7.一つだけで良いのです
翌日からの搭乗試験は、大きな
調整室の壁には大穴が開いたが、機材が無事だったことが幸いした。屋根と同様、こちらは両開きの
起動から歩行、基礎動作における各部の負荷、搭乗者の操作性、反動の有無などを細かく測定し、調整を加え、最適値にすり合わせる。
屋外の
「責めるわけじゃないけどさ。いきなり無茶苦茶な機動してくれて、あっちこっち
「謝罪する。搭乗者の操作がない単独の戦闘機動では、全身の制御に情報処理が
「んー、手持ちの資材と調整で、どこまで持っていけるかしらねえ」
「部品の
「頼りにしてるよー。いや、ほんと、かなり真面目にさ」
調子の変わらないユッティに対して、ジゼルは
作業の合間になると、離れた木陰で
今も、深く腰を落として
「昔、父の
近付いたリントを、軽く見る。
「教わったわけではないので、不正確です。けれど、剣を扱う武術の型には、似たような構えが多く見られます。前後の動作が遅れる、現実的ではない型が、なぜ
ジゼルが片膝立ちになり、地面に突き立てた太刀の
「このようにして使うのですね。まさか、銃弾を防ぐため、だなんて」
「銃が開発されてから長い期間、銃弾は球形の
現在普及している、
気休めの古い技術と言えば、それまでだ。
「父は生前、ついに一度も、私に稽古をつけては下さいませんでした。武術は役目を終えた消え行く技術、武門の継承など無意味だと、いつも言っていました。私は父の言いつけに
立ち上がり、太刀を納めて、ジゼルが
「あなたは、知っているのですね」
「
「記憶があると」
「少し違う。他の情報に比べて、検索が容易だ。重要性、あるいは
「充分です。私に教えて下さい」
「意義のある行動とは言えない。太刀を例にしても、有効な使い方にそれほど多くの種類はない。
「一つだけで良いのです」
ジゼルの目に力が込められた。
つかんだ糸を離すまいとする、必死の力だった。
「昨夜の
「リベルギントと人体は、似ていても異なる構造体だ。同じ使い方が最適の解であるとは限らない」
「それでもあなたは、より高い水準を
一歩も
あえて言えば、無意味な強さだ。
武門などにこだわらず、無数に存在する他の価値観に目を向けることが、なぜできないのか。
それは、まったく
近く始まるだろう戦争の最前線に、17歳の女性を必要とする
ジゼルは自分を、志願してここにいる軍人と言った。
ジゼルが内に持つ意志が、
個体生命にとって死を回避できない行動基準は、多くの場合、無意味だろう。
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