最強魔法師、追放されたので魔法学院に入学して青春を謳歌しながら幻を現実に、現実を幻にする魔法で再び最強となる
しゆの
最強魔法師、魔法学院に入学する
『お前を日本魔法師団体から除籍処分とする』
そう言われたのは一ヶ月ほど前のことだった。
とある勘違いでとある疑いをかけられ、魔法を用いる犯罪者を取り締まったり、魔法を使って国に貢献する組織である日本魔法団体から追放させてしまったのだ。
魔法……ナノマシンを体内に入れた結果の副産物。
本来は身体能力の強化、免疫力の向上などを目的としてナノマシンを体内に入れたが、一部の者は魔法という奇跡の力を扱えるようになったのだ。
ナノマシンは日本の天才科学者が作り出して人類の発展に導き、今や人間にはなくては存在になっている。
体内にナノマシンが入れられてから能力が向上したため、世界はナノマシンの研究で躍起になっていた。
特に魔法を扱える魔法師は国の未来を左右するとまで言われており、魔法師の卵の育成に莫大な資金を国は投資している。
「
日本魔法団体から除名された
魔法を使える者たちが魔法について勉強し、魔法で日本の発展に貢献する者たちを育て上げる学校だ。
国立魔法学院の学院長である女性──
「本当に不運ですよ。円香さんに呼び出されたんですから」
円香は本来の学院長である父親が不在の間に代理として学院長になっている。
見た目は明らかに二十台半ばだが年齢不詳、小悪魔な性格でいるも振り回されているため、呼び出されたら何かあると思ってしまうくらいだ。
「そんなこと言わないの。せっかく戸籍を変えてこの学院に通えるように手配してあげたんだから」
学院長に相応しい豪華な椅子に座っている円香は、目の前に立っている将人にウインクをしながら言った。
戸籍を変えた……本来は法律違反にあたる行為であるが、国立魔法学院の学院長となると造作もないことらしい。
日本魔法団体の上層部は魔法学院の生徒の名前などを確認出来るため、一度除籍された将人が通うには戸籍を変えるしかないとのことだ。
犯罪歴がある人を魔法師にさせないために確認出来るのだろう。
ちなみに霧雨将人という名前は戸籍を変えるさえに考えた偽名だ。
「俺は普通の高校に通えるようにしてくれれば良かったんですけどね」
魔法師として働いていた将人は、まともに学校に通うことが叶わなかった。
だから高校に通えるように色々と融通がきく円香に頼んだのだが、まさか魔法学院に通えと言われるとは思ってもいなかったのだ。
「S級魔法師である将人くんが魔法学院に通えば、生徒たちの刺激になると思ったのよ。名前は変えても実力は変わらないのだから」
「元……ですけどね」
魔法師の資格を持つ者は魔法団体に所属する必要があり、将人は除名された時に資格を剥奪されてしまった。
実力は変わらない……正体を隠しながら生徒に魔法を見せつけろ、ということだろう。
「まあ、どこの学校でもいいですけどね」
本来は魔法学院に通わないと魔法師の資格を得る権利はないのだが、将人は幼い頃から特別に魔法師としての資格を与えられていた。
魔法師の資格を剥奪されたのが普通の人間でいう中学を卒業する少し前……十五歳だから高校に通いたいと思ったのだ。
「会う度に思うんですけど、円香さんは何歳なんですか? 出会った時から容姿が変わらないんですけど」
将人が円香と出会ったのは十年ほど前で、その時から全く容姿が変わっていない。
ナノマシンは確かに人類にとって革新をもたらしたが、不老の効果があるなんて聞いたことがなかった。
長い黒髪をポニーテール調にしている円香は「ふふ……」と不敵に笑う。
「女性に年齢を聞くのは失礼よ」
将人の口元に人差し指を当てて言う円香は本当に小悪魔だ。
「まあいいや。それで何で俺を呼んだんですか?」
少し前に魔法学院に通ってほしいとは言われていたので、今日円香から呼ばれた理由が何かあるのだろう。
「制服を渡すためにね」
円香は袋を机の上に置く。
中身を見ると魔法学院の制服が入っており、来月の四月からこれを着て通うことになる。
「それだけだったら別に郵送でも良かったんじゃ……」
「ダメよ。他にも用事があるから呼んだというのもあるけどね」
「他にも?」
「ええ。入ってきなさい」
円香の一言で学院長室のドアが開かれ、制服を着た少女が入ってきた。
年齢は将人より一、二個歳が上かなという印象で、サラサラとした腰まで伸びている亜麻色の髪、長いまつ毛に藍色の大きな瞳、透けるような白い肌は誰が見ても美少女だ。
「自己紹介なさい」
「はい。私は
白井雪乃と名乗った少女は将人に頭を下げて自己紹介をした。
魔法学院の生徒を統べる生徒会長なので、雪乃の魔法は相当凄いのだろう。
「生徒会長を呼ぶのと何の関係が?」
「彼女は将人くんのことを話しているわ」
「マジ?」
「ええ。あの霧の王の大ファンだからきっと力になってくれるわよ。生徒の中にも将人くんの存在を知っていた方がいいと思って」
最強の魔法師として活躍していた将人は、霧の王と言われていた。
「まさか霧の王が私たちと同年代だとは思ってもいませんでした」
幼い頃から魔法師として活躍していた将人は素性を隠していたので、雪乃が驚たのも仕方のないことだ。
魔法団体の上層部以外では、円香と雪乃しか霧の王の正体を知らないだろう。
「でも私はあなたのことを知って魔法師になりたいと思いました。あなたの力になれるのであれば、私は協力を惜しみません」
「ありがとうございます」
差し出された手を握って握手すると、雪乃の頬が赤く染まった。
憧れの魔法師と握手出来て嬉しくなったのだろう。
「私はこれから用があるので今日は解散ね」
パンパン、と円香は手を叩いてこの場は解散となった。
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