指先が向く先の話
「やあやあ初めましていやもしかしたら久しぶりかもしれないね何分永いこと生きてるもんで物覚えがめっきり悪くなってるのさところでこんな話を知ってるかなここにかつて居た不死なる者の生き様とその最期もちろん不死なんだから本当に死んだわけじゃないけどとてつもなく永い時間をかけて復活するのさたまたま目に付いた死にかけの娘に気まぐれで不死を分け与え永久の伴侶を求めた男に拒絶と逃避で応えた娘に時には不死の解除をちらつかせ時には永劫を生きる苦悩懊悩を零して陰に陽に篭絡しクソがあのヤロウあんなこと言っといて何で死んでんだ死ぬもんか私は死んでないしお前の肉はいつまで経っても腐りゃしないんだどっかで生きてんだろ返事しろよなあおい不死だろ死なねーんだろ死にたくても死ねないっつってへらへら笑ってたじゃねーか顔見せろ殴らせろ声聞かせろ噛みつかせろよ私はお前が死んでからもう3000年も独りなんだぞいい加減顔見たいし声聞きたいし隣にいて欲しいし何だよ何でお前はここを指すんだよ何度ここに来たって不死者はいないしいるのは未練たらしく男の影を追っかけるバカ女だけなんだよなあ教えてくれよ私はどうすればお前を忘れられるんだお前がいるなら永遠に生きるのだって悪くないって思えたのにどうしてお前はここにいなくて私はずっと独り、で」
ころん、と握り込んでいた指が落ち――真っ直ぐ地面に突き刺さる。
2人が出会ったこの場所を示すように。
その指先は、まっすぐに始まりの方へ向けられていた。
わんあわーらいてぃんぐ @Stellar8492
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