第3話
親父は相変わらず、働いていない生活で、色んな女の人が身の回りの片付けや飯を作ってくれているのだそうだ。
俺は、思う。
女の人だって馬鹿じゃないし、むしろ他に女が入りしている、と気付かないわけがないだろうと。
しかし、親父いわく、女性に、さも当たり前かのように「ああ。だってここ俺の家だからね。そりゃ俺が生きてますから。物の場所も変わるの当たり前だろ?」と、シレッと言えば全く疑われないらしい。
ちなみに女同士がぶつかる事もないそうだ。まさにある意味、神隠しのような一夫多妻制である。
仕事をしていないからこそノンストレスだからなのか、このひょうひょうとした雰囲気が親父の魅力なのかもしれない。
ーーーーーー
兄貴は、結婚しているが子供はいない。
ちなみにニート。
どうやらお嫁さんが、メンヘラらしい。
何回かあった事があるが、ぶっちゃけ太っていてブスだ。
学生の時から付き合っていて、お嫁さんが来る度に、喘ぎ超えを抑えきれていないのが聞こえる度に、「よくあんなブスとヤれるなぁ。」と、むしろ兄貴に関心していた。
兄貴も、別にお嫁さんが特別好きというわけではなく、なんとなく付き合って、なんとなく結婚したらしい。
で、お嫁さんは自分で生まれてから今まで爪も眉毛も自分で手入れしたことがないそうで、結婚するまではご両親に、結婚してからは兄貴に手入れしてもらっているそうだ。
ぶっちゃけ気持ち悪いと思った。
それが当たり前だと思っている事も、それを普通に話してしまう所も。
だからそんなボサボサの眉毛で、たまに化粧とかしててもブスなんだよ、と思った。
しかも、少女漫画とか好きらしくて、脳内が変にメルヘンというか、やはり少女漫画チックで、どの面下げて、そんな夢見がちでいられるんだよ、と引いてしまう事が多々ある。
そんな、夢見がちで痛々しいお嫁さんだ。どうやら兄貴と結婚して、兄貴が休みの日に仕事で居ないとさみしくて泣いてしまうらしく、「仕事に行かないで!私が頑張るから!」と、お嫁さんがバリバリ働きだし、兄貴はお嫁さんから毎日お小遣いを貰い、主夫としてお嫁さんを支えているらしい。ちなみに、兄貴は浮気はしてないが、ちゃっかり風俗へは行ってるし、パチンコや競馬仲間の女の人と遊んでいる。
まさにヒモ界のエリートだろう。
ーーーーーー
「かっかっか!相変わらず家族全員クズでゲスだなぁ!」
親父が、ビールを飲んで豪快に笑った。
年越しそばも食べ終わり、紅白も終わりに近付き、三人で、コタツでおでんを囲んで近状報告を終えた。
兄貴は、これからも子供は作る気はないらしい。自分の時間と金が減るのが嫌だそうだ。しかし、お嫁さん側のご家族としては、そうはいかないだろう。その度に兄貴は、「俺との二人きりの時間が無くなってもいいの?」と、言えばお嫁さんは、「貴方との時間は誰にも取られたくない!」と、言って出産願望が落ち着き、ご両親を説得させているらしい。本当にお嫁さん、凄いメンヘラだな。
「おい!貴久!お前は、どうするんだ?!」
「えー。まあ女性にも金にも困ってないしなぁ。そこそこかなぁ。」
「そうかそうか。」
孫の顔みたいとか、親父は思う事ないのだろうか?でもそんな話、話題にすら出てこないからな。
もうすぐ、年が開ける。
きっと来年もこんな感じなのか?
ただただ、愛に飢えている事もなく、金にも生活にも不自由していないクズでゲスいだけの家族。全員同じ血が流れている事に納得出来る。
やっぱり家族はいいな。落ち着くし安心する。
ビールの苦味を感じながら俺は、卵に辛子をつけて、口に運ぼうとしていた。
ーーーFinーーー
ヒモ貴族 あやえる @ayael
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