12.あなたも一緒に来ませんか
クロイツェルは歩兵と同じ野戦服に、仕方ないとは言え、この暑い中、司令官の
ユッティは砂色の略式軽装で、腕まくりに
ジゼルが並んで、三人とも、少し遠くを見た。
「おじさま」
ジゼルの呼びかけに、クロイツェルが
「私、おじさまが
「ウルリッヒとは、生まれた家柄も、育った環境も同じようなものでしたから。
「そこは武門の礼儀ですよ」
「父が好きで、武術にひたむきな姿にあこがれて……いつか、私もあの隣に立つんだと、同じ道を一緒に歩くんだと、子供心に決意していたものです。結局、父には、わかってもらえなかったかも知れませんけれど」
何かを言いかけたクロイツェルの前に、伝令の兵士が現れ、無言で敬礼した。
クロイツェルが
ユッティが腰から拳銃を抜き、少しいじってから、苦笑して戻した。ジゼルからの借り物だった。
クロイツェルは自身の指令所に立つ帝国軍旗を
「ウルリッヒも私も、財産と才能に恵まれて、
「人の世の哀しさ、ですね。私も……私と、私の殺した人達は、なにが違っていたのか、ずっと考えています。同じ人間同士、なにをもってすれば結果を、今の自分を正当化できるのか……きっと答えなど、ないのでしょう」
「人間は、人種や能力によらず、平等に尊重されるべき権利を持つ。生きる意味と、価値を持つ。快適な部屋で酒を飲みながら、まじめな顔で語り合った理想です。それが今、帝国の
「お父さまにもおじさまにも、そんな若者の頃があったのですね。とても情熱的で、すぐには信じられないくらいです」
「今でも、さして賢くなってはいませんよ。本国を
「
「
言葉に、
クロイツェル
装甲車両と
呼応するように左翼、前衛の一部からも同じ動きが広がり、
「国家ではなく
「それが、おじさまの理想に重なるのですか」
「
クロイツェルの穏やかな声が、証拠もなく、可能性も高くなかった推論を実証した。
再度の襲撃は不要だった。
リベルギントの破損と、自暴自棄にしか見えないジゼルの
ジゼルとユッティの大演習からの脱落、少なくとも今日以前の段階で、それは確定的に見えたはずだ。
クロイツェルを始め、他の基地の部隊にも同志とやらは存在し、この瞬間に
恐らく明日にでも、どこかの
一気に侵攻する必要はなく、国境付近で
それで充分、諸外国が介入する口実になる。
「騒乱の速やかな
敬礼ではなく、腰に手をあてて、ジゼルが微笑んだ。晴れ晴れとした、子供の顔だった。
「お
リベルギントの胸部装甲に、ひらりと飛び乗った。
「戦場でお会いする時を楽しみにしています。それまでご機嫌よう、おじさま」
クロイツェルも、
ほんの少し、目と目が合った。それだけだ。
胸部装甲を閉じて、機体を起こす。後頭部から背面に伸びる
「中央と左翼方面の敵性部隊は、恐らく本陣に向かっている。わかり
「そんなことまでわかるのですか」
「平野各所の
「すごい。あなたの
「賞賛と認識する」
「少し違うのですが」
くすりと笑い、ジゼルの手が
「参りましょう」
補助内燃機関を発動させ、一気に加速した。
動車輪の
金属製の
またしても
勢いのまま最後衛の隊列に突入、歩兵を
運良く
至近の装甲車両が反転するより早く、車体に大槍を突き込んだ。
接触の瞬間、
剣術や槍術において、
穂先の一点で圧力が
引き抜いた穂先は、血と機械油でまだらに汚れていた。
恐慌を起こした歩兵が、全周方向で発砲する。リベルギントの積層装甲に
次の装甲車両に目標を定め、人も物も一緒くたに
今度は
装甲板の
追って、機体ごと回転するように、鋼鉄の大槍を
弾道予測、ほとんどは回避するまでもなく敵部隊だけを打撃し、
一瞬も同じ場所に
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