『脳が読みたくなるストーリーの書き方』の3つの要点

 この「要点編」では、これまでトピックごとに部分的に引用・紹介してきたフィルムアート社の創作系書籍を一冊ずつ、押さえておきたい「3つの要点」にフォーカスして改めて紹介していきます。


 今回紹介するのはこちら。

書名:脳が読みたくなるストーリーの書き方


著者:リサ・クロン

発売日:2016年09月23日|四六判・並製|416頁|定価:2,000円+税|ISBN 978-4-8459-1608-5

本書を読み解くキーワード:脳科学、プロット、キャラクター

レベル:初心者 ★★★☆☆ 上級者


「うまく書くこと」と「素晴らしい物語を語ること」は同じなのでしょうか。小説を書きたいと思っている人の多くが、「文章をうまく書く」にはどうすればよいのか、と悩んでいるようです。もちろん「うまく書くこと」も重要ですが、作者にとって何よりも大事なのは、読者に「次に何が起こるのか知りたい」と思ってもらうこと、つまり読者を物語の中に引き込むことです。


 実は人間が物語に夢中になるのは、脳が物語を欲求しているからです。今回紹介する『脳が読みたくなるストーリーの書き方』には次のように書かれています。


「脳科学の近年の飛躍的な進歩により、人間の脳には物語に反応する神経系統が組み込まれていることがわかっている。よくできた物語がもたらす喜びとは、人間が物語に注意を向けるよう誘い込むための、自然の手だてなのだ」


 人は「生き延びるため」に物語を必要としています(後述)。わたしたちが素晴らしい物語に夢中になるのは、人として当然のことなのです。


 では、物語に出会ったとき、脳は何を欲しているのでしょうか。読者を夢中にさせるものは何なのでしょうか。「よくできた物語」とはいったいどんなものなのでしょうか。脳科学と認知心理学がその秘密を明らかにします。


 どんなに完璧な文章であっても、脳がその物語を欲していなければ読者の興味を惹きつけることはできません。文章をうまく書くことと物語を語ることはまったく別の技術なのです。


「物語創作にはアイデアや言葉の選択以外にも大事なものがあるということを、受け入れたがらない作家が多いのはなぜだろう?」


 本書を読んで、その「大事なもの」をぜひ手にしてください。

■要点その①:脳科学を駆使して「読者を惹きつける物語」の秘密に迫る


 まず「なぜ脳が物語を必要とするのか」という点について、簡単に整理しておきます。

 本書によれば、「物語は人間の進化にとって」非常に重要なものです。なぜでしょうか。物語によって、人は過去に起こった出来事を知ったり、未来に起きうることを想像したりすることができます。つまり、物語によって人は起こりうるさまざまな出来事に備えることができるようになるのです。

 物語を語るという能力は、ほかの生物にはありません。つまり物語を語ることは、私たちを人間たらしめる能力そのものといえるのです。

 つまり人間は、世界の動きを教えてくれる物語に反応するようにできているというわけだ。誰にだって、高校時代の歴史の先生がドイツの君主の名を懸命に暗唱するのを聞きながら、つい眠気を誘われた経験はあるだろう。それは名誉にも、あなたが人間である証だ。

 人がノンフィクションよりフィクションを好みがちなことも、そう考えれば驚きではない。歴史書よりも歴史小説を、無味乾燥なドキュメンタリーよりも映画を好む人間は多い。それは人間が怠け者だからではなく、人間の神経回路が物語を求めるようにできているからだ。優れた物語が誘発する陶酔感は、人間を隠れ快楽主義者にするためのものではない。この陶酔感のおかげで、人間は個々の物語が伝える大量の教訓を吸収し、熱心に学ぶ生徒としてしつけられていく。

