「質問リスト」でキャラクターの履歴書をつくる

 前回、「立体的」なキャラクターをつくるには以下の三つの次元が必要であることを説明しました。


【三つの次元】

①第一の次元 … 表面的な特徴、癖、習慣

②第二の次元 … バックストーリーと内面の悪魔

③第三の次元 … 行動、態度、世界観


 今回は、主にするために有効な「質問リスト」を紹介いたします(質問の項目によっては第二の次元の「バックストーリー」にかかわるものもあります)。


 その前にひとつ大事なポイントを押さえておきましょう。

「登場人物を知る唯一の方法は、完全な経歴を書き上げることである」という、まことしやかに伝えらえているについて、です。


『脳が読みたくなるストーリーの書き方』では、このに対して以下のように述べています。


 あなたの登場人物たちを知るうえで、“過剰な情報”が出てくることはある。個人的すぎる詳細、ということではない。物語においては、個人的すぎる情報はむしろ歓迎される。だが、無関係な情報はいらない。それでも作家はしばしば、自分の登場人物たちをしっかり知るため、物語本編よりも長いんじゃないかというような登場人物の詳しい調査票を作り、以下のような項目を(念のために言っておくが、私がでっちあげたものではない)埋めるように教えられることが多い。


・この人物は自分のミドルネームを気に入っているか?

・ 裏庭で寝転がって日焼けしようとしているとき、敷いているタオルはどんなタオルか?

・ お気に入りの部屋があるか?

・ 鮮明な記憶を呼び起こす色は何色か?

・ほくろはあるか?

・揃いの陶磁器製品を持っているか?

・もしほくろがあるなら、陶磁器の形をしたほくろはあるだろうか?(失礼、これは私がでっちあげた)

・安楽死についてどんな意見を持っているか?


 こうした質問全部に答えるのは確かに面白いとは思うが、あなたの物語に関係ないものもあるだろう。その人物が生まれてから現在にいたるまでの全般的な経歴を書いてみるにしても、やはり同じことが言える。物語の重要なポイントは、こうした経歴に大量に含まれる不要な情報を排除することにある。すべてを網羅する長ったらしい登場人物の経歴書を書くと、皮肉にも本当に欲しい情報が見えにくくなってしまう。大事なのは、あなたが語ろうとする物語に付随する情報だけを見ることだ。

――『脳が読みたくなるストーリーの書き方』



 物語に登場させる「登場人物の経歴は、物語に関わる情報に関する部分に絞るべき」というのが、重要なポイントです。前回も説明しましたが、履歴書を作り込むこととそれを作中に書くことは別物です。完璧な履歴書を作ったからといって、それを物語の中で全部説明しようとするのはやめましょう。


 さて、フィルムアート社がこれまで刊行してきた物語創作本の中には、キャラクターを掘り下げるため(=第一の次元を設定するため)に役立つ質問リストを収録したものがいくつかあります。今回はその中から2つの質問リストを紹介したいと思います。

 マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦さんもキャラクターごとの履歴書=「身上調査書」を作成し、キャラクターの設定をゆるぎないものにしています。

 キャラクターを作るときは、絵にする前に、必ず身上調査書を書くことにしています。これは『ジョジョ』の連載が始まる前から40年以上続けていることで、僕にとっては「秘伝のたれ」のようなものです。この身上調査書があれば、「最初は運動が苦手という設定だったのに、戦っている間に急に機敏になってしまう」といった、キャラクター造形に矛盾を感じさせる事態を防ぐことができます。

――荒木飛呂彦著『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)


 質問リストの項目は、性別や髪の色、身長、体重、年齢などのの情報に関わるものだけではありません。

 前回解説したように、第一の次元は「年齢や知能指数、性別や性的指向、話し方や身ぶり、家や車や洋服の好み、学歴や職業、人間性や性癖、価値観や主張など、」のことを指します。

 今回紹介している質問リストの中には、キャラクターの人間性や道徳観を問うものを含め、さまざまな項目がありますので、ぜひご活用ください。


①『アウトラインから書く小説再入門』に収録の【人物像をくまなく作り込む「人物インタビュー・質問リスト」】

「人物を知ることに限界はない」とサマセット・モームは言っています。主人公の瞳は何色? 悪者が在籍していた大学は? ヒロインにとって一番恥ずかしい体験は? 主人公のしぐさや表情、口癖は? 恋愛経験は? 

 考え込むようなら、まだまだ掘り下げ不足です。「人物インタビュー」で外見や性格について考えていきましょう。私は以前、20問ほどの質問を使っていましたが、今では100問以上を設けて人物をリアルに作り込むことにしています。

 私は人物インタビューを必ずします。人間関係や価値観、秘密について答えを書くとノート半分ぐらいになり、それを執筆期間に、何度も参照します。アイデアを得るためだけでなく、事実関係の確認にも使います(母の死亡時、彼は何歳? 交通事故で怪我したのは左足か右足か?)。

(中略)

 人物インタビューは時間がかかるので、主観をとる人物と敵対者、あとはもう一人か二人の主要人物のみで充分です。プロットを充実させる好機です。枠にとらわれずに発想を広げましょう。 

――『アウトラインから書く小説再入門 なぜ、自由に書いたら行き詰まるのか?』


 なんと、本書の著者K.M.ワイランドさんは、100問以上の質問を穴埋めしてキャラクターを作り込むようです。プロの作家はここまで徹底的に掘り下げるのですね。その際に使っている質問リストは下記の通りです。

 


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【人物像をくまなく作り込む「人物インタビュー・質問リスト」】


名前:

 人物はその名前が好きか?

 その名前は人物にとってどんな意味を持つ?


背景:

 誕生日:

 出身地:

 両親:

  人物を育てた人々にとって大事なことは?

 兄弟姉妹:

 人物が育った環境、経済/社会的地位:

 民族的な背景:

 住んでいた場所:

  現住所と電話番号:

 学歴:

  好きな科目:

  特技:

 職歴:

  収入:

 旅行:

 友人:

  同居人:

  けんかした相手:

  一緒に時間を過ごす相手:

  この人と一緒に過ごせたらいいなと思う相手:

  人物を頼りにしている人は誰? なぜ頼りにしている?:

  人物が最も尊敬している人々は:

  他の人々は人物をどう見ているか:

 敵:

 恋人、結婚:

  子供:


人生観:

 神との関係:

 自分自身が好きか:

 人生で何か変えたいとすればそれは何か:

 個人的に恐れているものは何か:

 何かについて、自分に嘘をついているか:

 楽観的か/悲観的か:

 ありのままか/真実を偽っているか:

 倫理観のレベルは:

 自信のレベルは:


普段の一日の生活:


外見的な特徴:

 体格:

 姿勢:

 頭の形:

 目:

 鼻:

 口:

 髪:

 肌:

 タトゥー/ピアス/傷跡:

 声:

 服装:

 第一印象で人は何に気づくか:

 自分で自分をどう見ているか:


健康状態/障害/ハンディキャップ:


人格の特徴:

 性格のタイプ:

 最大の長所/短所:

  人物の長所が短所になり得るとしたら:

 どれぐらい自制心があるか:

 何に怒りを感じるか:

 泣くとしたら何に対して泣くか:

 恐れていることは:

  避けている人々、場所、シチュエーション:

 才能:

 人々は人物の何を最も好いているか:

 好みと関心:

  政治的な考え方:

  集めているもの:

  好きな食べ物/飲み物:

  好きな音楽:

  好きな本:

  好きな映画:

  好きなスポーツ/娯楽:

   学校でそのスポーツをしていたか:

  好きな色:

  子供時代に空想していたこと/今よく空想すること:

  週末のお気に入りの過ごし方:

  プレゼントをもらうとしたら何が一番うれしいか:

  ペット:

  乗り物:

 よくする表現:

  うれしい時:

  怒った時:

  いらいらした時:

  悲しい時:

  不安な時:

   一番よくする表情、ジェスチャー(にやにや笑う、顔をしかめる、ぴくっと顔に出る、手を動かす、肩をすくめる、アイコンタクトなど):

  クセ、しぐさ:

  何を見て笑うか、嘲笑するか:

  どんなことをしたらいやがるか:

  どんなことをしたら元気になるか:

  希望や夢:

   その夢を達成しようとしている自分を、自分でどう見ているか:

  誰かに対して行なった最悪のことは:

  最も大きな成功体験は:

  最も大きなトラウマは:

  最も恥ずかしかったことは:

  最も気にかけていることは:

  秘密:

  もし一つだけ実行して成功するなら、それは何?:

  この人物はどういう種類の人かと言うと?:

  自分の中でどこが一番好きか:

  読者がすぐ共感できる点は:


人物はどういう点で一般的か、あるいは特殊か:


人物が置かれている状況はどのような点で一般的か、あるいは特殊か:


人物が最も必要としていること:


その人物らしい逸話:


個人史:


