オマケ 『みかん』
僕に3日ぐらいつらく当たりやがったクソ先輩が、ヒロ先輩とキスをしているのを見てしまった。薄暗いランドリールームの、型の古い洗濯機がゴウゴウと音を立てるそばで、ヒロ先輩を抱きしめて口唇を重ねるクソ。ヒロ先輩は何か言い返しながらも嬉しそうにしていて、多分「人が来るよ」とか何とか言ってんだろうなぁと思った。
そうかぁ、そういう関係だったのかぁ。それならあのクソが僕に当たったのも納得がいくなぁ。そう思ってしみじみとしたところで、以前ルームメイトのデレクに言われたことを思い出した。
『俺は宇辰の顔好きだよ。全体的に童顔で目が真ん丸として可愛いじゃないか』
確か僕が他の男子に比べて顔がかっこよくないことを慰めるつもりでかけてくれた言葉だったハズだが、その時デレクは片手で僕の手を握って、もう片方の手で僕の頬を撫でながら言っていた。もしかしてデレク、君は。
「宇辰、みかん食べる?」
いつの間にか、買い物に出たハズのデレクが帰ってきていた。その手には真っ赤な網に閉じ込められた沢山のみかん。
「何それ」
「宇辰みかん知らないの?」
「いや知ってるよ。なんでそんなみかん沢山買ってきたのかと思って」
「うーん…」
デレクはぼんやりとした様子でみかんを数秒見つめてからこう言った。
「宇辰に似てたから」
意味がわかんないよ!そう叫んだ僕の顔はいつになく熱かったのだが、もしかして紅潮していただろうか。デレクに聞いてみたいが、今はまだその勇気が出ない。
『好き』 むーこ @KuromutaHatsuro
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