――『脳が読みたくなるストーリーの書き方』

 人の脳は、たとえ意識的に情報を理解していなくても、それがどうでもいい情報か、それとも気にとめるべき情報かに注意を払い、分析し、判断をくだしています。のんびり夢想を続けてもいいか、それともすぐ注意を払うべきか、脳はひとつの大きな目的を基準として判断を下しています。その目的とは「生き延びること」です。脳の潜在意識は、何が重要か、何がそうでないか、なぜそれを処理すべきかに気づき、そして可能なら、処理の仕方にまで気づいてくれます。人間にはあれこれ考えている暇はないのです。脳は、人間を死から守るため、のろまな意識の力よりもずっとすばやく全情報を厳選し、解釈する方法を編みだしているのです。

 人は生き延びるためにこのような反射機能をもっていますが、さらに特別なものをもっています。それが物語なのです。

 人は物語で考える。物語は人の脳に組み込まれている。周囲の世界に制圧されてしまわないように編みだした、戦略的な感覚だ。単純に言えば、脳は投げ込まれたすべての情報からたえず意味を求め、生存するために重要なことを必要に応じて引きだし、脳が知っている過去の経験や、それについて感じること、人間への影響などに基づいて、その物語を伝える。時系列にすべてを記録するのではなく、脳が「主人公」役を振り当て、映画のような精密さで人間の経験を編集し、論理的な相互関係を作り、記憶、考え、出来事のつながりを描きだし、将来の参考にする。

 物語とは、それが自分のものであれ、ほかの誰かのものであれ、あるいは架空の人物のものであれ、経験の言葉なのだ。ほかの人間の物語も、自分の物語と同じくらい大事だ。もし自分自身の経験だけで生きていかなければならないとすれば、赤ん坊以上に成長できる見込みはまずないと言っていい。

――『脳が読みたくなるストーリーの書き方』

 脳科学者によれば、すでに過剰負荷に耐えている脳が、貴重な時間と空間を費やしてまで人間を物語に没頭させるのは、物語がなくては困ったことになるからです。

著名な認知科学者でハーヴァード大学教授のスティーヴン・ピンカーは、人間が物語を求める理由をこう説明しています。

「物語は、いつか私たちが直面するかもしれない人生の難問や、そのときにとれる戦略の結果をとりそろえた心のカタログを提供してくれる。叔父が父を殺してその地位につき、母と結婚したという疑いをもったとしたら、私にはどんな選択肢があるのか? 不運な兄が家族から尊敬されていないとしたら、彼はどんな状況におちいったときに私を裏切る可能性があるだろうか?[……]人生は芸術を模倣するという決まり文句が真実を言いあてているのは、ある種の芸術の役割が、人生がそれを模倣することにあるからだ」

 つまり、作家にとって必要なのは、読者の脳に組み込まれた物語の真実の青写真を解明することなのです。裏を返せば、読者の心をとらえる物語を書くには、たえず読者の脳や神経系統が期待するものに応える必要があるということです。これは簡単なようで、なかなか大変なことでもあります。

 本書ではアルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの言葉を引用し、次のように述べています。

 アルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスが「芸術とは炎に代数を加えたもの」と言ったのも、このことだろう 。これについて少々説明しておきたい。

「炎」は、書き手には確かに重要なものだ。どんな物語でも、これが第一の構成要素となる。情熱は執筆を駆り立て、自分の言いたい何か、人と違う何かがあるという刺激的な感覚を与えてくれる。

 だが、瞬時に読者を魅了できる物語を書くためには、情熱だけでは足りない。優れた物語を創るには、炎―燃えるような野心、創造の火花、真夜中にはっと目が覚めてしまうような鮮烈なアイデア―があればいい、と勘違いしている作家は多い。喜び勇んで物語に飛び込んでも、物語の方程式に必要なもうひとつの因数、つまり「代数」を忘れてしまえば、書いたすべての文章が失敗に行きついてしまう。

 この点でボルヘスは、のちに認知心理学と脳科学が解明したことに、直観的に気づいていた。つまり、こうした情熱、こうした炎で読者の脳を焚きつけるには、まず物語の基盤となる潜在的な枠組みがなければならないことを知っていた。この枠組みがない物語は読まれない。そしてこの枠組みを持つ物語なら、どんなに頑なな読者の度肝も抜くことができる。

