最強魔法師、魔法学院に通う
「皆さん、入学おめでとうございます。私が一年二組の担任の
桜が満開の四月、魔法学院に入学した将人は教室にいる。
担任となった女教師──紫藤春華が丁度自己紹介をしたとこで、ふんわりとした印象を受ける見た目は二十代半ばの人だ。
肩ほどまである黒髪は艶があり、ライトブラウンの瞳に白い肌の美少女が担任ということで、男子たちのテンションが高くなっている。
魔法学院の教師は過去にナノマシンの研究や魔法に携わっていた者が多く、魔法師の卵を育成するために集められたエリートだ。
魔法団体にいた頃に春華の名前を聞いたことがあり、確か彼女は将人を除けば史上最年少でA級魔法師になった秀才。
魔法師のランクはSからEまでの六段階に分けられていて、春華は上から二番目。
去年までは魔法師として犯罪者を追っていたはずだが、今年の四月から魔法教師してして着任したようだ。
穏やかな性格という印象を受けるので、犯罪者を追うより教える方がいいだろう。
「もう少しで入学式が始まるけど、今からこの学校のことについて説明するね」
そう言った春華は電子黒板に学校の概要を表示させる。
先日円香から携帯端末に送られてきたのと同じだ。
魔法学院は全寮制で、特殊な事情を除いて必ず門限までに戻らなければならない。
学院は東京や大阪などの大都市にしかないので寮があった方がいいのと、魔法の特訓が出来る施設が近くにあるので生徒にとっては都合がいいだろう。
ちなにみ将人が通う学院は東京にあり、日本で一番始めに造られた魔法学院だ。
魔法学院は数学や英語などの普通の授業もするが、魔法を学ぶことがメインとなる。
試験で魔法師としての最低限の資質を持つ者が入学を許され、魔法をきちんと扱えるようにするために魔法関連の授業が多い。
「今から皆さんの携帯端末に学生証を送るので各自ダウンロードをしてください」
ピピっと電子音が鳴り、皆は空中で指先を動かす。
事前に学校側に連絡先を教えていたので、春華が登録してある連絡先へと送ったのだろう。
ナノマシンによって人間の知能素数は大幅に上がり、科学の分野で大きな発展をもたらした。
何もない空間に携帯端末の画面を鮮明に映し出すことが可能となって、指紋登録した指で操作するのとが出来るのだ。
携帯端末は個人情報の塊のため、他の人には画面を共有しない限りは見えない仕様になっており、端から見たら指を空中で動かしているようにしか見えない。
空中に映し出されている携帯端末の画面を操作して将人も学生証をダウンロードする。
将人は魔法団体に学院に通っていることがバレないように、先日円香名義で携帯端末を契約させてもらった。
「学生証がダウンロードされている携帯端末が寮の部屋の鍵にもなるから無くしちゃダメよ」
買い物の支払いや家の鍵になったりと、携帯端末一つあればほとんど何でも出来る。
他にも動画や音楽をおダウンロードしたり、ネットで調べ者やSNSをしたりと、今の時代は携帯端末がないと何も出来ない。
「それじゃあ、入学式が始まるまで自己紹介でもしててね」
そう言い残した春華は教室から出ていった。
入学式まで三十分ほどの時間があるので、将人はブルートゥースで携帯端末と繋がるイヤホンを耳につけて音楽を聞きながら過ごすことに。
辺りを見回すと、クラスメイトは早速近くの人と友達になろうと自己紹介をしているようだ。
だけど将人は幼い頃より魔法師として働いていたため、同年代の人と友達になる方法が分からない。
なので今は音楽を聞きながら周りの人たち見ることにしたのだ。
「ねえねえ」
隣の席である女子生徒に肩を軽く叩かれた。
イヤホンを外して隣を見てみると、笑みを浮かべた女子がこちらを見てみる。
セミロングの茶髪に赤みがかった大きな瞳、整った鼻梁に桃色の潤いのある唇、乳白色の肌は雪乃に劣らずの美少女だ。
「私は
「俺は霧雨将人だ。よろしく」
色付き……か、と将人は思い、笑みを浮かべている桔梗と握手をする。
名字に色がつく家系は優秀な魔法が使えるとされており、特別な権限が与えられるのだ。
だから円香は将人の戸籍を変えることが容易に出来たのだろう。
でも名字に色が付くからって必ずにも天才とは限らないし、特別な権限が与えられるには何かしらの実績が必要だ。
桔梗には
ただ、紅林家は将人も聞いたことがあり、最初に奇跡の力である魔法が使えるようになった家系らしい。
初めて魔法を使えるようになった家系だからか、紅林家は日本魔法団体と繋がっているという噂がある。
(ここ最近色付きと出会いすぎだろ)
円香は別としても、生徒会長である雪乃に担任の春華、クラスメイトの桔梗と、名字に色が付く人が多い。
魔法学院だからという可能性があるが、ここまで出会うことになるとは思ってもいなかった。
色付きの名字を持つ者が優れた魔法を使えるという印象をつけたいからか、魔法を使えない色付きの名字の人は名前を強制的に変えさせられたのだ。
「霧というと霧の王をイメージしちゃうよね」
霧雨という名字にしたのは失敗だったかもしれない。
どうしても霧の王をイメージしてしまうようだ。
霧の王というのは、圧倒的な実力があるのにも関わらず正体が掴めないからついた二つ名なのだが。
「そうかもしれないけど、別人だから気にしないでくれ」
「だね。霧の王が魔法学院に通うわけないだろうしね」
霧の王の正体がどんな人かも分かっていない人たちには、まさか魔法学院に通うとは思ってもいないだろう。
「友達は皆別々の学校に行っちゃったから仲良くしてほしいな」
どうやら桔梗も円香同様に小悪魔……いや、あざといと言った方が正しいだろう。
円香と知り合っていなければ、上目遣いで見つめられて桔梗に一目惚れされたと勘違いしていたかもしれない。
「仲良くする分には構わないか」
早速魔法学院での友達が出来た。
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