19.理にかなっている
ユッティの場合は、推測するに、以前から知っている
「一人旅ってわけでもないでしょうに……どうせ、
「あら。やはりあなたは聡明ですわね。こればっかりは、全部が全部、人任せというわけにもいきませんから」
意味ありげにヤハクィーネが口をつぐんで、ユッティが肩をすくめた。
疑問をはさむより早く、車が政務首都シレナの市街地に入り、すぐに統合軍司令部の敷地の
塀の高さを超えて、陽光を反射する金属の構造体がある。
大きく張り出した、放熱機能を兼ねた
人間を模した四肢と、後頭部から背面にかかる
全身を覆う
「
「今時、兵隊一人一人に剣術修行させるわけにもいかないし、鉄砲並べて数撃ちましょうってことね。戦闘車両との差別化は、どう考えてます?」
「いくつか想定していますが、報告書にあった機動性と、なにより……」
「落ち着いた緑ですね」
「
「真似したと思われるのも悔しいですし、似たような寒色系は候補から外しましょうか」
「繰り返すが、彩度はともかく、明度は低い色が望ましい。光の反射率を第一の検討要素とするべきだ」
「あんた達……見るところ、そこ?」
ユッティがまた肩をすくめて、ヤハクィーネもまた、自然に近い笑顔を見せた。
笑われている内に、車が司令本部の前に着いた。
降りるや否や、ジゼルが後部座席の
前時代的な光景だが、魔女の異名で知られた今となっては、奇異の目を向ける者もいない。
司令本部は、大演習に前後して市街地の外れを整地、建築したもので、総督府と同じ鉄骨と
そこだけ
敬礼が、少し慣れていないようだった。
「なんだか場違いに可愛らしい娘さんですね」
自分のことを
手足の動きの
少し遅れたが、ジゼルのわずかな動きを察知して、少女が緊張した。
それでも動かず、まっすぐにジゼルを見返した。武術の
「それ以上は無法だと思うが」
「わきまえていますよ。心外です」
口の端が下がっている。危ないところだった。
「ジ……ジゼリエル=フリード様、ユーディット=ノンナートン様、ヤハクィーネ様、お待ちしておりました! 御案内致します」
「やっぱり。可愛らしい声ですね」
「なになに、あんた、年下には甘い方? それじゃあ、良い師匠になれないよ?」
「気をつけます」
涼しい顔をして、ジゼルが少女を
呼ばれなかった整備兵達は、とりあえず車から降りて、思い思いに木陰を探し始めた。
リントも呼ばれなかったが、当たり前の顔でジゼルの横に並んでいた。
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