――『脳が読みたくなるストーリーの書き方』

 小説を書きたいという人の多くは、熱心な読者でもあります(=読むのも好き)。誰もが本能的に、面白い物語と面白くない物語を識別しています。しかし、なぜ面白いのか(面白くないのか)を分析するのは簡単ではありません。読者目線で「読者を惹きつける物語」の正体に迫るのは至難の業です。

 脳科学の研究の成果では「物語が人の心を奪うとき、読者は物語の渦中にいて、主人公が感じることを感じ、わが身に起きたことのように体験している。物語の仕組みに注目する余裕などない」ことが分かっています。つまり、どんな魅惑的な物語の根底にも、相互に組み合わされてひとつにまとまり、一見そうは見えなくても精密に構築された網の目のような要素があるのですが、読者は物語に夢中になるあまり、それにまったく気づかないのです。

 人が物語を読むときに無意識に反応しているものは何か。何が実際に人の脳の注意を惹いているのか。少し立ち止まってそれを分析しないことには、読者の脳をとらえるような物語を書くことはできない。書きたい作品が文学的な小説だろうと、ハードボイルドなミステリーだろうと、ティーン向けの超自然的なロマンスだろうと同じことだ。ジャンルということでは読者に個々の趣味はあるにしても、物語が読者の脳に組み込まれた期待に見合ったものでなければ、その本は本棚に置き去りになるだけだ。

――『脳が読みたくなるストーリーの書き方』

 読者が「無意識的に」反応してるものを、作者は「意識的に」物語の中に組み込んでいかなければならないのです。本書では各章で脳機能のさまざまな側面に焦点を当て、「脳が読みたくなる」物語を書くために必要な知識とテクニックを解説しています。

■要点その②:物語創作に関して多くの人々が信じ込んでいる間違った「神話」を「退治」する


 巷には数多くの小説執筆指南本があります(本書もそのうちの一冊です)。ネットやSNSをのぞいてみれば、日々創作に関するさまざまな議論が交わされていることがわかります。小説の書き方に関して100%正解の方法論があるわけではないので、作者はそれら玉石混交の「創作論」の中から、自分に合ったものを見つけていくしかないのですが、本書では「神聖とされている執筆原理(=神話)」がいかに作者を誤った方向に導いているのかを脳科学的な視点から暴いています。つまり神話退治です。

例えば「美しい文章は何にもまさる」という神話。小説を書く=美しい文章を書く、と思っている人は多いのではないでしょうか。本書ではこの神話の間違いを指摘し、それに替わる現実的なアドバイスを提供します。


神話:美しい文章は何にもまさる

現実:ストーリーテリングは、つねに美しい文章にまさる


 物語の執筆を成功させるには「うまく書く」ことを学ぶのが大事だと広く信じられているが、これほど作家に有害な信条はない。確かにこの主張はもっともだ。とても論理的で明白なことにも思える。ほかにどんな代案があるだろう―下手に書くことを学ぶ? 皮肉なことだが、下手に書くのは、思ったほど有害なことではない。少なくとも物語を語ることができるのであれば 。

 この神話の問題点は、ほかの数々の執筆神話と同じで、要点をはずしているということだ。この神話の場合、「うまく書く」ということは、美しい言葉、あざやかなイメージ、本物らしく響く会話、洞察に満ちた暗喩、興味深い登場人物などを使い、生き生きとした感覚的な細部描写を全体にたくさんちりばめるという意味だ。[……]

 美しい文体の小説をけなしたいわけではない。私も人並みに、見事に練られた文章は大好きだ。ただ、勘違いしないでほしい。「うまく書く」のを学ぶことと、物語を書くのを学ぶこととは違う。そしてその二つのうち、二次的な要素は「うまく書く」ことのほうだ。読者が次に何が起きるかを知りたがらないなら、うまい文章など何になる? 極上の表現を備えてはいるが物語のない小説は、物書き業界の人間からすれば、しばしば美しいだけの「どうでもいい」作品でしかない。

