第6話 僕は今ここにいます

 いけない事だとは十分わかっています、でももう、自分を止められないんです。

 真っ赤な血が真っ白な雪の上に広がる光景が見たいんです、首を切る感触に浸りたいんです。

 ああ、もうたまりません、

 僕は人として最低です、鬼畜です、人の心を捨ててしまいました。

 もうだめです、このままだと何度も同じことを繰り返すでしょう。

 駄目なんです、自分の欲望を抑える事ができません。

 この先、欲望を抑える自信が僕にはありません。

 苦しいです、悲しいです、どうしていいのか中学生の僕にはわかりません。

 お父さんが生きている時、悪い事をしたら心を込めてあやまりなさいと教えられました。だから心を込めてあやまります。


 本当にごめんなさい。


 僕は、お父さんとお母さんに会いたいです!


 ああ、大好きな、大好きな…


 ──お父さん。


 ──お母さん。


 今から荒れ狂う、真っ暗な冬の海に飛び込みます、お父さんとお母さんに会いに行きます、僕の死体は見つからないかもしれません。

 だから最後に長靴を脱いで、このボイスレコーダーを入れておきました!



 どんよりとした灰色の雲が空を覆い、長靴が揃ったその岸壁に来た年配の刑事は、ボイスレコーダーから再生される少年の声を聞くと涙を浮かべて呟いた。



「誰が彼らを殺したんだ…」



 北の海は今日も冷たく荒れていた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誰が彼らを殺したか? 赤木爽人(あかぎさわと) @kazemaru3343

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