第6話 RPGで出来ちゃった🤰🏻
一九九九年七月、僕の三十歳の誕生日の晩、憧れのAV嬢苺いちゑ様に筆おろしさせて頂きました。彼女との関係は本来一合一会だけで終わる筈だった。しかし、僕と彼女は終世までの永遠の契りを誓い合った。つまり結婚した。理由は、僕が魔王に覚醒したからである。そして彼女は魔女らしい。そんな中、ゾンビ勇者に襲われたりしたが、世界は無事に朝を迎えた。未だ人類は滅亡していなかった。女狐につままれた気分である。
昨晩、魔法の箒タツヤ・ペニドラゴンに乗り、とあるビルの屋上庭園に降り立った。そこにはペントハウス建っていた。中はラブホテルかソープランドみたいだ。そういう所に初めて入る。金持ちのリア充って、こんなところで豪遊してるんだな。
「あの、勝手に入って勝手に風呂使って好いんですか?」
「大丈夫、大丈夫よ。私の知り合いの別宅だから。腰を浮かして💛」
——アップスコープ!
僕は潜水艦だ。これが夢にまで見た潜望鏡だ。でも艦長は彼女だ。潜望鏡も操舵ハンドルも握らている。
「魔王って、SSBNくらい強いんですか?」
「どんなプレイかしら?」
「プレイじゃなくて、弾道ミサイル積んだ原子力潜水艦のことです」
「確かに潜水艦よね。潜望鏡もってるし。並の童貞の童貞力が乾電池だとすると、あなたは原発みたいなもの。怒りや憎しみに任せて弾道ミサイルどっぴゅんするの我慢してね。あなたの童貞力が暴走しても、世界は滅びないと思うけど、大勢の生きとし生けるものが死んじゃうからね」
「童貞力の暴走って?」
「例えば、私が裏切ったり、あなたを捨てたりしたら、どう?」
「悲しくて悔しくて堪らないです」
「そうでしょ。でもね私は絶対裏切らないから、
「ハラブネって、方舟とか大舟じゃないんですか?」
「魔女の言い伝えでは、
「RPGみたいですね」
「あーるぴーじーって?」
「それぞれ、キャラクターを演じながら遊ぶゲームですよ」
「オママゴトみたいあのよね?」
「似てなくもないですね」
「それでは始めましょう。マットに横になって目を閉じてね」
「はい」
憧れのマットの上に仰向けになった。あの晩以来、いちゑ様とは何らかの形で接触していた。唇を重ねたり、体を寄せ合ったり、ずっと密着していた。目を閉じると彼女の温もりが感じられない。ちょっと寂しい。このまま離れられたら、悲しくて悲しくて死んでしまいそうだ。
「あなたは魔王、ひとりぼっちの魔王、寂しい魔王。あなたはナニもしてない。でも、みんなは理由も無く、あなたを忌み嫌う。ナニもしてないのに、あなたを恐れる。ナニもしてないのに、あなたを殺めようとする。どんな気持ち?」
いちゑ様は離れた所から囁きかける。頭の中に情景が浮かんでくる。映画の中にいるように鮮明だ。感覚まで伝わる。未だ実現できていない完全VRの世界か?
本当に魔王になった気がする。両腕には途轍もない力が漲る。魔法の力で何でもできる。なのに孤独感にさいなまれる。寂しさを埋めたかっただけだ。なのに、みんなは離れていく。それどころか、僕に刃を向けて来る。僕には、みんなの苛めを返り討ちにする力が有るんだぞ!
最初は勇者一行がやって来た。いきなり襲い掛かって来る。動きが止まっているように見える。片手でつかんで首を圧し折ってやった。
また別の勇者一行がやって来た。巨石を投げつけて潰してやった。勇者なる者が次々とやって来る。ある勇者を生きたまま焼き殺し、とある勇者を魔獣に踊り食いさせた。むこうは押し込み強盗だ。何の情けがいるだろう?
やがて軍隊が差し向けられてきた。敵は幾万ありとても、烏合の衆に他ならず。烏合の衆でなくとも、魔王の敵では無かった。生き残った敵は命乞いする。奴らが連れて来た馬や犬は解き放った。獣に罪は無い。でも奴らには罪が有る。惨めな命乞いを指せ、聞き入れるふりをした。奴らが希望に目を潤ませたとき、魔獣たちに踊り食いさせた。
奴らの国は丸裸だ。奴らの国の城壁化に迫った。もう戦う気力も無いらしい。城門を開いている。どうしようかな?