――『脳が読みたくなるストーリーの書き方』

 このように、本書ではいくつもの神話がみごとに退治されます。退治される神話を列挙すると以下のとおりです。


神話:物語で最も大事なのはプロットだ

現実:物語で最も大事なのは、プロットがどう主人公に影響するかだ


神話:あなたが知っていることを書け

現実:あなたが感情的に知っていることを書け


神話:外面的な問題を加えていくことで、物語にドラマが生まれる

現実:外面的な問題が物語にドラマを生むのは、主人公が自分の問題を克服するためにはそれに直面しなければならないというときだけだ


神話:登場人物を知る唯一の方法は、完全な経歴を書き上げることである

現実:登場人物の経歴は、物語に関わる情報に関する部分に絞るべきだ


神話:感覚的な詳細描写は物語を生き生きとさせる

現実:必要な情報でないかぎり、感覚的な詳細描写は物語の流れを行き詰まらせる


神話:物語最大の種明かしのためには、情報を伏せておくことが読者を引き込む秘訣だ

現実:情報を伏せるせいで、読者の興味を薄れさせてしまうことも多い


神話:実験文学は、ストーリーテリングの法則をすべて自由に破ることができる――実験小説とは実に高尚な芸術であり、普通の旧式の小説よりもずっと優れている

現実:読むのが難しい小説は読まれない


神話:「語るのではなく見せろ」とは文字どおりの意味である。「ジョンは悲しんでいる」と書くのではなく、ジョンが泣いているところを見せる

現実:「語るのではなく見せろ」とは比喩である。「ジョンは悲しんでいる」と書くのではなく、なぜジョンが悲しいのかを見せる


神話:文学的小説は登場人物主導であり、プロットは必要ない

現実:文学的小説にも、大衆向け作品と同じぐらいにプロットがある


神話:作家は生まれつきルールを破ろうとする反逆児である

現実:成功する作家はくだらないルールにも従う


 いかがでしょうか。ネットやSNSでこれらの神話を見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。本書では、これらの神話がなぜ間違っているのかをひとつずつ丁寧に解説しています。

■要点その③:「物語の真実」を明らかにするとともに、チェックリストで確認


 本書は「神話を退治」するだけではなく、「物語の真実」をも明らかにします。その真実とはもちろん脳科学の研究から導き出された人間の「認知の真実」から導き出されたものです。

 一例を紹介します(第8章)。科学的に「脳がつねに主な目的としていることは、因果関係を形作ることである――『もし○○ なら、結果は△△だ』」ことが分かっています。これを物語に応用すると次のような「物語の真実」が明らかになります。「物語は、最初から最後まで、原因と結果の軌跡をたどる」。

 整理しましょう。


認知の真実:脳がつねに主な目的としていることは、因果関係を形作ることである――「もし○○ なら、結果は△△だ」

物語の真実:物語は、最初から最後まで、原因と結果の軌跡をたどる


 物語は、「起きるだろうと思ったこと」と「かわりに起きたこと」の対立のあいだで生まれ、最初から最後まで、原因と結果の明白な軌跡に沿って語られていく――そうでなければ、「ただ次々と物事が起きる」だけになってしまう。本章では、この原因と結果の軌跡について考える。驚くほど単純な三つの呪文に物語を従わせる方法を考えたり、プロットの外面的な原因と結果を、物語にひそむもっと強力な内面的原因と結果に結びつける方法を探ったりしてみようと思う。また、「語るのではなく見せろ」という言い回しについても概観する。さらに、原因と結果の軌跡が脱線しないようにするためのテストも紹介しようと思う。

