双眼鏡を使えば、街路を歩く人間も視認できる距離だ。
「夕暮れを待って潜入します。クジロイ様、他の
「おい。まさか、俺を置いていく気じゃねえだろうな?」
「……正直、クジロイ様は
「大将の顔としゃべり方ほど、
「クジロイが正しい。連れて歩けば、少しはジゼルの雰囲気も、人並みに
「あなた最近、私に
ジゼルの口の端が下がる。布で見えなくてもわかる。
「まあ、良いでしょう。他の
「……どういう意味だ、そりゃ?」
「詳細は
「わかるように話してくれ」
「無理です」
斬り捨てて、ジゼルが
「二種類の鳴き方で文章を組み立てます。長文になるとかわいそうですので、詳細は
「本気かよ……」
記号表の上を歩きながら、にゃ、と、にゃー、で読み上げるメルルに、チルキス族全員が当惑したように、何度も顔を見合わせた。
ジゼルとマリリが、潜入用に用意していたイスハバートの民族衣装に着替え、
顔を含めて肌の露出の少ない様式が、こういう場合には幸いした。
それでも、いつものことだが、いそいそと
「そいつを持って行く気か?」
「わきまえていますよ。心外です」
ジゼルが口の端を下げながら、
「持って来ておいて良かったです」
「おいおい……」
「潜入偵察ですよ。
「いや、だったら拳銃とか」
「音が邪魔です」
言っていることは正論だが、小太刀の、いかにも実用的でない
そのはずで、小太刀はフェルネラント陸軍および海軍の将校が
邪魔な
もともとあちこちの街で、それと気づかれないように往来している民族だ。
隠れた交易商人としてのチルキス族の行動範囲は、実は一般に考えられているより、はるかに広い。
夕暮れの
街の中は、時間帯もあるだろうが
街の中央にある大聖堂から、暗い
「マリリ、
「はい。タトラは燃料になる物も少なく、夜は早いのが普通です。どうしますか?」
「それでは、適当な空き家を見つけて休みましょう」
「なんだよ、夜のうちに嗅ぎ回らねえのか?」
「適任がいます」
リントが、にゃあ、と鳴いた。
ここにも同族は多くいる、問題ない、と、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます