青と猫
川の湯煙
第1話
窓際の一番後ろの席、そこが僕の特等席。つまらない授業を聴き流し、窓の外に視線を投げて時間が経つのを待つ。ゆるゆるとした昼下がり、昼食後でクラスの雰囲気もどこか微睡みがちになる。僕は相変わらず外を見ていた。
澄み渡るような青い空、僕はそれがどうも苦手だった。まるで吸い込まれそうなほどの青さは、僕にとってはやたらと綺麗に見えて眩しい。そんな日は下に目線をずらし、校舎の裏にある茂みを見ていた。
ある日、いつものように外を眺めていると、もぞもぞと動く影に気がついた。それは茂みの近くで動く毛玉のようなもので、よく見ていると野良猫だと気づいた。まだ大人になりきれていなさそうな、子猫というには大きい、微妙な大きさ。僕らと同じ、子供でも大人でもない、そんな感じ。どうやら日向ぼっこをしに来たようで、ぐっと体を伸ばしたり背中を地面に擦り付けたり、かと思えば丸まって動かなくなったり。今まで空だとか草木だとか、そういうものを見ていた僕にとって、生き物を眺めるのは案外悪くないなと思わせた。
その猫は、空が澄み渡ったよく晴れた日に現れた。いつも同じような場所でゴロゴロと我が物顔でくつろぐ猫は、正直言って可愛いと思った。
猫が来るのはこのよく晴れた日の昼下がりの時だけ。このことを知っているのはおそらく僕だけだった。白猫に黒いインクを落としたかのような斑模様の猫。雄か雌かもわからない。どこに住み着いているのかもわからない。
けれどその猫が校舎裏に日向ぼっこをしに来ていたことは確かに知っている。僕だけかもしれない。いや、僕だけでいい。少しの優越感。誰に対してかなんてわからないけれど。でも、あの猫のことを知っているのは僕だけでいい。
だから、あの猫がある日を境に現れなくなったことも、多分僕だけが知っている。
青と猫 川の湯煙 @kawa_no_yu
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