最強魔法師、生徒会長と仲良くする
「何か用ですか?」
入学式、軽く今後の説明があった後に解散となったが、将人はメールで雪乃に生徒会室に呼び出された。
室内は生徒会長の真面目な性格が表れているのか綺麗に片付いている。
「ええ。あなたに協力するのは決めたことだけど、まだあなた自身のことは知らないと思いまして」
学院の生徒で唯一将人の正体を知っている雪乃であるが、詳しいことは円香から聞いていないのだろう。
あまり話されるとプライバシーの関係もあるし、ざっくりとしか聞いてなくても仕方ない。
「そうですね。知りたいことがあれば言ってください」
協力してくれるのだし、ある程度の情報共有は必須だ。
全て話せるわけではないが、必要なことは話すつもりでいる。
「ありがとう。それではあなたの誕生日や血液型、好きな食べ物などを知りたいと思うのですが」
「……それ、関係あります?」
「大いにあります。協力するのであれば親しい関係でなくてはなりません。あなたの好みを把握する必要があります」
熱弁してくる雪乃に、将人は「はあ……」と頷くしかなかった。
確かに親しい友達の関係であれば誕生日や好きな食べ物などを知っていてもおかしくはない。
「あ、まずは私のことについて教えなければなりませんね」
真面目な性格であると思ったが、どうやら雪乃は意外とマイペースのようだ。
「私の誕生日は五月二十八日で血液型はA型、趣味は読書です。魔法は氷属性が得意よ」
魔法についてはある程度予想出来ていたが、何故か誕生日や趣味まで教えられた。
ある程度得意な魔法は家系で決まっており、確か白井家は氷属性の魔法が得意だったはずだ。
家系で得意魔法が同じ系統になりやすいのは、血管を通して全身を巡っているナノマシンが母親の体内にいる胎児に影響を与えるからだと言われている。
産まれてから一ヶ月ほどで点滴みたいにナノマシンを体内に入れられるが、産まれてくる前に母親のナノマシンの影響を大きく受けるようだ。
得意魔法は母親の影響を大きくうけるため、よほどのことがない限りは魔法師の家系は女性が当主になることが多い。
それでも女性社会になっていないのは、男性にも優秀な魔法師が多いからだろう。
ちなみにナノマシンを体内に入れた時に拒絶反応などの副作用が起こることは皆無だ。
魔法は雪乃が得意としている氷の他に水や火、雷などの属性魔法、催眠などで相手の精神に直接干渉する精神魔法などがある。
他にも身体能力を極端にあげる魔法や空を自由に飛べる浮遊魔法など、ナノマシンが作用して色々な魔法を使うことが可能だ。
流石に全ての魔法を使うのは不可能だが、魔法師は複数の魔法を使って犯罪者などを捕まえたり社会の役にたっている。
「さて、次はあなたの番よ」
キラキラと期待するかのような瞳で見つめられ、将人は観念して自分のことを教えることにした。
「俺の誕生日は四月二十日で、趣味は寝ること、魔法については機会がれば見せますよ」
S級魔法師だった将人の魔法については秘密にされている。
任務も基本的には一人でしていたので、魔法師であっても将人の魔法について知っている人は少ない。
だけど霧の王と呼ばれていることから、ある程度の想像することくらいは可能なはずだ。
「今月が誕生日じゃないですか。誕生日はきちんと祝わないといけないですね」
てっきり魔法について知りたいと思っていたが、何故か誕生日に食い付かれた。
「別にいいんですけど」
魔法師としてずっと働いていたため、誕生日を祝ってもらったことがほとんどない。
唯一円香が毎年誕生日プレゼントを送ってくれるが、彼女も忙しくてプレゼントくれるのが精一杯のようだ。
「ダメよ。誕生日は生まれた大切な日……祝わないとご両親に失礼ですよ」
どうやら雪乃は誕生日を大切にしているようだ。
母親がお腹を痛めて産んでくれた日なのだし、大事にしている人だっているだろう。
「ちなみに……十六歳になったらバイクの免許は取るのかしら?」
「今のところ考えてません」
日本では十六歳になれば自動二輪の免許を取ることが出来るが、将人はバイクの免許を取りたいと思ったことがない。
理由としては寮は学校から歩いて五分で着くし、寮の近くには魔法学院と提携しているスーパーがあるからだ。
食料や飲み物などの生活必需品はスーパーで手に入るし、個室である寮には家具、家電が備え付けられているから車などの足が必要ない。
それに何か欲しい物を買うのだって通販を使えばいいだけだ。
「あら、そうなんですか? 私はツーリングが好きで、休日はバイクで遠出する時がありますよ。免許取ったら一緒に、と思ったのだけれど……」
免許を取る気がないと分かったからか、雪乃は少し残念そうな顔をする。
今年十八歳になる雪乃ならバイクの免許を持っていても不思議ではないし、乗っている内に好きになったのだろう。
「あ、でも私があなたを後ろに乗せてツーリングすればいいですね」
名案だ、と言わんばかりに雪乃は嬉しそうな顔をする。
何でそこまでしてツーリングに拘るか分からないが、雪乃なりに気を使っているのかもしれない。
ずっと魔法師として働いていた将人に趣味と言える趣味なんてないのは先ほど寝ることと言った時点で分かるだろうし、何か好きなことを見つけてほしいと思っているのだろう。
「機会があれば是非」
人の善意を断るほど、将人はクズになった覚えはない。
「はい。絶対に行きましょう」
ツーリングに行く約束をし、将人はしばらく雪乃と話していた。
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