18.ずいぶん好意的ですね
戦闘出動からの
まったく、忙しい限りだ。
リベルギントを
人員よりも設備が多い。
汎用車の後部座席にジゼルとヤハクィーネが座り、リントはジゼルの膝の上で、奇妙な雰囲気の隣人を軽く警戒している。
エトヴァルトは言うだけ言って昨日の内に
「ヤハクィーネというのは現在、個人名ではありません。
ヤハクィーネの物言いに、ジゼルが笑った。
「構成個体、ですか。単語の選び方に、なんだか親近感を覚えます」
「
ヤハクィーネがリントに、いや、こちらに目を向けた。
「神霊様のお人なりも、と言って適切なのかわかりませんが、ユーディットからの報告書で存じ上げておりますわ。会話の受信も、こちらの方で同調しました。
「厳密な定義は別として、神霊に近い存在、と認識する。ユッティが初対面と言ったのは、この場で使用している構成個体であり、同時に複数個体が
「
無表情の中に、微笑みのようなものが混じる。
「これほど
「状況を理解した。支援を期待する」
ヤハクィーネが、律儀に一礼した。
それを横目に見て、会話から少し除外されていたジゼルが、鼻を鳴らした。
「ずいぶん好意的ですね。あなたにしては、珍しいです」
「ジゼルを敵対視する相手でなければ、こちらも敵意を持つ理由はない」
「……
「好意的な対応が珍しいとすれば、これまで会った人間に、ジゼルを敵対視する相手が多かったというだけだ」
ジゼルの口の両端が下がった。何か応答を間違えたらしい。
今度は先刻より自然な笑みが、ヤハクィーネの顔に浮かんだ。
「とても良い関係性をお持ちですわね。心配のし過ぎだったかも知れません」
「心配、とは何か」
「エトヴァルト殿下にも申し上げましたが、個体生命と
神霊を研究する過程で同類と化した自分達のように、ということだ。淡々と、事実として提示する。
研究機関の構成個体なら、その学術を志向し、認識した上の状態であるはずだ。同情する筋合いもないだろう。
「ユーディットには繰り返し教え、念を押すように言っていたのですが、申し訳ありません。彼女はどうも、物事の受け止め方が
「良くわかります」
「そちらの
「ええ、まあ。それも初めての事例で、明確な
ヤハクィーネが、また笑った。何が要因となっているのか、この短時間に、無表情が加速度的に
「生存本能に強く支配される野生動物の自我は、肉体に存在する限り、人間とは異質の強さを持っていると考えられますわ。ある意味、そこは安心して良いのではないでしょうか」
「後はユッティ本人か」
「んぁ……なに、呼んだ? ああ、もう、痛たた……どうしてこう、車ってのはゆれるのかしら。眠れやしない」
たった今までの自分の行動を全否定しながら、のんきに首をさすり、背中を伸ばす。
ヤハクィーネがため息をついた。
「眠っていなかったのなら、ちょうど良いですわ。私の話を聞いていましたね、ユーディット」
「えぇ? ネーさん、話が長いんだもの。いちいち聞いて……うわっ、やっぱ気持ちわる!」
「先生」
「ネーさん基本、女でしょ。本部じゃ、けっこうな美人を使ってたくせに。なんだって、わざわざそんなの
「人をつかまえて気持ち悪いだの迷惑だのと。仕方がないでしょう。戦時中の
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