第3話 服装が気になるオネエ
「おぬしの大切な記憶をもらうことになるのじゃ。そしてこの世界は魔王が長年支配している魔王城がある。300年前の魔王との戦で今は封印されておるが間も無くその封印が切れると見ておる。おぬしは再び封印が解かれた時、魔王を打ち滅ぼす勇者となるのじゃ!」
なんかババ〜ン!って音楽が聞こえそうな雰囲気を背負ってドヤ顔。金髪美少女(男)じゃなきゃ殴るわよ。
先程の8畳間から場所が変わり見たことがないような壮大な植物が生い茂る森の中にアタシは置き去りにされた。
アタシがファンタジー世界の中にいるだなんてほんとこんな事もあるのね。自分がどうやって死んだのか全く憶えていないし、突然勇者になれって言われちゃって驚きだけど、どうせなら楽しく生きていこうじゃない!
まぁ、大切な記憶以外の生前の記憶はあるから基本的な生活は出来るかしら?
身体や脚にまとわりつく茂みを掻き分け進んでいく。
ふと自分の服装を見た。気になるのは初期装備とか言って襟があいて紐がちょろりと付属している生成色のシャツに濃い茶色のパンツを勝手に着せられてしまった。
こんなのそこら辺?のオジサンしか着ないんじゃないの。なんなのこのちょろり紐?
おまけに足元は焦茶色のビンテージ感のあるレースアップブーツ。
アタシの今までの突き詰めたアイデンティティはどこ行ってしまったのよ?
お気に入りだったあの15センチヒール達が恋しい。自分の自慢の赤い少しウェーブがかかったロングヘアスタイルは変わらずなのが幸いだ。
ぎぎぎぎぎしぎしぎしぎしめりめりめりめりっっっ
「わぁああああああああああああ!!!!」
近くから大きな音と叫び声が聞こえる。
え?なんなの何事?
オネエ勇者と封印された魔王城 南雲ろった @lkumo
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