第23話 旧世界の遺物

 ユイ達四人と別れたマイ達四人のチームは、ショッピングセンターの裏口、バックヤードから内部に潜入し探索している。


 バックヤードは荷物を搬入する搬入口から二つの通路が伸びており、搬入口の隣には車二台を乗せられる大きなエレベーターと二階へと続く階段が見えた。

 まず一階を探索するため、マイは情報通信端末の遺跡探索用システムを起動し、建物の構造を立体化させた。マイのシステムは電子波や様々な光を撮らえる光学カメラなどのセンサーで建物の構造が立体化できる品物だ。コウもそれに近い目を持っており、建物の構造を可視化した。


 建物の構造を立体化させたマイたちは、始めに搬入口から二手に分かれている通路左側を探索することにして、コウとチサトが先頭の発ち、続いてマイ、自動追尾式カート、ヒロミが続き、守衛機体を警戒しながら壁沿いに沿って奥へと進む。

 左側通路は搬入口から少し進むと直角に曲がっており、曲がると今度は奥まで続く真っ直ぐな通路になっていた。そこには巡回している守衛機体が数体、通路を往復し動いているのが見えた。


 コウとチサトがうろついている長方形の金属ボディにタイヤを二輪生やした守衛機体に向かってビームライフルを構え、照準を合わせ必要最低限の出力で一撃で守衛機体を撃ち止めた。下手に狙撃して外すと、攻撃された守衛機体が反撃に出て、一機では鎮圧できないと判断すると仲間を呼び、瞬く間に四方八方を囲まれ、激しい戦闘になるからだ。


 守衛機体の姿が消えた通路をマイたちは前に進む。

 手前から奥まで所々に扉があり、探索手始めに手前の扉をこっそり開け、扉内の様子を覗うとそこは何かの店舗裏側が見えた。警戒しながら店舗裏側に入ってみる。商品棚は残っていたが、棚の中身は何も無かった。建物の警備システムは生きているが、店の商品を自動で補充するシステムはないみたいだ。


 建造物の中には警備システムの他、物が無くなったり劣化して使えなくなった物を補充する生産系システムが生きている建造物がある。このショッピングセンターは、警備システムだけが生きているように思えた。


 マイ達は侵入した店舗の商品棚を隅々まで探ってみたが、何も発見することが出来なかった。

 まだまだ捜索する場が残っている。

 何も残っていなかった店から出ることにして、バックヤードの通路に繋がる扉をゆっくり開け、レーダーと目視で警備機体がいないか確認したあと、通路に出て前に進む。


 数歩進むとまた扉がある。その扉をゆっくり守衛機体がいないか確認しながら扉を開ける。すると扉の内部は店舗ではなく、倉庫のような何も無い広い空間だけだった。

 前に侵入したハンターがこの中にある物を全て持ち去ったのだろう。コウとチサトは静かに扉を閉め、また通路を進む。まだまだ扉はある。

 

 次の扉を開けて見る。此処も店舗みたいな痕跡が残っていたのだが商品棚すらなかった。ゆっくり扉を閉め、先に進む。


 再び数歩進むと、今までとは違う観音扉があった。

 コウが右側、チサトが左側、マイが中央に立ち、観音扉を開ける。そこはショッピングセンターの店舗が並ぶ通路の扉だった。


「ふぅー」

 

 マイが溜め息のような深呼吸をした。


「今日一発目の探索だと言うのに、ハズレばっかだな」

「チサトよ。そう気を早すな。これからだろう」

「そうだよー」


 マイ達は再び気を引き締め、通路を進む。しかし、数歩歩いても扉が見えない。さらに数歩進むがまだ扉が見えない。さらに進む。


 今度は一回り大きい鈍重な観音扉を見つけた。


「何が出るかな」


 コウが右側、チサトが左側、マイが中央に立ち、ヒロミはワクワクしながら後方を警戒している。


 警戒しながらコウがゆっくり扉を開け、チサトとマイが扉内にライフルを向け、扉内部を覗く。

 扉の内部はまた倉庫のような開けた空間だった。念のため内部に入ると天上から冷気が吹き出し、周辺の気温から大分低くなって肌寒く感じた。その先にまた観音扉があり、また先があるようだ。

 その扉を警戒しながら開け、扉内に潜入し、周りを警戒しながら見回し守衛機体がいない事を確認する。そこには左右に空っぽの商品ケースがずらりと並び、白い蒸気が噴出し、周辺の空気を冷気で冷ましていた。


「うん! ここは食品売り場だね。チサトちゃん何か食べ物が残ってないか探してみる?」

「旧世紀の食糧か… 現世界では手に入らない物があるのだよな」

「甘味系のお菓子とか美味しいのよね…」

「おい、貴様ら車両探しが目的だろ」

「コウちゃん。食べられないから乗る気ないね。 

 でもね、コウちゃん。旧世界の食べ物にサイボーグでも食べられる物もあるんだよ」

「ヒロミ、そうなのか…」

「そうだよ」

「それじゃ、車両探索ついでに旧世界の食糧も探して見ましょう」


 全員一致で旧世界の食糧を探すことになった。


 旧世紀の食べ物の中には、真空パックされた宇宙食など長期保存できる缶詰やパック詰めなどがあり、乾燥させた食べ物などもある。中でも天然の果肉が入っている缶詰やパック詰めは人気があり、高額で販売されていた。


 商品ケースから冷気が噴出している食品売り場は見回す限り広い、四人まとまって探索しても良かったが広い食品売り場を探索するとなると時間が掛かってしまうため、それぞれに別れ探索した。