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 では、つづいて2つ目の質問リストを紹介しましょう。こちらの質問リストには、「第一の次元」だけではなく、バックストーリーや主人公の「欲求」に関わる質問もあり、より網羅的な内容となっています。


②『感情類語辞典 ポジティブ篇』に収録の【キャラクター創作のための質問集】 


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【キャラクター創作のための質問集】


▼基本スペック

 キャラクターの年齢、性別、民族性(国籍)は? 身体的特徴を説明してみよう(髪や目の色、体型、肌の色、身長と体重。メガネをかけている、傷がある、えくぼがあるなど)。服装は? 服装からどういう人物だとわかるだろう? 肌身離さず持ち歩いているものをひとつ挙げると? なくてはならないアイテムと、その理由は?


▼声

 キャラクターは早口? それともゆっくり話す? 「ええと」「うーん」「あの…」といった、意味のない言葉を多用するだろうか? 短く途切れ途切れに話すか、それともとりとめなく話す? 声のトーンはどうだろう? さらに質や大きさは?高い調子で話すか、低い調子で話すか? 怒ったり、緊張したり、幸せだったりするとき、声から感情がどのように伝わってくるだろう? 受けてきた教育レベル、あるいは外での経験が話し方にどう影響しているだろうか? もし、そのキャラクターを含めたくさんの人がいる部屋に目隠しをされて入ったら、どういう特徴からその人物の声を聞き分けられるだろう? そのキャラクターの声を耳にしたとき、とくに引きつけられる点、あるいはいらだつ点があるだろうか?


▼教育と経済事情

 このキャラクターは、どれくらいの教養の持ち主だろう? もともと知的、機転が利く、ウィットに富んでいる、勘が鋭い、といった人物なのだろうか? 学識があるのか、独学なのか、それとも特定の分野において幅広い経験があるのか?自分が持っている知識のおかげで、何か栄誉や高い評価を得たことは?

 その教養レベルのために、生活は厳しいだろうか? それとも快適なライフスタイルを送っているのだろうか? 就いている職は複数? 個人的に満足のいく仕事をしているのか、それともただ目的のための手段として仕事をしているのだろうか?


▼特技と才能

 キャラクターが日々の生活において頼りにしている特技は何だろう? パソコンの天才なのか、植物栽培に長けているのか、もしくは機械の仕組みがわかる能力をもともと備えているのだろうか? また、どんな特別な才能を持っているだろう? 誰にも知られていないユニークな才能をひとつ、それから、誰もが知っているこの人物の才能をひとつ挙げてみよう。こうした才能やスキルの中に、プライドや恥を抱く原因になっているものはあるだろうか? もしあるなら、いったい何なのか? またその理由は?


▼家族

 キャラクターの家族構成はどうだろう? 独身か既婚か? 子どもはいるだろうか? あるいは、この人物が子どもか青年の場合、両親や兄弟姉妹はどのような人々だろう? 彼らとは近しい関係だろうか、それとも疎遠だろうか? このキャラクターが抱いている家族の価値観や信念は何だろう? 子どもの頃じかに経験し、自分が家族を持つときには絶対に繰り返すまいと心に決めた親の「失敗」は何か? より良い人間になることを後押ししてくれた親の教えとは?


▼関心

 この人物の関心ごとや趣味は何だろう? また、周りの人々はこうした趣味を把握しているのだろうか、それとも人には隠しているのだろうか? もし、このキャラクターが誰にも知られずにできることがひとつだけあるとしたら、それは何か? こうした趣味などはみんなと楽しむのか、それともひとりで楽しむことを好むのか? またその理由は? キャラクターの「ストレス発散」方法は何だろう? 面白く感じている活動とは? クリエイティブな一面はどんなやり方で発揮しているだろうか? 手を出してみたいが、自分にはそんな資格がないと思っている関心ごとや趣味は?


▼人や地域社会

 このキャラクターは、周りの人たちとどれくらい近しいだろう? 近所の人たちと知り合いで、家の前で言葉を交わしたり、一緒に食事をすることがあるのか、それとも名前すら知らない関係なのか? 奉仕活動はしている? もし、地域に影響が及ぶような火事、洪水、災害が起きた場合、留まってみんなを助けるだろうか、それとも逃げだすだろうか? また、何か助けを必要としている場合、誰かに頼むだろうか? もしそうなら、その相手は誰?


