第2話 筆おろしの魔女は窓から入る🍓

 さてさて今宵はナニを見よう。今年に入ってから、苺いちゑの新作出てないんだよな。通販の案内も来なくなった。苺いちゑ作品の中で、どれが一番なのか甲乙つけがたい。その中でも、お気に入りは『母をたずねて三千ズリ』だな。ストーリーはこうである。

 とあるウブな童貞孤児は高校入学控えていた。そんな折、生き別れた母親から手紙が来る。「入学式で会いましょう」と書かれていた。写真も一枚同封されてた。なんと、苺いちゑのハメ撮り写真である。胎ボテのまま笑顔でピースしている。その写真を見て、童貞孤児は精通してしまった。そして入学式の日まで猿のように一人遊びに熱中する。童貞孤児の想像の世界の中で、苺いちゑは激しい濡れ場を演じる。

 入学式の時、苺いちゑが新入生代表として挨拶する。どこをどう見ても、清楚で爽やかな美少女である。童貞孤児は思った。若い頃の母親にそっくりである。一目ぼれしたけど、他人の空似と思い込む。母親は三十路くらいだろう。会場を母を探すが、それらしき人は見つからない。探しあぐねている中に、苺いちゑから声を掛けられる。思わず「お母さん」と呼んでしまう。苺いちゑは事情を察すると、童貞孤児のお母さん探しの手伝いを申しでる。

 舞台となる学校は全寮制である。ナニかの手違いで童貞孤児の部屋が無い。苺いちゑが手を差し伸べ、同棲することになる。その時の名セリフが「私がお母さん代わりに成ってあげるわ」だ。「そんなことしたら、お母さんが悲しむわよ」と言って、童貞孤児にオナ禁させる。代わりに白魚の様な指で弄ぶのである。やがて童貞弄りはエスカレートする。そしてラストは筆卸しである。その時の落ちは「」だ。

 ビデオ回さなくても、鮮明に脳内再生できてしまう。


 女の喘ぎ声が耳鳴りする。苺いちゑ様じゃない。男の呻き声が耳に触る。隣の部屋だな。一回りくらい年下の女子大生だ。しょっちゅう男を取っ替え引っ替えなんだから、僕にもお裾分けしてくれよ!

 でもな、偶に愛想よくお土産くれるるんだよな。「死ね」とまでは思わない。でもモヤモヤする。死ななくても好いけど、喘ぎ声が耳に触る。やっぱ死ねよ……男の方だけ。


——ガラガラガラ……

 勝手に窓が開いていく。


「他人の逢瀬を妬んだら、お母さんが悲しむわよ~♡」

 鈴を転がすような声だっ!

 どこか聞き覚えがある!?


「土足でごめんね。それにしても暑いわね」

 窓から入ってきたのは女子高生だ!

 見覚えのあるご尊顔!

 紛れもない苺いちゑ様だ!

 土足で踏み込まれても全然不愉快じゃない。むしろ心地よい。あの土足で頭を踏みつけられたい。今どき流行りのJK姿で降臨だ。ギャルぽいけどケバさは無い。清楚系ギャルだな。それがまたエロ格好イイ!

 ブラウスの胸元は肌けている。短いスカートから長い脚が伸びる。足元を見ると、畳が濡れている。自分が濡らした訳じゃない。

 俺は・・・いや僕は苺いちゑ様の前で正座している。フルチンのままである。一応、小さなゴムだけ着ている。

 そういえば、童貞が裸土下座で筆おろし懇願する作品も有ったな。その時の台詞を真似てみた。

「ぼ、ぼ、僕は犬畑ケンと申します。今日で三十になります。ずっとずっと、ずっと前から、いちゑ様のことが好きでした。好きで好きで大好きです。一生に一度のお願いです。僕の誕生日のお祝いに、どうか童貞卒業させてください。願いが叶ったら死んでも構いません」

「私は筆おろしのウィッチ苺いちゑよ。ケンちゃん初めまして。でも、ずっと前から君のこと知ってたよ。君が思っている以上に君のこと知ってるわ。長い間、応援してくれてありがとう」

「嬉しいです。僕なんかのこと、ご存じなんですか?」

「だって君、お得意様ですもの。住所、氏名、生年月日、職業、趣味や性癖まで知っているわよ」

「じゃ、僕が送ったアンケート葉書読んでくれてたんですね。本当に嬉しいです」

「葉書から、君の熱い想い伝わって来たわ。撮影の度に、君のイヤらしい視線感じてたわ」


 いちゑ様が僕の頭を撫で撫でしてくれる。いま僕は犬になった。名前もケンだしな。濃厚な匂いが鼻につく。甘さにむせってしまう。

 僕の目の前で、いちゑ様がしゃがんでいる。スカートの中が丸見えだ。苺のパンティーがびしょびしょだ。おしっこではない。

 あれ苺のパンティーが盛り上がっている?


「ケンちゃん、お誕生日おめでとう。三十まで童貞でいてくれてありがとう。お蔭で魔王様になれたわね。ささやかな前祝にどうぞ💛」

 いちゑ様はスッと立ち上がった。目の前にはスラリとした長い御脚が伸びている。苺のパンティーは膝まで降ろされている。びしょびしょだ。そしてスカートがテントを張っている。


「……(ゴクリッ)」

 僕は思わず唾を飲む。いちゑ様が男の娘だったとしてもいい。アレは嫌だけど、彼女のモノなら好い。僕は膝立ちになる。


「私のね、皮被ってるの。君の口で剥いてよ」

 ゆっくりとスカートをたくし上げる。やっぱ嫌だけど、いちゑ様のモノなら好い。でも嫌だ。心が揺らぐ。僕に選択の余地なんて無い。

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