 すらりと並んでいる冷気が噴き出すケースには何も残ってはおらず、冷気が噴出している商品ケースに対して直角に列を作り並んでいる商品棚を探す。こちらの商品棚は何列も並んでいるので、一人ずつ商品棚の列を見て回る。

 何も陳列されていない商品棚が続き、諦めようとした時、マイが綺麗に並べてある缶詰やパック詰めの食糧を発見した。マイは通信端末で皆を呼んだ。


「マイちゃん。やったね!」

「おぉ、缶詰か! 旧世界の文字読めなくても、中身の絵が描かれているから中身が分かるんだよな」

「ふん。私には食えん」

「この一角だけ、商品があるってことは生産系のシステムも生きている訳だから、みんな気を緩めないでね」


 遺跡の中には生産系システムがあり、このショッピングセンターのように商品を陳列させるシステムもある。もちろん商品が並ぶのだから自動で商品を作るシステムもある。それらのシステムは解明しておらず、一説によると地下にあるとも言われているが、まだ発見されていない。


 皆は缶詰やパック詰めを無差別に全部、遺物保護袋に入れ自動追尾式カートに乗せ、袋詰めの作業が終わると同時に、コウの脳内時計が定時連絡を知らせ、マイがユイ達に連絡入れた。


「マイよ。こちらは車両がまだ見つけられないけど、そっちはどう?」


『こちらユイだよ。こっちも車両は見つからないけど、お洋服をいっぱい見つけたよ。マイに似合いそうなのもあったから、後でみんなで別けようね』


「ユイたちはお洋服を見つけたのね。こっちも缶詰とパック詰めをいっぱい見つけたよ」


『うぅ~、か・ん・づ・め! 缶詰って聞いたら急にお腹減ったー』


『それじゃ、まだお昼には早いけど昼食にする?』


「ハルカ、まだここに入って、少ししか時間が立っていないぞ!」


『あら、チサト… お腹減ってないなら一人で車両探しても良いのよ』


『「 たべたい! 」』


 ヒロミとサトミが駄々をこね始めたのがお互い通信越しに判った。


「それじゃ、此処は広いから一旦探索を止めて、早めのお昼にしましょう」


 ユイチームとマイチームは探索した情報を共有して、一階にある安全な小ぢんまりした場所へ集合し、早めのお昼にすることにした。


 戦闘糧食も用意していたが、マイ達が見つけた旧世界の缶詰やパック詰めを早速手に付け、野菜の煮込みや肉の煮込み、魚の煮つけなどそれぞれが食べたい物を遺物保護袋から探し出し、缶詰の中にはコウが口に入れる機械生体油の代わりとなるサイボーグ用の缶詰もあった。缶詰は引手があり、その引手を引くと蒸気が立ち缶詰の中身が温まる。現世界の戦闘糧食もその手の物だが、旧世界の缶詰は天然素材だけで作られているので、皆は遺跡に感謝しなから仲良く食べた。

 

 食事をしながら共有した探索情報を調べ、遺跡の残り部分をどうするか話し合った。

 結果、ユイ達は店舗側の三階から最終階まで探索することにして、マイ達はバックヤード側から階を昇ることに決まった。


 昼食を食べ終わり、ユイチーム、マイチームがそれぞれ探索する場所に移動する。

 ユイ達が手筈通り三階から探索を開始し、マイ達はバックヤードの倉庫を中心に探索する。


 三階も二階と同様に透明な壁の仕切りがあり、透明な壁から立体映像も流れ出ている。ユイ達は一店舗ずつ遺物を探索しながら車両を探し進む。しかし、三階を隅々まで探したが何も残っていなかった。

 気を取り直して階段を昇る。

 階段は四階までしかなく、四階は広く開けたロビーがあり何かのイベントを行った跡を残しており、その奥に数店舗の店舗しかなかった。イベントの跡が残っている広いロビーを警戒しながら進み、数店舗しかない店舗を一軒ずつ探す。その店舗に中に旧世界の雑貨が残っており、どのくらいの価値があるか判らないユイ達は取り敢えず全部を遺物保護袋に詰め込んで自動追尾式カートに乗せた。


 バックヤードの倉庫を中心に探索しているマイ達は一階から三階まで何も見つけられず、四階に昇っていた。四階のバックヤードは、一階から三階までのバックヤードとは違う作りになっており、事務所や広い倉庫があった。四階のバックヤード倉庫は広く、前に入ったハンターが遺物を探し回って散らかしたのだろう倉庫が散らかっていた。

 散らかっている物には紙の箱や金属製の箱まであり、マイ達は一つ一つ中身を見て回った。


「マイちゃん。何か残っているの発見したよ」


 ヒロミが何かを発見して皆が近寄り中身を取り出す。その中身は何かの部品に見え、マイがその部品を検分すると、車の出力をコントロールする旧世界の競技用部品であることが判った。

 競技用部品は箱いっぱいに詰められている。大漁収穫だ。


「ヒロミ、やったね。詳しい査定価格は判らないけど、一つ一千万ゼニーはくだらないと思う」

「ハルカちゃんとキョウコちゃん、喜ぶね」


 その後マイ達は四階のバックヤードを隈なく探してみたが、競技用部品以外は何も見つけられず階を降りた。

 ユイ達も既に降りている。外に出ると日が暮れていた。 


「マイたちが帰ってきた。おかえり」

「ただいま。こっちは高価な物見つけたよ。そっちはどうだった?」

「こっちはねー… 雑貨を見つけたよ」

「話は帰りながらでもするが良かろう。すぐに夜になる。早く基地に帰るぞ」


 夜は凶暴な夜行性のモンスターが出る。一行は凶暴なモンスターが出る前に基地に戻った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ローズマリーと農園都市 はぴろっく @tsubaki-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