17.正確な計上は不可能だ
平野の自然をまっすぐ照らす
赤黒い血と
少なくとも、
「うわー。こりゃまた、落とせそうもない汚れ方ねえ。聞いてもしょうがないけど、何人分よ?」
「四十人程度、でしょうか」
「
「……いっそ上からなにか、適当な色に塗っちゃおうか」
ユッティが、
同じ野戦服に黒髪を
「やはり、あなたと同じ
「それじゃ大して変わんないでしょうが。もっとこう、秘密兵器っぽく派手でカッコ良くて、なおかつ汚れが目立たない色よ!」
「一部文脈が理解できないが、それらの要求を
「金色がいいなあ、僕! やっぱり一等賞の人は金色ですよ! ええと、命令したら駄目ですか?」
ジゼルが立って敬礼し、ユッティは露骨に渋い顔をした。
「ひげ侯爵の次はひげ皇子……
「先生」
「訂正しよう。彩度はともかく、明度は低い色が望ましい」
最大限まで好意的に言えば気さくな、
「ユッティさん!
「ああ、もう、面倒くさい。そこまで言うなら、ほら、本当の功労者が集まってきてるんだから、そっちをねぎらってやんなさいよ」
すぐそばの
リベルギントの整備や撤収作業にかかっていた兵士達が、顔色を
さすが同族でも純粋な野生の捕食動物たる面々であって、人間などに
給仕車から大量の
鋭い牙で、まだ血のしたたる肉をむさぼる
それでも
事例の発生都度、協力した全員が満足するまで食事を提供するという
だが、まあ、第三者の視点から不気味に見えるのは仕方がない。
平然と輪の中心にいるジゼルをして、人喰い山の魔女と味方からも恐れられる
「すごいなあ! 本当にいろんなことができるんですね。
目を見合わせたジゼルとユッティの、どちらが返答するよりも早く、重々しい声が割って入った。
「なりませんわ、殿下。神霊核との同調は
いつの間にかエトヴァルトの後ろに、白衣のような
銀灰色の短い髪と
「
男の言い回しは、
「あなたがフリード侯爵の御息女……いえ、今はあなた様が、フリード侯爵でございますわね。初めてお目にかかります。私、ヤハクィーネと申します」
「ジゼリエル=フリードです。父をお見知り置き下さり、恐縮です」
とりあえず敬礼するジゼルの隣で、ユッティが、
「あたしも、そんな厳つい顔は初めてっすよ。ネーさん」
「先生はお知り合いですか」
「この顔は初対面だってば」
男が、ため息まで重々しく、ユッティを
「文脈が不明瞭ですわよ、ユーディット。申し訳ありません、ジゼリエル様。
うながされて、全員の目がエトヴァルトを注視した。
山猫の一匹に手を伸ばし、うるさそうに尻尾ではたかれて、
にゃあ、とリントが鳴いて、さすがに気がついたようだ。
「ああ、ええと……そうでした、そうでした。皆さん、お疲れのところ申し訳ありませんが、撤収作業が終わったら防衛任務を他の部隊に引き継いで、統合軍司令部に参集して下さい。大事なことなので、私が直接伝えに来ました。重要機密ですよ」
「なによ、どっかに飛ばそうってわけ?」
「先生」
「正解です! 一部の人には、文字通り飛んで頂きます」
エトヴァルトが大げさに両腕を広げ、薄い胸を張った。恐らく意味のある動きではない。
「次の戦略目標は旧イスハバート王国、現シャハナ国トンロン属領区です。国境を越えて、イスハリ山脈を侵略します」
これも恐らく、自分で言った重要機密であろう作戦内容を、堂々と
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