第5話 僕は強くなりました

 僕はある時、どれだけ力持ちになったのか試したくて、中田くんの友達を1人、後ろから羽交い締めにして、持ち上げて教室の床に叩きつけました。

 すると教室の誰もがビックリして、それ以来イジメはなくなりました。

 床でのたうち回る友達を見て、やっぱりゾクゾクしました。


 もうこの感触はたまりません。


 だから、雪どけ前におばさんの身体を掘り出して、物置きに入れる事が出来ました。おばさんの身体は凍ったまま、それほど腐食していませんでした。

 でも、首の傷を見たら、今度は切りつけた感触が戻ってきました。

 それで、僕はまたゾクゾクしました。

 たまらないほどゾクゾクしました。


 ──今までしいたげられていた分、最高に優越感を感じました。


 物置はしっかりと鍵を締めました。

 これでもう大丈夫です。

 それにおばさんがいつも遊びに行って家にいないのは、この村の誰もが知っているので、いなくても怪しみません。それに、家に訪ねてくる人など誰もいません。

 だけどもう、僕は別人でした。

 もう戻れませんでした。

 やがて春が来て雪が雪が解け出しました。

 おばさんの入った物置は絶対開けません。

 そして、次の冬まで、雪が積るまで待ちました。みんなに無視されても、夏から秋にかけては普通に学校に通いひたすら雪が積もるのを待ちました。


 そして、再び冬が来て辺りに1メール程雪が積もってくると、下校途中で完全に1人になった、中田くん、坂下くん、もみじちゃんをおよそ一週間間隔で襲いました。

 声を出せないように、タオルで口をしめて林の奥に連れ込みました。

 みんな暴れるし、雪に足が埋まってズボズボいいましたが、筋肉がそれを補ってくれました。


 この辺りは林がいっぱいあるし、過疎地です、そのチャンスはいくらでもありました。

 そして首を切りました。

 もちろん、僕にはお金があるので、家の包丁よりももっともっと、切れ味のいい包丁を買ってその感触を楽しみました。

 動かなくなると、雪の中に投げ捨てました。

 真っ白な雪の上に真っ赤な血が広がっていくのをゾクゾク楽しみました。

 ゾクゾクゾクゾク、次から次へとゾクゾク感が身体中を駆け巡りました。

 これこそ雪の芸術です。

 命をかけて表現した、真っ赤な血潮と真っ白な自然が見事に調和した、最高の芸術です。

 作者は僕、観覧者も僕、優越感に浸りいつまでも鑑賞していたかったです。

 でも、そうもいきません、充分楽しんだ後は、雪をかけて隠しました。

 それに、犯行には必ず雪が降っている時を選びましたから、雪解けまで見つかる心配はありません。

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