あとがき

 拙作『月桃館五〇三号室の男三~天譴の山~』最後までお読みいただき真に恐縮の極みであります。


本作、実は私山極由磨の素人物書き史上記念すべき作品でして、なぜかと申しますと、同じシリーズで第三弾を始めて書き上げUP出来た作品は本作が初めてなのでアリマス。

 凄い事だと個人的には思っておるんですよ。

 本シリーズはほとほと左様に思い入れがあるわけなのです。

 さて、本作、大きなテーマが『山』でして、アピール文にも『本格山岳異世界ファンタジー』と銘打たせて頂いているほど山が舞台の作品である事を意識しております。

 私のもう一つの趣味が登山でして、まぁ本作の様に登攀具を使う本格的な物では無いですが、日本でも標高の高い山ベスト2~5までは登ってますし、あの剱岳もお邪魔しております。(無論、夏山ですが)

 ですから、何時かは山を舞台にした冒険モノを書いてみたいと言う狙いは有ったので、今回その夢がかなったわけです。

 けど、一応念のため本作に登場する登山テクニックはぜんぶ妄想や想像の産物で実際物とは全く異なっていることを申し添えさせていただきます。ファンタジーですので(笑)

(ただ、可能な限りのリアリティを出すためにこの物語の時代に近い1950~60年代に為されたヒマラヤ登山の記録、ジョン・ハント著、吉田薫訳の『エベレスト初登頂』(A&F出版)やモーリス・エルゾーグ著、近藤等訳の『処女峰アンナプルナ』(ヤマケイ文庫)。他、新田次郎の名作山岳小説『劔岳・点の記』なども読み漁りました)

 とは言え、本作に込めたつもりである、山に挑む信条や登る度に抱く山や自然への畏敬の念、自然の美しさや過酷さや非情さへの思いは本物でです。

あと、お断りしておかねばならないのは、本作のもう一つの重要なアイテムである放送機器についてもまったくのファンタジーである事も付け加えておきます。念のため。


 さて、第三弾、一、二と大きく違う事は視点をライドウではなく本作だけのヒロイン、シィーラに置いたことです。

 基本、この作品は彼女の物語なので勢いそうなったわけですが、男である私が、角有の人外さんとは言え二十代半ばの働く女性の心情を上手く表現できたか非常に不安ではありますが、個人的にはオレ頑張ったな、と思っている所です。

 実はこのシィーラ嬢にはモデルと言うか創作の切っ掛けに成った方がおられまして、その方との創作談義のなかで産まれたキャラなのであります。

今はご許可を頂いておりませんのでどなたであるかは伏せておきますが、許可頂き次第公表する予定です。

(因みに、この方、本シリーズの最重要キャラ、トガベ・ノ・セツラ少将のビジュアルイメージのモデルにもなっています)

 また、本作でシィーラやライドウと壮絶な初登頂レースを演じるウンハルラント軍山岳猟兵旅団の旅団長、高潔漢のシュタウナウ大佐は名優エド・ハリスをビジュアルイメージとして意識してみました。『アポロ13』や『スターリングラード』での名演は印象的でした。

 モデルと言えば、第二部で大活躍する山の民、イェルオルコのビジュアルイメージは、ヒマラヤなどの中央アジアの山岳部に生息するユキヒョウから取っていて、その名前や風俗の一部は南米アンデス地方に暮らすケチュア族の人々よりインスパイアさせてもらっています。

 それにしても、人外、別けてもケモノ系の描写って難しいですよねぇ~。今回も散々苦労しました。イェルオルコの(というかユキヒョウの)美しく威厳に満ちた気高い風貌が上手く伝えられているかが非常に不安です。

 本シリーズまだまだ続く予定です。第二弾、第三弾とも大自然が舞台でしたので、今度は都会的な話にしようかなぁ~と、構想しております。

長々と取り留めない駄文なあとがきに成りましたが、『月桃館五〇三号室の男』シリーズ。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 あ、最後に、ケモショタなラチャコ君が所属するインティキル《太陽の牙》の組織名の出典が何かわかる人は、筋金入りの古参アニオタであることを申し添えておきます。


令和3年1月 河内野にて。

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月桃館五〇三号室の男 三 ~天譴(てんけん)の山~ 山極 由磨 @yuumayamagiwa

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