10話.[頑張ろうかなっ]

「海だねえ」

「海だな」

「海だなあ」


 結局、3人で海に来ていた。

 曖昧な季節というのもあって、別に利用客がいるというわけでもない。

 ただ波の音や鳥の音に耳を澄ませているだけで意外と楽しい。


「結局、透くんが言ったの?」

「おう、こいつが暗い顔をしていたからさ」

「まんまと俺の作戦に騙されたというわけだ」


 むかつくからうるさいのは無視しておく。

 いや本当に純を好きになった方が良かった。

 だって茂樹の奴、本当にうるさいんだ。

 なん!? と驚いたのをずっと弄ってきやがる。


「仲良くしてね」

「純、いまからでも……」

「ははは、そんなことをしたら茂樹くんに怒られちゃうよ」


 わかっている、クソなことを言っているのは。

 だからこれ以上言うのはやめておいた。

 それになんだかんだでいいところもある人間だからな。


「ちょっと水の方に行ってくるよ」

「俺も行く」

「俺はここから見ておくわ」


 それならとふたりで行くことに。

 あまり良くないことかもしれないが適当に石を投げていたりしていた。


「おめでとう」

「ありがとな」

「三樹ちゃんもほら」

「ああ、ちゃんと礼を言っておかないとな」


 こんなことをしてもあれだが持ち上げてみることに。


「純は軽いな、もっと食べた方がいいぞ」

「僕がいっぱい食べたら透くんを越しちゃうよ?」

「いいんだよ、そうしたら俺を持ち上げてもらうわ」

「はははっ、じゃあ頑張ろうかなっ」


 そんなときがきたら驚いて腰が抜けるかもしれない。

 でも、面白そうだ、少なくとも茂樹を黙らせることができそうで良かった。

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17作品目 Nora @rianora_

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