城門から二人の女が現れる。やや背の高い方は、とても美しく凛凛としている。もちろん苺いちゑ様だ。もう一人は、背が低いが胸が大きい。目がくりくりした美少女だ。ビクビクふるえている。誰だか知らない。二人は僕の前に跪いた。
「魔王様、ご尊顔を拝し、誠に恐れ入り奉ります。妾は当国の主の妻、
これって男の子の憧れ、親子丼じゃないか?
でも僕の選択筋は一つだけだ!
「
魔王こと僕は、
魔王は童貞だ。また改めて筆おろしして貰える。一国の王妃、つまり人妻が肉奴隷として仕える。この設定も堪らないな。確かAVにはなかった。
マットの上で泡だらけだ。コリッとしたモノが肌をくすぐる。むず痒いけど気持ち好い。
「恐れながら魔王様、一つお伺いしてよろしいでしょうか?」
「なんなりと申せ」
「恐れながら申し上げます。清らかな娘よりも、なぜ私の様な子持ち年増女をお選びになられたのでしょうか?」
「あの娘よりも、お前の方を気に入ったからだ。ただそれだけだ」
「身に余る御言葉です。快く嬉しく存じ上げます」
「さようか」
「私も、心より魔王様をお慕い申し上げます。だから、私も一言申し上げたき儀がございます。よろしいでしょうか?」
「くるしゅうない。申せ」
「恐れながら申し上げます。私の初めての夫は先々代の国主でした。初夜に初めてを捧げた時、私の腹の上で亡くなりました。次の夫は、先々代国主の長男でした。初夜の晩、やはり腹の上で亡くなりました。でも忘れ形見を残しました。娘の
「よくぞ申した。それでも世の気持ちは変わらぬぞ」
「うれしゅうございます💛」
女狐につままれたような夢心地は永遠に続くなんて思えない。幸せに終わりが有るなら、死で終わるのが理想じゃね?
そうして夢現の中でも歓喜仏となった♡
やはり、
暗闇の中を漂っている。ふわふわと浮いている。目を開けようと思っても開けない。目を開けたつもりでも何も見えない。でも、とても心地よい。それが続いたのは、一瞬だろうか、一日だろうか、百日だろうか?
暫くして、音ならぬ音、声ならぬ声が聞こえる。
「魔王様ごめんなさい。どうお詫びを申し上げたらよいか……」
「ナニを言う。余は身が滅んで、お前の胎の中にいるのだろう?」
「その通りでございます。これを御覧ください」
多くの群衆を見下ろしている。どうでも好いから見逃してやった下賤な民草たちである。こっちに向かって激しい憎悪の目と罵詈雑言を浴びせている。見ているだけで腹立たしい。吐き気がする。あれこそ余が憎んで情け容赦なく死を賜えてやった人の子そのものだな。
余は天を舞う鷹の目を借りた。おおよそのことが判った。
愛する
「裏切者!」
「あばずれ!」
「魔王の子は殺せ!」
などなどである。
でも、痛々しいのは、あの娘の視線である。玉座に座りながら、実の母親に憎悪と軽蔑を露わにしている。
「魔王様、私は魔王様のことを殺めてしまいました。私は交わった男を殺す呪われた女だったのです。初めは、私は魔王殺しの勇女として持て囃されました。でも、身籠っていることが判ると、世間の目は一変しました。魔王の子を身籠る女として怒りと憎しみを一身に集めました」
「やはり人とは見難いものよ。人は我が敵、お前は敵ながら一身を犠牲にして余を倒したのではないか。お前は人々の恩人である。しかし醜く賤しい人共は、お前への恩を忘れ、身勝手な憎悪に囚われている。あれこそ悪、余など到底及ばぬほどの凶悪さだな。余は身が滅んでも、お前の胎の中で生きている。未だ力を失っていない。あんな奴ら国ごと滅ぼしてやろう」
「恐れながら魔王様、私とて皆を赦せません。でも滅ぼすほど憎むこともできません。あの娘のお腹を痛めて産んだ子です。そんなに憎まれても、憎むことはできません。どうか御慈悲を!」
「うぉぉぉぉぉぉ……!」
こんな弁護は逆効果だ。
天は俄かに曇って太陽を遮る。まだ昼なのに真っ暗になった。黒雲から雷鳴が響く。雷は町じゅうに降り注いだ。城の塔や家々を打ち砕き、人々を薙ぎ倒した。醜い者共は尚も生き残って隠れ潜んでいる。やがて雷雲から大粒の雨が降り注いだ。七日七夜つづいた。醜い者共は皆底に沈んで逝った。
大洪水は四〇日と四〇夜続き、水の勢いは一五〇日も収まらなかった。ただ
これが
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