「アフリカの鬼…」

低迷アクション

第1話



1997年の夏“山木(やまき)”は期待していた撮れ高が得られず、うだるような、

アフリカ、コンゴの熱帯で1人喘いでいた。戦争の終結後間もない、この国では、

混乱状態が続き、そこかしこで怪しげな噂が蔓延っている。ここなら、番組のネタに

事欠かないと踏んだのが間違いだった。ため息をつき、銃弾跡の残る壁に頭を打ち付ける彼に通訳の“サヴィヤ”が声をかけてきた。


「ヤマさん、ゴメン、仕事なくて…」


「大丈夫だ。サビ、ただ、あれな…何か1つくらいネタがあるとな…

そうすりゃ上司に殺されない」


苦笑いの山木に、相手は少し考えた後、ポンと手を打った…



 「日本語のベンキョー、ホンで覚えた。モモタローの敵“オニ”いる村シッテマス」


サヴィヤに説明され、その村に着いたのは夜だった。正直、信じられない話だが、

元々、撮れ高のネタがネタだけに、何でも良いと思う気持ちもあった。


村は夜だと言うのに、火が炊かれ、昼間と同じくらい明るい。

その中を銃や鉈を持った村人が走り回っている。


「サビ、まるで戦時下みたいだが、鬼は本当に出るのか?」


「ハイ、この辺りは昔から出ます。オニ、暑い季節になると、村に来て、家畜や子供襲う。村人、この時期になると夜も明かり灯して、見張る、なので…」


サヴィヤの説明は何処かで上がった悲鳴によって遮られた。声の方向に山木は

走る。自分の背丈ほどもある草を掻き分け、飛び出した先には大きな畑が広がっている…


その真ん中に、ノッソリと立つモノがいた。背は山木より、一回りもデカい。

逆光で見えにくいが、体には尖った羽毛が伸び、猫のような目と異様に細い手、

嘴みたいに尖った口には、どす黒い血がこびりつき、滴っている。


…そして頭の部分には左右に突き出た“角”正にそれは


「鬼…」


思わず呟く山木に戦慄が走る。


彼に気づいた鬼が背を屈め、金属を擦るような咆哮を上げると、こちらに突進してきたのだ。


鋭い牙の並ぶ口が眼前に迫る瞬間…


銃声が鳴り、音に驚いた鬼が鳴き声を上げ、長い尻尾をこちらに向け、暗闇へ走り去っていった…



 以上が番組制作を仕事にする山木の体験である。97年当時、

彼は“モケーレ・ムベンベ”というUMA(未確認生物)の取材で、コンゴを訪れていた。


話を聞いた私は、1枚の資料を山木に見せ“照会”を求める。彼は“間違いない”と

答えた。


資料の中身は“カルノタウルス(訳:肉食の雄牛)”と呼ばれる角竜、白亜紀に生き、

絶滅した種、つまり恐竜である…(終)

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