――『脳が読みたくなるストーリーの書き方』

 このような形で「物語の真実」を明らかにし、1章ごとにじっくりと解説しています。本書で明らかにされる「物語の真実」(全12章分)を列挙するとこうなります。


第1章:物語は、読者が最初の一文から、次に何が起きるかを知りたくなるようでなければならない

第2章:脳の注意をとらえるには、読者が知る必要のあるすべてのことが物語に用意されていなければならない

第3章:すべての物語の基礎は感情だ――感じないのなら、読んでいないのと同じだ

第4章:明確なゴールのない主人公には、見いだすべきものも向かうべき場所もない

第5章:主人公の世界観が、いつ、なぜゆがんでしまったのか、作者は正確に知っておかなければならない

第6章:概念的、抽象的、一般的な物事は、主人公の闘いにおいては具体的なものでなければならない

第7章:物語とは変化の記述であり、変化は避けがたい対立からしか生まれない

第8章:物語は、最初から最後まで、原因と結果の軌跡をたどる

第9章:物語の仕事は、主人公が夢想だにしない、乗り越えられるとも思えない試練の渦中に、主人公を置くことだ

第10章:読者はつねにパターンを探している。読者にとっては、すべては伏線と伏線回収、またはそのあいだの道筋でしかない

第11章:サブプロット、フラッシュバック、予兆は、たとえ物語の展開につれて意味が変わっていくものであっても、中心となる物語の筋書きで起きていることについて、なんらかの洞察をその場で読者に与えなければならない

第12章:執筆という行為は存在しない。書き直しがあるだけだ

 

 また、「物語の真実」を明らかにするだけではなく、創作の際に気を付けておくべきポイントについてのチェックリストが収録されています。理論だけではなく、実践にどう落とし込むかまでしっかりとフォローしてくれています。チェックリストの一例を紹介すると次のとおりです(第8章)。


☑物語は1ページ目から原因と結果の軌跡を追っている? 各場面はそれに先立つ場面によって引き起こされた場面となっている?

ドミノの列を並べるようなものだ――最初のひとつを倒せば、すべては完璧に順序正しく倒れていき、前の場面でくだされた〝判断〞が次の場面で試されることになる。


☑主人公の探求(ストーリー・クエスチョン)を中心として、すべて原因と結果の軌跡を描いて動いている?

そうなっていなければ、その物語は捨ててしまったほうがいい。簡単な話だ。


☑主人公の内面的な原因と結果の軌跡が、物語の外面的な出来事(プロット)を動かしている?

ハリケーンであれ、株式市場の暴落であれ、エイリアンの地球侵略であれ、それが直接主人公の探求に影響を与えていないなら、読者はなんの関心も持たない。


☑主人公が判断をくだすとき、特に主人公が気持ちを変えた場合、なぜその判断にいたったかがつねに明確に示されている?

忘れないでほしいのは、あなたが主人公の考えを知っているからといって、あなたの読者にもわかるとは限らないということだ。


☑各場面は、行動、反応、判断のパターンに従っている?

ワルツのワン、ツー、スリーというリズムのようなものだ。行動、反応、判断―――このリズムをあなたの頭に叩き込み、勢いを作るために使ってほしい。


☑物語のすべてに「それで?」と問いかけ、答えが出せる?

4歳児のように容赦なくこの問いかけをおこない、答えられないときは、自分だけが気に入っている描写、脱線、もしくはそれ以外の、あなたの物語をだいなしにしてしまう何かに足を取られてしまっていると思ったほうがいい。


 さて、今回は『脳が読みたくなるストーリーの書き方』を3つの要点で紹介しました。本書の魅力はなんといっても「科学的な」アプローチで「読者を惹きつける物語」の秘密に迫っているということ。読者は無意識のうちに「よい物語/そうでもない物語」をジャッジしています。読者はそれでも問題ありません。しかし、作者であるみなさんは「なぜ/何が」読者を惹きつけるのか、人間の認知の仕組みを知っておかなければなりません。ぜひ、本書を読み、ライバルに差をつけてください。


【目次】

はじめに


1 読者を引き込む――脳の潜在意識に働きかける


そもそも物語とは何か

最初の一文から読者を物語に引き込もう

読者はつねに“なぜ”を探している

最初の一ページに読者は何を求める?