▼道徳観や倫理観

 この人物は、白黒はっきりさせるタイプか、それとも両者が混ざった灰色で見るタイプか? 支持している理念はあるか? どんな事柄に対する思い入れが強いだろう? そうした信念が疑われるとき、どんな反応を示すだろうか? また、なぜこのような事柄が自分にとって重要なのか? この重要な事柄についての信念を抱くようになった、大きなきっかけとなる人物や出来事があるだろうか? 人に隠している信念、意見、理想は何だろう? またその理由は? 何があっても絶対に手放さないであろう道徳的信念とは?


▼アイデンティティー対ペルソナ

 5つの言葉で説明するとしたら、このキャラクターはどんな言葉で言い表せるだろう? また、この人物の親友はどんな5つの言葉で説明するだろうか? さらに、同僚、知人、見知らぬ人の場合はどうだろう? キャラクター自身が見る自分の姿と、周りの人から見たこの人物の姿はどのように異なるだろうか? この人物を説明する言葉として挙げられた中で、本当に当てはまるものはどれで、そうでないものはどれだろう? 人々は、この人物の見た目や行動をもとに憶測を立てているのだろうか? またそれは、キャラクターの思惑通りなのだろうか、それとも自分では気づかないで、こうした印象を与えているのだろうか? 人から見た自分の姿を表した言葉の中で、キャラクター自身が驚いたものをひとつ挙げるならば? また、その言葉にキャラクター自身はがっかりしたのだろうか、それとも嬉しく思っただろうか?


▼人間関係

 このキャラクターと一番近しい人物は誰で、その理由はなぜだろう? この人がもっと親しくなりたいと思っている相手は? 自分から動いて挨拶しに行くタイプだろうか、それとも相手からそうされるのを待つタイプだろうか? 人に信頼を寄せるようになるまでに時間がかかる? それとも人のことを判断するのがうまいので、すぐに打ち解ける? どういうタイプの人間に引かれるだろう? 現在の人間関係に満足しているのか、それとも何か足りないと感じている部分があるのか? 自分が傷つきやすい相手はどういう人物だろう? あるいは、自分が弱みを見せることのできる相手はいるだろうか? 避けている人はいる? またその理由は? どんな人物に嫌悪感を抱くだろう? もし、過去にかかわった人がもう一度目の前に現われるとしたら、誰を一番に希望するだろう? それはどうして? 反対に、一番現われてほしくない人は?


▼秘密

 この人物の最大の秘密は何か? また、それをもっとも知られたくない相手とは? なぜこの秘密がそれほど重要なのだろう? その秘密について頻繁に考えるのか、それとも滅多に考えないのか? その秘密は、心の痛み、屈辱、喜び、あるいはその狭間にある何かの原因になっているものだろうか? 他人の秘密は口外しないタイプ? 知っていながらも胸に秘めている、周りの人の秘密は何だろう? 秘密を知られている人物はそのことを知っている? それとも最初に自らこのキャラクターに打ち明けた? 周りの人たちは、このキャラクターを信頼して個人的な考えを打ち明けるのか、それともこの人物は情報を漏らさずにはいられないタイプなのか? もし秘密が守れないのなら、どうして人に教えてしまうのだろう?


▼恐怖

 この人物の性格からすると妙だったり意外だったりする、恐れていることは何だろう? 自分がきまり悪くなる恐怖なのか、それともまったく説明のつかない恐怖なのか? この恐怖は、キャラクター自身が克服しようとしているものだろうか? 過去の出来事に関連は? さらに深い恐怖(このキャラクターが人に明かしたくない類いのもの)について見ていこう。その中でもどれが一番この人物に影響を与えているだろう? この恐怖をどうやって人に隠しているのか? たとえば、自分にとって問題ないというふりをして偽っている? この恐怖を悟られないよう、周りの人との距離を保つために、どんなペルソナで本当の姿を覆っているのだろう?


▼背景や心の傷

 このキャラクターが考えたくない、あるいは打ち明けたくないと思っている、先ほどの深い恐怖について考えていこう。過去のどんな出来事のせいで、この恐怖が生じることになったのだろうか? この出来事をきっかけに、人生はどのように新たな進路に突入していったのだろう? また結果として、このキャラクターが人生から切り捨てた人や事柄は何か? 失ったものや、諦めた喜びは? この恐怖によって、自分がどのように価値がなく欠点のある人間だと感じているのだろう? この心の傷は、キャラクターの現在の話にどのように組み込むことができるか? この人物を、再び同じような状況や心の傷と対峙させ、今度はそれを克服させるにはどうしたらよいだろう?


▼望み、欲求、欲望

 物語の冒頭において、このキャラクターが表面上求めていることは何だろう。新たな仕事なのか、努力を認めてもらうことなのか、妻のためにサプライズパーティーを開くことなのか? この人物が思う、自分を幸せにしてくれる物事とは? 次に、もう少し掘り下げてみよう。このキャラクターの人生で不足しているものは何か? 満たされていない欲求は? 希望や夢、自分があえて望むまいと思っているもの、大きすぎたり難しすぎたりして追い求めていないものとは? もし、この人物が魔法の杖でひとつだけ望みを叶えられるとしたら、自分のために何を選ぶだろう? 何がこのキャラクターの自尊心を築き、自分を完全だと感じさせ、人生が投げかけてくる困難や試練に立ち向かわせているのか? この人物の、人生における目標とは?


▼欠点

 キャラクターが抱く望みや欲求、そして一番の願いや欲望について考えてみよう。この目標を達成するのに害を及ぼす欠点は何だろう? 自分の不安を覆ってくれながらも、同時に目標の達成を難しくしている欠点は? 人間関係の邪魔をし、対立を引き起こす欠点は? 自分は変わる必要などない、あるいは変わることなど大変なだけだから変わらなくていいんだ、というキャラクターの信念を後押ししているのはどんな欠点だろう? 失敗や挫折に直面しているとき、もしくはストレスを感じたり動揺したりしているとき、浮かび上がってくる欠点とは?


▼美点

 満たされた気持ちや自信、幸せをキャラクターにもたらしてくれる、一番根底にある欲求や目標について再び考えてみよう。達成を可能にしてくれるのは、どんな美点だろう? また、欠点に打ち勝つためには、どんな美点を形成していかなければならないのか? そして、弱点のように見える美点(望ましくないもの)ながら、実は目標を達成するためのカギとなるものはどれだろう?


▼ストレスやプレッシャー

 試練に対し、このキャラクターはどのように取り組むだろう? 試練を利用しようとするのか、それとも避けようとするのか? もし切迫した状況にあるなら、それでも力を発揮できるだろうか、あるいは過ちを犯してまずい判断を下し、くじけてしまうだろうか? 緊張しているときは、人につっかかったり、怒りや不満をあらわにしたりするだろうか? ストレス下ではどうだろう。人に噛みつくのか、それとも深呼吸してやるべきことをこなすのか? このキャラクターの限界点は? どんな失敗に対して敏感なのだろう? この人物の感情的な反応を引き起こすには、どういった「期限つき」のシナリオが考えられるだろうか?


▼感情の幅

 このキャラクターは、どれくらい表現豊かだろうか? 気持ちを示すために、大きな身ぶり手ぶりを利用するのか、それともボディランゲージや動作に微妙な変化が生じるのか? 感情を表に出す方だろうか、あるいは内に秘めておく方だろうか? 平然とした人物であれば、隠そうと頑張っている感情はどのようにして表に出てきてしまうだろうか? この人物を怒らせるものとは? 欲望をかきたてるものは? 幸せにするもの、不安にするものとは? また、嘘をつくときや動揺しているとき、本心が明らかになってしまうような、何か変わったふるまいをするだろうか?


▼まとめ

 自分が描く主人公について奥深くまで詳しく知っておけば、キャラクター創作の成功につながる。いくつかの質問に対する答えをブレインストーミングしておくことで、キャラクターの扱いがますますうまくなり、人物が性格に応じた行動をとれるようになる。ここでわかったことをすべて物語に組み込む必要はないが、自分が把握しておけば、説得力のある現実的な手法でキャラクターを描くことに自信がつくだろう。


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 さて、いかがだったでしょうか。


 この種の質問リストは、ある程度テンプレート化されているので、ネットで探してみると、さまざまなバリエーションのものが見つかるはずです。ぜひ、自分の好みに合うものを使っていただければと思います。

 質問項目があまりにも詳細なリストを使ってしまうと、そのリストを埋める作業で疲弊してしまうということも起こり得ます。そういう場合は、大きな項目だけに絞ってリストを埋めていくとよいかもしれません。あるいは、細かい質問に答えていくことで、当初は考えていなかったキャラクターの新しい一面を思いつくということもあるはずです。

 まずはぜひ、この2つのリストのうちのどちらかを穴埋めする作業にトライしてみてください。


 フィルムアート社刊行の書籍では、他に『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』と『工学的ストーリー創作入門』という書籍にそれぞれ質問リストが収録されていますので、興味のある方はこちらもご確認ください。


【お知らせ】

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