読者の疑問に答えるための三つの要素

最初の一文で物語の俯瞰図を見せよう

“うまく書く”ことは二の次?


2 要点に迫る――脳の注意をとらえる


なぜ話が脱線してしまうのか

焦点を絞ろう――主人公の抱える問題、テーマ、プロット

テーマ――登場人物が状況にどう反応するか

物語の要点を知る方法

プロット――主人公を動かし、テーマを明らかにする

テーマは血の通った現実に宿る

テーマがトーンを生み、トーンがムードを生む

ケーススタディ――『風と共に去りぬ』

焦点を利用しよう――不要な情報をすべてふるい落とす


3 登場人物の感情を書く


主人公の反応を伝えよう

読者をどうやって主人公に感情移入させるか

一人称で考えを伝える

三人称で考えを伝える

ヘッドホッピング――視点は一場面にひとり

ボディランゲージ――読者が知らないことを伝える

出来事を描いたら、あとは身を引こう


4 主人公のゴールを定める


すべての出来事はゴールに従う

ゴールがなければ読者は夢中になれない

意味のあるつながりを生みだそう

ケーススタディ――『素晴らしき哉、人生!』

内面的なゴールと外面的なゴールを闘わせよう

“主人公の最大の敵”は主人公自身

ケーススタディ――『The Threadbare Heart』


5 主人公の内面の問題を掘り起こす


物語の概要は最初に作るべき?

概要は焦点を絞ろう

登場人物の経歴を書くときにやるべきこと・やってはいけないこと

概要作りのプロセス――主人公の世界観を明らかにする


6 特定のイメージを脳に刻む


脳はまず感じ、それから考える

一般性はドーパミンの放出を抑える

曖昧なことを書いてしまうのはなぜ?

“特定の事象”が消えやすい六つの場所

感覚的な詳細描写をする三つの理由

風景を曖昧に語ってはならない


7 変化の動因となる対立を作る


人は対立を物語で楽しむ

サスペンスを生みだす対立の典型例

対立による対立――サスペンス状態を盛り上げて維持する

種明かしが成立する二つの条件

種明かしが失敗してしまうケース

手の内は全部明かすべき?


8 原因と結果で物語を展開する


“もし、その後、だから”で展開しよう

“登場人物の思考の流れを見せろ”

“有言実行”テスト――主人公に判断を迫る

原因のパワーを最大限にする

原因と結果が予測可能とは限らない

結果のない原因は読者を脱線させる

算数のテスト――各場面の関係を評価する

物語の成功は何を省いたかで決まる

“それで?”テスト――物語的な関連を評価する


9 主人公にとことん試練を与える


主人公のためを思っていじめよう

ケーススタディ――『サリヴァンの旅』

恥をかくことは、最高の成長の糧

登場人物の計画をだいなしにするためにやっていいこと・いけないこと


10 パターンを作る――伏線から伏線回収までの道筋


そもそも伏線とは何か

脳は複数の情報を同時に処理できない

可能性を伏線で示そう

伏線と伏線回収のあいだの道筋――三つの交通ルール

ケーススタディ――『ダイ・ハード』


11 サブプロット、フラッシュバック、予兆を使う


絵画のように読者をあざむく

サブプロット――プロットに厚みを持たせる

サブプロットとフラッシュバックはタイミングが命

フラッシュバックの配置に失敗するとどうなるか

フラッシュバックとバックストーリーは同じもの?

原因と結果をタイミングに利用しよう

予兆――登場人物の制約をなくす


12 物語における作者の脳を鍛える


すべての初稿はクズ?

優れた作家は“意図性”が違う

登場人物と作者はまったく違う世界を生きている

“誰が何をいつ知るのか?”を把握しよう

フィードバック入門――質問を準備をしよう

批評を受け入れよう

批評を読んでタフになろう

さあ、書こう!


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